2021年11月19日

住友商事グローバルメタルズの経営戦略 坂田 一成社長 責任利益200億円安定計上へ ESG関連、長期で戦略

――2021年4-9月期の連結純利益は前年同期の10億円から49億円に改善した。

「住友商事グローバルメタルズ(SCGM)は住友商事・金属事業部門における鋼材事業全般を担っており、公表は出来ないが実際の責任業績は大きくこれを上回っている。主に海外スチールサービスセンター事業、その他鋼材関連事業が回復し、鋼材価格の上昇もあって、通期予想も構造改革関連ロスを計上した前年比で大きく回復する見通し」

――なぜそのような差が表れるのか。収益構造の背景を。

「SCGMはかつて金属事業部門の業務受託会社だったが、18年4月に住友商事から業務を移管されてプロフィットセンター化した。全55社の事業会社の運営・管理も一手に引き受けているが、多くの事業会社が、現在でも住友商事の直接出資となっていて、SCGMの連結業績として反映されていない」

――直接出資している企業は。

「サミットスチール、マツダスチール、紅忠サミットコイルセンター、大利根倉庫、伊藤忠丸紅住商テクノスチール、SUMISHO METAL (THAILAND)、CS METAL、 NIPPON STEEL THAI SUMILOX、中山市野村鋼材製品の9社で、サミットスチールの子会社となっている北海道シャーリングを加えると10社」

――鋼材価格の急騰など一過性要因を除いた実力値、中期経営計画(21-23年度)における収益目標について。

「今期見通しは予算を大きく上回る好調な見通しだが、鋼材価格の上昇が続く中での在庫売却益、売買差益などを一過性要因とすると、実力は100億円強と見ている。今後適宜投資も実行し、各事業の価値向上と収益基盤を拡大して、中計終了時には200億円規模の責任利益を安定的に計上できる事業構造の確立を目指している」

――事業構造転換を進めている。

「世界の鉄鋼市場構造が大きく変化し、自動車やエネルギーなど需要構造転換も加速している。主力ビジネスの長所、短所を検証し、強い分野をさらに強化し、弱い分野は合理化などの手を打っていかなければならない。SCGMの事業戦略を描き直すに当たって、20年4月1日付で鋼板、自動車金属製品の2本部を鋼材本部に集約し、既存ビジネスの構造改革を実施した。事業会社の撤退、成長戦略見直しを徹底し、前期は撤退損失を計上したため大幅赤字となった。一区切りついたので、本年4月1日付で、薄板事業部、自動車薄板事業部、海外薄板事業第一部、同二部、メカニカル鋼管・特殊管事業部で構成する鋼材第一本部、厚板建材事業部、線材特殊鋼鋳鍛事業部、輸送機材事業第一部、同二部で構成する鋼材第二本部に組織を再編。地域戦略を大きなコンセプトとして、成長に軸足を移し、全社を挙げて収益構造改革に取り組んでいる」

――地域戦略ターゲットについて。

「国内、北米、欧州、アジアが重点戦略地域。ESG関連市場が長期の戦略分野となる」

――国内戦略を。

「最重要戦略地域として、商社機能を磨いて存在感を高めていく。単独で可能な分野はさらに強化し、そうでない分野は他社と連携して、マーケットリーダーのポジションを確保していく。住商メタルワン鋼管、NSステンレスは業界でも大きな存在感があり、伊藤忠丸紅住商テクノスチールは独自の強みを発揮している。コイルセンターは、日鉄物産と相互に両社傘下のサミットスチール、NSMコイルセンターに10%ずつ出資。自動車分野では、マツダスチールに加えて、紅忠サミットコイルセンターを伊藤忠丸紅鉄鋼との折半出資事業として立ち上げた。大利根倉庫は、伊藤忠丸紅鉄鋼、SUBARU、JFE商事の合弁事業として機能を分担している。サミットスチールは、日本製鉄の出資も仰いでおり、日本製鉄グループ企業とも戦略を共有しながら機能を高めていく。NSステンレスは、日鉄ステンレス、日鉄物産との合弁事業として、高機能商品の新規市場開拓に注力することで事業基盤を強化していく」

――北米戦略は。

「スチールサミット・ホールディングスは、テネシー州、オハイオ州の2拠点体制だったが、マジックスチールの買収によってミシガン州、アラバマ州も加えた4拠点体制となった。買収効果が出始めたところで鋼材需要が回復し、市況高騰もあって、同社業績は大きく最高益を超えそうだ。マジック買収の効果は、エリアと鋼製家具などポートフォリオの充実に加えて、ニューコア、スチールダイナミクスなどの調達先との関係強化にもつながった。アラバマ州にあるトヨタ・マツダ新工場向けの豊田通商との合弁のブランキング工場が立ち上がり、アラバマ工場とのシナジーも具体化し始めている。アラバマ工場は日本製鉄の鋼板製造拠点であるカルバートとの連携においても重要な拠点となる。北米の薄板ビジネスは成長余地があり、さらに経営資源を投じていきたい」

