2026年2月27日

財務・経営戦略を聞く/JFEHD副社長/寺畑 雅史氏/設備増強効果を見込む/インド事業の利益寄与期待

――事業環境が厳しさを増している。建設分野は人手不足や資材高が続き、回復が待たれる自動車はじめ製造業も伸び悩んでいる。

「2025年度の自動車の生産台数は概ね前年(847万台)並みとみている。国内販売が伸びず、海外は挽回している地域もあるがメーカーによってバラつきがみられる。来年度に向けて海外への生産移転の動きがどれほど具体化するのか注視している。受注が好調な造船業界は将来的に建造量を増やしていく方向だが、人手の問題や難仕様である新エネルギー船の受注が増えることもあり、建造量を短期的に大きく増やすことは難しく、鋼材需要は現状レベルが続く見通し。船舶の需要は強く、世界的にも造船の手持ち工事量は3年分ほどある。日本の造船業はサプライチェーンを保つためにも一定のシェアを持ち続ける必要があり、今治造船がJMUを子会社化して建造能力を高めるなど対応に向けた動きが広がっていくと期待している」

――通期の連結事業利益予想は1400億円と前回予想から据え置いたが、棚卸資産評価差影響等を除いた実力ベースの利益予想は1700億円と200億円下方修正した。スプレッドの悪化が大きな要因だが、詳細と対応策は。

「第4四半期に入って原料炭価格が急騰し、為替の円安も進んだが、原料炭価格の転嫁の時期ずれが発生するのでスプレッドが第4四半期に悪化している。鉄鋼事業の実力の利益を700億円と前回から200億円下方修正した。内訳はスプレッドの悪化で250億円のマイナス、グループ会社で50億円のプラス。スプレッド悪化のかなりの部分が原料炭価格の上昇によるもの。主原料価格の変動分については次の期で、ある程度取り返すことができるが、交渉する分野もあり、しっかりと理解を得ていく。労務費など諸コストも上昇しており、販価是正が必要と考えている」

――米国の関税引上げの影響を大きく受けてはいないようだが。

「影響度については前回見通しから変えていない。関税影響は全数量で50万トンのマイナスで、そのうち米国向けが3分の1程度から大きな変化はない。建設機械などの鉄鋼派生品についても、今のところ目立った影響はみられていない」

――国内外で利益が改善しているグループ会社とは。

「海外ではインドのJSWスチールの収益改善が大きい。タイのJSGT、インドネシアのJSGIも足元の環境は厳しいものの、収益は回復傾向にある。中国のGJSSは日系自動車が新エネ車を投入して巻き返しつつあり、高級鋼の需要や市況に底打ちの動きがみられ、前年以上の利益を確保できるとみている。メキシコのNJSMは拡販を進め、収益を向上・安定させる。米国のCSIは関税の影響でスラブの輸入コストが上がり、市場もあまりよくはなく業績は厳しいが、鋼材市況が足元上がり、中間選挙に向けた政府の景気対策も想定され、26年は業績の回復を期待している。国内は品川リフラが固定資産売却益で改善し、JFEシビルも大型物流倉庫の案件受注で24、25年度と利益を上げている。JFE条鋼は建設市場が低調な一方で鉄スクラップ価格が上がり、前年より厳しくなっている」

――実力利益の通期予想が前年比663億円減少するのもスプレッド悪化が主因に。

「スプレッドの悪化が780億円のマイナスとやはり大きい。鋼材市況が軟化し、対前年でみると為替の円高も影響して輸出の採算が悪化している。数量も減少している。単独粗鋼予想は2150万トンと前年比45万トン減り、構成比で取り返しているところはあるが、数量・構成で90億円ほどマイナスとなる。コスト改善で270億円のプラスとなり、倉敷の3高炉のバンキングの他、さまざまなコスト削減努力を積み重ねて効果を上げている」

――鋼材の平均販売価格が下がっている。主原料価格の変動以上に国内外の市況下落の影響を受けている。

「国内は輸入材が増え、海外でも大量・安価な中国材による市況軟化の影響を受けている。政府がニッケル系ステンレス冷延鋼板と亜鉛めっき鋼板のAD調査を始めるなど対策を講じているが、輸入材の影響を受ける構図をなんとか変えなければならない。中国は需要が低迷し、粗鋼生産量は減少しているが、鋼材の輸出量が減っていない。輸出を増やす中国に対する各国による通商措置の影響が日本にも及んでいる。中国の鉄鋼メーカーは利益が改善しており、高いコスト競争力を持つ以上、鋼材輸出が続く可能性は高い。26年度もその前提で経営の施策を考え実行に移していく」

――26年度、厳しい事業環境が続く見通しだが、収益を改善していく方策は。

「まずは今期の主原料価格の反映時期差を取り戻していく。鉄鋼事業の25年度の実力利益は通期で700億円、下期に273億円を予想している。下期を2倍とした500億―600億円に主原料価格の反映時期差の取り戻し分を加えて700億―800億円が鉄鋼事業の新年度のスタートとなる。増益の要素の一つはインドのBPSL(ブーシャン・パワー&スチール)への出資だ。3月末に25%出資し、6月末に25%、合計50%出資し、BPSLの利益の半分を取り込む。JSWは事業が堅調で利益改善が見込める。インドの事業は経済成長率、鋼材の需要の伸びをみて成長が期待できる。原料炭価格が上がっているので豪ブラックウォーターなどの原料権益もプラスとなるだろう。洋上風力発電向けの大単重厚板や26年度に稼働する倉敷地区の無方向性電磁鋼板の第2期能力増強投資の効果が見込める。高付加価値品の比率をどれだけ高めていくことができるかも大きなテーマとなる。コスト削減は毎年200億円ほど実行しており、国内外のこれらの施策で25年度以上の利益を確保していく」

