2026年1月29日

非鉄新経営 厳しさ増す市場に対応/東邦亜鉛社長/伊藤 正人氏/買鉱条件悪化に対応/副産物の回収、値上げを推進

東邦亜鉛は、2024年12月に事業再生計画を発表して1年が経過した。資源事業と亜鉛一次製錬から撤退し、鉛製錬、亜鉛リサイクル、電子部材・機能材料に経営資源を集中して、新たな成長戦略を描く。伊藤正人社長に、計画で掲げた施策の進捗を聞いた。

――資源事業と安中の亜鉛一次製錬事業から撤退した。

「ラスプ、エンデバー、アブラの豪州3鉱山からの撤退が昨年6月までに完了した。亜鉛一次製錬は昨年3月で小名浜製錬所(福島県)及び安中製錬所(群馬県)の主要設備を止め、出荷も上期でほぼ終わった。安中では希望退職を募り、再就職支援や他事業への配置転換など丁寧に対応している。減損や人員整理の痛みを伴ったが、両事業の撤退完了で29年度に経常利益74億円の目標達成に向けた準備ができた」

――事業再生計画の取り組みを。まずは鉛・銀製錬について。

「相場高騰により銀の売り上げが鉛を逆転しそうだ。(銀を多く含む)高銀鉱は数年先まで長期の購入契約が結べている。鉱石のTC(溶錬費)/RC(精錬費)は非常に厳しいが、銀などの副産物にはかなり期待している。業務提携する阪和興業に、原料調達でも協力を受ける方向だ。銀の二次原料処理も従来に増して取り組む。これまで海外からはあまり積極的に調達しなかったが、売り込みは結構ある。当社は銀生産が国内トップクラス。その生産能力が受け皿になっていると認識している」

――鉛はどうか。

「鉱石と二次原料の廃バッテリーから鉛を製錬するが、買鉱条件の厳しさから二次原料を増やしていく方針。二次原料比率は現状半分程度だ。一方で副産物の銀やレアメタルの価格上昇も収益に結び付けたい。副産物は多くが鉱石由来であり、最適な原料ミックスを模索する」

――二次原料比率はどのくらい高める。

「鉱石は種類によって銀や硫黄の含有量が異なり、廃バッテリーも処理できる限度がある。これらをしっかり計算すると最適値があり、収益を最大化できる原料構成を目指す」

――副産物のビスマス、アンチモンの回収強化の取り組みを。

「これまでは人員が足りないため自社で回収し切れず、同業他社に販売するものもあった。3月までには必要な人員がそろう計画で、設備能力まではきっちり回収したい」

――酸化亜鉛の施策を。

「生産効率を上げ増産する方針だったが、まずは原料ミックス改善と高付加価値化に取り組む。原料の製鋼ダストには様々な品位があり、産廃としての受け入れ条件も違う。原料構成を見直すことでも収益改善効果が見込める。小名浜製錬所(福島県)で手掛ける酸化亜鉛事業は100%リサイクル原料で、高品質な製品を提供している。需要家のタイヤメーカーなどのリサイクル原料のニーズは強い。品質検査などもより強化することで製品の高付加価値化を図り、競争力につなげたい」

――電子・機能材の施策は。

「電解鉄は、既存の代理店に加え、大手商社にも協力してもらい拡販を進める。航空機部品向けが多く、航空業界が大型化より中・小型機の数を増やす方向にあることは追い風だ。若干品質が劣るセカンドグレード品のニーズへの対応も検討しているが、収益影響も見極めながらタイミングを計る」

「コイル製品はこれまでEV向けに注力してきたが、成長軌道が想定よりも緩やか。新たな市場を開拓する必要があり、その有力な候補がデータセンターだ。AIの普及などでデータセンターは大きなマーケットになってきている。そこに適した新製品開発を推進する」

――セカンドグレード電解鉄への対応で12億円の設備投資を計画していたが。

「止めたわけではなく、様々な方策のうちの一つだ。どういう方向でいくかはまだ決めておらず、軌道修正はあり得る」

――投資の実行時期が遅れる可能性があると。

「可能性はある。電解鉄に限らず、事業再生計画を発表してから様々な分科会で多くのアイデアが出てきた。そのうちの一部はすでに実行しており、総投資額は15億円ほどになった。再生計画の方向性にぶれはないが、修正はある」

――安中は28年に環境ダストリサイクル熔融炉を35億円かけ導入する計画だった。

「小型試験機で技術的な課題はクリアしている。ただ、これも二次亜鉛原料を作り副産物の貴金属を回収するという従来の計画がベストなのか見直す。(溶融炉は)投資リストに入っているが、時期に関しては未定だ」

――安中は何を生産するのか。

「亜鉛製錬を終了すると発表して以降、様々なオファーが来ている。従来手掛けてきた亜鉛末、カドミウム製品、炭酸亜鉛は引き続き生産している」

――鉛買鉱条件悪化に対し、プレミアムの引き上げは。

「マイナスTCなど信じられないような状況で、やはり対応は必要だと考える。二次原料比率を高めるなど努力はするが、TC悪化分をある程度価格に転嫁しないと厳しい。原料、電力、物流、環境対応のコストも増大しており、持続的に安定供給していくため、価格の見直しを顧客ごとに順次お願いする」

――その他の製品での値上げは。

「電解鉄は半期ごとに価格改定できている。コイル製品も、ここにきて需要家に値上げを受け入れてもらえるようになってきた」

――DXの取り組みを。

「年初にデジタル業務改革構想を発表した。事業再生計画ではDX関連費用を28億円としている。テーマは次世代IT基盤の再構築、DXの組織強化、スマート工場化の3つで、ロードマップ策定に取り組んでいる。これによって仕事の負担が減り、稼ぐ力もつくと考えている」

――前期から東邦契島製錬(広島県)の操業不調や小名浜の設備火災など操業トラブルが続いた。

「契島のトラブルは操業管理、そして設備老朽化という2つの問題が大きかったと分析している。操業管理に関しては、トラブルがあったときはどうするかなど、新しくラインに配属された人でも分かるように明文化しておく必要性に気付かされた。設備メンテナンスについても、メインの重要設備は確実に手配する一方、それ以外の部分では隅々まで行き届いていなかった部分もあった。自分たちの設備・機械を確実に整備することを改めて強く意識するため、仕組みを見直す。小名浜の炉は当社にしかない設備で、競争力にもつながっている。原因となった炉壁の溶損など、操業管理をきちんと行わなければいけないことを再認識した。けが人が出なかったことは不幸中の幸いだった。こうしたトラブルを回避すべく、来期は設備の維持更新投資を増やす方針だ」

――最後に会社の目指すべき方向性を。

「サーキュラーエコノミーという言葉を前面に打ち出して諸施策に取り組む。経営面については、数値で経営して数値で説明し、数値で信頼を取り戻したい。コア事業の鉛製錬は循環型社会で重要な役割を果たし、安定的に操業していくためにも需要や価格変動に応じた対応を取っていく必要があると思っている。リサイクル比率の引き上げやDXによる効率改善により製錬事業の競争力をさらに高め、持続可能な供給を通じて社会に貢献していきたい」

(田島 義史)









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