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金属リサイクル―融合する東アジア市場

<鉄スクラップ編>

日刊産業新聞 2003/4/14

 月曜会(現=関東鉄源協同組合)が1988年に初めて鉄スクラップを輸出してから15年が経つ。現在、日本の鉄スクラップ輸出市場は、中国や韓国などアジア経済に組み込まれ、年間650億円市場(02年)に成長した。ステンレススクラップも後を追うように、近年輸出量を伸ばしている。02年の鉄スクラップ輸出量は603万5000トン、ステンスクラップ輸出量は12万1584トン。今後、中国の粗鋼生産量は02年、1億8000万トン(前年比20%増)、03年は2億トン台に達する見込みで、中国を中心とするアジアのおう盛な需要を背景に、スクラップの輸出拡大が予想される。東アジア圏でマーケットの一体化が進みそうだ。

 ▼輸出量の変遷

 日本の鉄スクラップ輸出量(財務省通関統計)は88年41万6000トン、93年117万8000トン、96年199万3000トン、99年431万5000トンと年々増加、01年は過去最高の615万1000トンを記録した。

 02年は603万5000トンと微減となったが、全体の15%を占めた。向け先別では中国250万9000トン、韓国196万5000トン、台湾92万3000トンで、3カ国で輸出全体の90%を占める。00年までは韓国がトップだったが、01年に中国(286万5000トン)が韓国(192万トン)を抜き、最大の輸出国となった。

 またステンスクラップ輸出量は99年4万9934トン、00年7万676トン、01年12万5883トン、02年12万1584トンと増加、うち70%を韓国が占める。ただステンの場合、輸入が01年13万1886トン、02年13万1441トンと輸出を上回り、特異な市場を形成する。12万―13万トンは、メーカー市中購入量の16―17%に相当する量で、アジア市場に連動した価格形成となりつつある。

 ▼国内市況への影響

 関東の有力鉄スクラップ業者(9―10社加盟)で構成する月曜会は後に、90年関東鉄源協議会、01年関東鉄源協同組合(75社87事業所加盟)と発展。組合が毎月行う鉄スクラップ輸出入札は、関東のみならず全国の鉄スクラップ業者、電炉メーカーが注目し、各地区の輸出価格や電炉メーカー購入価格に影響を与えている。

 01年6月、関東地区で史上最安値のメーカー購入価格6000円を記録。これが要因となり、01年の輸出量は前年比325万6000トン増の431万5000トンに激増した。同じく、ステンスクラップも99年1―5月に史上最安値のメーカー購入価格(18―8新断)5万5000円をつけ、輸出量が増加した。

 ▼今後のアジア市場

 03年の中国の粗鋼生産量は02年比2000万トン増の2億トン台に達する可能性が強い。鉄スクラップ消費量は、中国3000万トン、韓国2000万トン、台湾900万トン(年間)の予想で、中国を中心に需要はさらに増加する見通しだ。

 一方、韓国向けステンスクラップは、POSCOがクロム系の設備を増強(03年4月末完工)し、年産120万トンから166万トンに引き上げるのに伴い、輸出量が大幅に増える見通し。また中国の宝鋼集団は04年末に年産70万トンのミルを立ち上げることから、アジアの需給は一層タイト化する。