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レアメタル新世紀/<2> 世界に広がる資源争奪戦
脱・中国めざし模索

日刊産業新聞 07/04/26

<最終回>  

 日本のレアメタル産業が注視すべき点は、中国の輸出規制強化だけではない。中国は今、急速な経済成長に伴う内需拡大を背景に、「供給国」から「消費国」へと変わりつつある。13億人分のレアメタルを確保するため、中央アジアや東南アジアなど周辺国の資源にも触手を伸ばし始めた。一方の日本も新たな供給国の開拓に乗り出している。かつて需要と供給の関係だった日本と中国。レアメタル資源争奪戦の舞台は世界に広がっている。

  中国南部の江西省がん州市。現在、ここでは昭和電工が現地企業と合弁で工場を建設している。モーターやハードディスク駆動装置などに使う希土類磁石合金を製造する。工場は8月に完成する予定。

  同社は03年にも、北部の内蒙古自治区で希土類磁石合金の合弁工場を設立した。需要の急増により年産能力1000トンの工場はフル生産している。

  合弁相手は両拠点とも中国の希土類生産者。磁石の主原料であるネオジムやジスプロシウム、テルビウムなどの確保が目的だ。

  中国企業との合弁により、レアメタル資源の安定確保をめざす動きは他にもある。

  超硬工具メーカーのタンガロイは昨年12月、中国のタングステン粉末メーカー南昌硬質合金有限責任公司への資本参加と技術供与を発表した。親会社の五鉱有色金属股フェン有限公司を通じて、原材料であるタングステンの安定供給が可能と考えた。

  ただ、中国政府の急速な輸出規制強化に危機感を抱く日本企業は、新たな供給国の開拓に乗り出している。
  レアメタル専門商社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ)は昨年、北南米地域に駐在事務所を開設した。
  中国、ロシア、中央アジアに特化したビジネスが売り物だったが、「今後の安定供給に支障を来す可能性が高い」(中村繁夫社長)として、供給基地の拡大を決めた。

  オーストラリア南部のニューサウス・ウェールズ州。下期から操業開始を計画しているヒルグローブ鉱山は、金とともにアンチモンも生産する。

  同鉱山のアンチモン年産量1万トンは、世界生産の推定10―15%。中国以外の有望な供給元として、三酸化アンチモンの国内最大手、日本精鉱などが関心を示している。

  「中国産を手当てできなければ金属ヒ素の供給は止まってしまう」。高純度金属ヒ素の世界最大手、古河電子の小長谷保平社長は危機感をにじませる。

  金属ヒ素は発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)のほか、携帯電話の電子デバイスなどに使うガリウム・ヒ素半導体の原材料だ。

  金属ヒ素の原料である亜ヒ酸を供給しているのは、中国雲南省近辺などに限定される。ただ、環境汚染を背景とする供給不安が強く、割高な欧州産の使用も検討中だ。

  日本の基幹産業を支えるレアメタルの確保は、今や国家レベルの関心事。独立行政法人・石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は昨年、タングステンなどの資源調査団をベトナムとカナダに派遣した。

  国際価格の急騰により、世界的にレアメタル資源開発の機運が高まっている。中国が世界シェア90%以上を占める希土類だが、米マウンテンパス鉱山、豪マウントウエルド鉱山などの操業開始が予定されている。

  JOGMECにはこうした開発案件を探し出し、「相手国と民間企業の橋渡し役になる」(馬場洋三・希少金属備蓄グループ担当審議役)ことが期待されている。

  ただ、世界のレアメタル資源に注目しているのは日本企業だけではない。

  AMJが輸入代理店を務めるロシア沿海州のプリモルスク鉱山には、中国企業がタングステン精鉱を買い付けに来る。すでに国内資源だけでは急増する需要に対応できなくなっているためだ。

  中国は犬猿の仲であるベトナムの資源にも手を伸ばしているほか、アフリカ諸国へも資源外交の輪を広げている。レアメタル資源を求めて世界に進出する中国。レアメタル資源の争奪戦が世界規模に広がる中、日本は中国以外の供給国の開拓と同時に、新たな道を模索する必要もある。(増田正則)

<最終回>  

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