2025年10月30日
人財戦略を聞く/学術編/東京大学理工連携キャリア支援室キャリアアドバイザー/山田 篤氏/仕事への考え方 多様化/企業は長期的な視点で採用を
東京大学理工連携キャリア支援室は、常駐するキャリアアドバイザーが進路・就職に関する相談の他、就職関連イベントを開催している。今回、同室の山田篤キャリアアドバイザーに東大理系の学生の就職動向や新しい支援の形、企業側に求めることなどを聞いた。
――理工連携キャリア支援室はどういう組織か。
「2010年度に東京大学大学院工学系研究科・工学部の共通組織として『工学キャリア支援オフィス』を設置したのが始まり。本年度で16年目になる。背景として、学生の多様化と社会の変化に伴い、学部学生や大学院生などの就職や進学などの進路に関して多面的・個別的な支援が求められているということがあったと聞いている。12年4月に東大大学院理学系研究科・理学部と協力、『理工連携キャリア支援室』として理工系学生を支援することとなった。これが、現在の組織名称のスタートになる。理工連携キャリア支援室は理工系の学部および研究科に在籍する学生などの進路決定について、学生、教職員、企業などに対し総合的に支援を行うことを目的としている」
――サポート内容は。
「進路・就職に関する相談場所として、就職か、大学院への進学か、または他研究科、他専攻への進学、就活の進め方、自己分析の支援、業界、企業研究の支援、エントリーシートの添削、面接対策などの相談を受けている。また就職関連イベントとして、東大理系OB・OGによる『企業研究セミナー』や『企業説明会』を実施している。企業や官公庁の案内、就活イベントなどの告知を閲覧できるコーナーも提供し、学生が訪問しやすい雰囲気をつくっている。支援室内では就職関連の書籍や紙ベースの求人票などが閲覧できる」
――どんな学生が来るのか。
「基本的に学部生の7―8割が大学院に進学する中で、理系(主に工学系・工学部や理学系・理学部)の学生の相談に乗っているが、たまに農学部や医学部の学生が将来のキャリア形成に関する相談に来ることもある」
――近年は民間企業が理系学生に人気があると聞く。
「私が在任してきた4年間では民間企業への就職希望が多いと思う。バリバリ働きたい挑戦意欲を持った学生は多いし、激務とされる官公庁でも特に忙しい省庁を希望する学生も中にはいる。仕事への考え方が多様化している印象だ」
――就職先は。
「理系の院生の就職先はメーカーが最多で、鉄鋼関連はそのうち約1割程度。コンサルタント、IT系が人気になっている」
――企業側との連携では。
「11月6日から26日にかけて、6日間で36社の東大理系OB・OGによる企業研究セミナーを開催する。年2回程度開催の大きなイベントの一つで、今回は全体セッションの後、各社ブレークアウトルームで20分×5回話をしていただく予定だ。業務内容・職種や働き方・キャリアパスなどについての話がメインなる。対象は理工系の学部生・修士・博士・ポスドク・留学生で、理系以外の方も歓迎している」
「一方、当支援室ではなく、工学部・工学研究科として『社会連携講座』『寄付講座』を設けている。社会連携講座では日本製鉄・JFEスチール・神戸製鋼所の3社による『未来社会の鋼板創成を支えるスマートデジタルツイン』をテーマに今年の4月から28年3月まで、機械工学を設置専攻として開催中だ」
――企業側に求めることは。
「学生の就職活動に対して長期的な視点で採用を行ってもらいたい。実例としてインターンシップがあるが、実質的な選考の場になっている。優秀な学生を早期に確保したい意向は理解できるが、学生側の企業研究や検討が足りないまま就職先を決めてしまい、入社後、仕事内容と学生が希望したことが一致しないケースが見られる。そうなれば双方にとって不利益だ。また博士課程まで進学すると就職の選択肢が狭まってしまうと感じる大学院生は多い。こちら側としては、博士での入社であっても企業で活躍する姿を見せてほしい」(菅原 誠)
▽山田篤(やまだ・あつし)氏=早大理工卒。TDK研究所で材料開発、MIT客員研究員を経て、米国半導体会社出向。インテルで品質・信頼性管理、半導体材料開発、サプライヤー管理、認定コーチとして従業員のキャリア相談に従事。早大院商学研究科MBA(人材・組織マネジメント)、キャリアコンサルタント(国家資格)、2級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定I種、PCC資格(国際コーチング連盟)。