――BPSLへの出資と能力拡張は2035年を目標とする長期ビジョン達成への大きな柱となる。

「東日本、西日本に次ぐ第3の製鉄所として技術を惜しみなく注ぎ込む。社員を派遣し、能力拡張に向けて投資を進めていく。まずは年産粗鋼500万トンの能力増強を行い、1000万トンに拡張する。BPSLの出資は当社が行うが、能力増強の資金はBPSLの利益や資金調達で賄うことを想定している。原料の鉱山を近くに保有し輸送コストが低く、コスト競争力は高い。高級鋼も見据え、導入する設備、製造する製品の詳細を詰めていく。電磁鋼板についてはJSWのビジャヤナガル製鉄所、JSWとの合弁のJ2ES、昨年に買収したJ2ESナーシクから供給し、拡大する需要を先行して捕捉していく」

――現中期経営計画(25―27年度)で海外での成長投資枠4000億円を計画している。原料投資も含まれるが、重要地域の北米市場で検討している投資計画の進捗は。

「米国の協業パートナーであるニューコアと相談しながら考えていく。市場の動向やコストなど難しい状況にはあるが、当面は米国経済の行方が焦点となる。安定的に成長する見通しとはいえ、不安定な面もあり、慎重に検討していく」

――急騰している原料価格の今後の見通しと収益への影響は。

「豪州のサイクロンの影響で原料炭の価格が急伸したが、季節的なものであり、鋼材の国際需給も大きくは変化していない。原料価格はあまり上がってほしくはないが、スポットマーケットの影響で過敏に動く可能性があり、留意している。一方で豪ブラックウォーター炭鉱など権益を持つ鉱山の収益や鋼材販売価格への転嫁による鋼材価格の改善、海外の鋼材市況の上昇などプラスに作用する側面もあり、いずれにしても販価をしっかりと改善していくことが重要だ」

――大和工業、ヨドコウとそれぞれ戦略的アライアンスを検討している。低迷する国内の建設市場への対応が急がれるが、検討の進捗と方向性は。

「現時点で公表できるものはないが、国内需要は厳しく、企業の枠を超えた効果的な協業は不可欠であり、引き続き検討を進めていく」

――JFEエンジニアリングの受注が前年に続き好調だ。

「25年度の受注高予想は7500億円と前年に続いて過去最高を更新する見通しだ。LNG関連のプラントを受注し、Waste to Resource分野も受注が好調だ。洋上風力発電向けのモノパイルの受注も獲得し、確実に遂行して利益を上げていく。25年度のセグメント利益は200億円と前年から7億円増えるが、26年度はさらに上振れが期待できる。モノパイルの建設については工事の進行に合わせて売上げが立つ工事進行基準であり、工事の進行とともに利益が上がっていく。ラウンド2の秋田潟上、秋田八峰能代、新潟村上胎内、長崎西海江島、27年度以降にラウンド3,4と案件が続く。26―28年度の3年間で推定37万トンの需要となる見込み。JFEエンジの笠岡モノパイル製作所の生産能力は年8万―10万トン。能力を十分に超える需要が見込め、しっかりと取り込んでいきたい」

――JFE商事は国内外の厳しい市場の中で通期450億円の予想と利益を安定して上げている。来年度以降の攻めの戦略は。

「来年度に向けて米国は建材子会社の回復を期待したい。欧州ではセルビアの電磁鋼板加工・販売子会社の稼働が本格化する。JFE商事はM&Aや事業買収などの成長投資によって、35年度の利益目標1000億円を目指していく。電磁鋼板においてはJFEスチールと戦略を同期化し、引き続き世界戦略を推し進める」

――2019年に副社長に就き、この春に田中利弘・次期副社長最高財務責任者にバトンをわたす。生産体制の再構築など構造改革や海外事業の選択と集中、新規投資など多くの施策に取り組んだ、この7年間を振り返って。

「20年春に構造改革を発表した直後に新型コロナ禍に見舞われ、厳しい時期が続いたが、これだけ市場の環境が悪化している中で利益を上げることができているのは、構造改革を実行できたことが大きい。構造改革を無事終えることができたのはJFEグループの社員や協力会社の皆様が協力し努力してくれたおかげと感謝している。構造改革の効果が上がり、利益が得られるようにはなったが、事業環境が激変しており、今のままではより高い利益を上げていくのは困難になっている。経営は環境に応じて変化していかなければならない。海外はインドで一つの方向性を示し、カーボンニュートラルの実現に向けた革新電気炉の建設やカーボンリサイクル高炉など各種試験炉も動き出している。将来につながる施策に着手しており、期待していただきたい」(植木 美知也)









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