――米国では輸送機材ビジネスも展開する。

「日本製鉄の北米向け軌条輸出は、日米政府が協議に入った通商拡大法232条の緩和や適用除外が認められれば、150メートル長尺レール専用船を活用したビジネスを再開できる。現地では日本製鉄との車輪製造合弁、大和工業とのタイプレート製造合弁事業、鉄道資機材のメインテナンス事業なども展開している。バイデン政権のインフラ投資法案が可決され、鉄道関連投資が拡大するチャンスをしっかり捕捉していく」

――メキシコのセルビラミナ・メヒカーナは3工場。

「モンテレー工場はGEのトランス工場向けに日本製鉄の方向性電磁鋼板を一手に引き受けており、フル操業を続けている。ケレタロ工場は、電機、建材、自動車などもあって、ポートフォリオ戦略が奏功している。サラマンカ工場はマツダの門前で、足下は半導体影響などで苦戦しているが長期戦略事業と位置付けている」

――南米市場の取り組みは。

「ブラジルのゲルダウ・サミットは鋳鍛造品メーカーで、圧延ロールが主力だが、風力発電用リングなどで国内外の再生エネルギー関連需要の捕捉し始めている」

――インドは特殊鋼事業を強化している。

「二輪車大手のバジャジグループとの合弁事業で、棒鋼圧延ミル、線材圧延ミルを装備する新工場がこのほど操業を開始した。新工場を建設したカルナタカ州にはムカンドが出資する製鉄所があり、ここからビレットなどの半製品を調達できる。コスト競争力に品質対応力を加え、ムカンドのネットワークも活用しながら二輪・四輪関連需要を捕捉していく」

――欧州も戦略地域。

「チェコのコイルセンターは、大手コイルセンターのスペイン・バメサがパートナーとなった。バメサの参画によって取引先が拡大し、チェコの拠点はブランキング設備の導入を進めている。欧州製造業の中東欧シフトを見据えて、バメサと共同でビジネスチャンスを探っていく」

――ASEANでは亜鉛鉄板などの事業を展開する。

「パキスタンのISLは同国最大の冷延、亜鉛鉄板メーカーとして認知され、業容を拡大している。ベトナムスチールとの合弁事業で、ホーチミンに亜鉛・アルミめっき鋼板製造拠点を持つSSSCは、新めっきラインの据え付けを完了。ハノイ、ホーチミンのコイルセンターとの連係を強化しながら事業を拡大していく。マレーシアのFIW、カンボジアのESICはいずれも長い歴史を有する事業会社であったが、ビジネス環境の変化により現在撤退手続きを進めている」

――海外のコイルセンター事業について。

「市場構造変化によってピークを越えたコイルセンター、機能が低下した拠点について見直しを進めてきた。15年に清算したシンガポールのAsian Steelに続き、米国のVicks Metal、ドバイ、トルコのコイルセンターも撤退した。ASEANではタイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシアの事業会社はいずれも好調」

――中国でも幅広く展開してきた。

「天津、中山、南京、長春の自動車鋼板を主とした加工拠点は堅調。宝武鋼鉄との合弁事業だった無錫のコイルセンターはCIMCに売却。東莞の拠点は現地流通に売却した。いずれも電機向けがメーンで、現地製造業の方針転換で事業継続は難しいと判断した。現地合弁の電磁鋼板コイルセンターは数年前に撤退済み」

――中国の工具鋼流通ビジネスは。

「大同特殊鋼との無錫の合弁事業は大同のハイエンド鋼種から汎用品まで幅広い品ぞろえをもって現地市場を手広く開拓し、好調に推移している。100%出資の佛山の拠点も地場需要の取り込みに成功している。工具鋼加工流通は特色あるビジネスとして大切に伸ばしていきたい」

――長期の課題と展望を。

「世界各国がカーボンニュートラルに舵を切り、EV、再生エネルギーなど新しい事業領域が広がっている。総合商社の100%出資による鉄鋼商社ならではの強みをフルに発揮しなければならない。新設した『気候変動対応ビジネス創出ワーキンググループ』のメンバーは、住友商事の組織横断チームに参画し、インフラや電力などの事業部門と一体で戦略を練っている。次世代自動車についても同様のアプローチを本格化しており、住友商事グローバルメタルズならではの長期成長戦略を描いていく」(谷藤 真澄)

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