――理工連携キャリア支援室はどういう組織か。
「2010年度に東京大学大学院工学系研究科・工学部の共通組織として『工学キャリア支援オフィス』を設置したのが始まり。本年度で16年目になる。背景として、学生の多様化と社会の変化に伴い、学部学生や大学院生などの就職や進学などの進路に関して多面的・個別的な支援が求められているということがあったと聞いている。12年4月に東大大学院理学系研究科・理学部と協力、『理工連携キャリア支援室』として理工系学生を支援することとなった。これが、現在の組織名称のスタートになる。理工連携キャリア支援室は理工系の学部および研究科に在籍する学生などの進路決定について、学生、教職員、企業などに対し総合的に支援を行うことを目的としている」
――サポート内容は。
「進路・就職に関する相談場所として、就職か、大学院への進学か、または他研究科、他専攻への進学、就活の進め方、自己分析の支援、業界、企業研究の支援、エントリーシートの添削、面接対策などの相談を受けている。また就職関連イベントとして、東大理系OB・OGによる『企業研究セミナー』や『企業説明会』を実施している。企業や官公庁の案内、就活イベントなどの告知を閲覧できるコーナーも提供し、学生が訪問しやすい雰囲気をつくっている。支援室内では就職関連の書籍や紙ベースの求人票などが閲覧できる」
――どんな学生が来るのか。
「基本的に学部生の7―8割が大学院に進学する中で、理系(主に工学系・工学部や理学系・理学部)の学生の相談に乗っているが、たまに農学部や医学部の学生が将来のキャリア形成に関する相談に来ることもある」
――近年は民間企業が理系学生に人気があると聞く。
「私が在任してきた4年間では民間企業への就職希望が多いと思う。バリバリ働きたい挑戦意欲を持った学生は多いし、激務とされる官公庁でも特に忙しい省庁を希望する学生も中にはいる。仕事への考え方が多様化している印象だ」
――就職先は。
「理系の院生の就職先はメーカーが最多で、鉄鋼関連はそのうち約1割程度。コンサルタント、IT系が人気になっている」
――企業側との連携では。
「11月6日から26日にかけて、6日間で36社の東大理系OB・OGによる企業研究セミナーを開催する。年2回程度開催の大きなイベントの一つで、今回は全体セッションの後、各社ブレークアウトルームで20分×5回話をしていただく予定だ。業務内容・職種や働き方・キャリアパスなどについての話がメインなる。対象は理工系の学部生・修士・博士・ポスドク・留学生で、理系以外の方も歓迎している」
「一方、当支援室ではなく、工学部・工学研究科として『社会連携講座』『寄付講座』を設けている。社会連携講座では日本製鉄・JFEスチール・神戸製鋼所の3社による『未来社会の鋼板創成を支えるスマートデジタルツイン』をテーマに今年の4月から28年3月まで、機械工学を設置専攻として開催中だ」
――企業側に求めることは。
「学生の就職活動に対して長期的な視点で採用を行ってもらいたい。実例としてインターンシップがあるが、実質的な選考の場になっている。優秀な学生を早期に確保したい意向は理解できるが、学生側の企業研究や検討が足りないまま就職先を決めてしまい、入社後、仕事内容と学生が希望したことが一致しないケースが見られる。そうなれば双方にとって不利益だ。また博士課程まで進学すると就職の選択肢が狭まってしまうと感じる大学院生は多い。こちら側としては、博士での入社であっても企業で活躍する姿を見せてほしい」(菅原 誠)
▽山田篤(やまだ・あつし)氏=早大理工卒。TDK研究所で材料開発、MIT客員研究員を経て、米国半導体会社出向。インテルで品質・信頼性管理、半導体材料開発、サプライヤー管理、認定コーチとして従業員のキャリア相談に従事。早大院商学研究科MBA(人材・組織マネジメント)、キャリアコンサルタント(国家資格)、2級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定I種、PCC資格(国際コーチング連盟)。












産業新聞の特長とラインナップ







