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[アジアン・メタルマーケット]

中国・原料編 <1>

原料需要は日々増加

日刊産業新聞 2003/8/28

 SARS(重症急性呼吸器症候群)や電力供給不足で一時低迷した中国。だが、12億6583万人と世界最大の市場を擁し、オフィスビルやマンションの建設需要は今も飛躍的に増加している。03年1―6月の粗鋼生産量は、前年同期比21%増の1億314万トンとなり、日本の鉄鋼業界で伝えられる『粗鋼生産量2億トン限界説』はほぼ覆されそうだ。鉄鉱石や銑鉄、鉄スクラップなど原料需要は日々高まっており、『世界の工場』となった中国を中心にマーケットが動き始めている。

 【鋼材需要】

 03年の中国の鋼材需要は、前年比2100万トン増の2億3200万トンに増加、04年はさらに03年比2200万トン増の2億5400万トン(IISI)に増えるとの見通しだ。中国建設部では、20年まで毎年4億8600万平方メートルから5億4900万平方メートルの住宅が建設され、住宅建設投資は年7%ほど増加すると予測している。


建設ラッシュが続く上海市内
 また、中国汽車工業協会が発表した統計によると、03年1―6月の自動車生産台数は乗用車や小型車の販売が好調で前年同期比34%増の207万6600台となり、販売台数も同比32%増の202万7200台と順調に推移している。「中国の10年後の自動車保有台数は1億台に達する」(国務院発展研究センター)との見方もあり、今後も鋼材消費量は増加の一途を辿りそうだ。

 【鉄源需給】

 原料供給は需要増に追いつかず、ひっ迫した状態が続く。中国の鉄鉱石(Fe35%)の国内産出量は、95年の2億6100万トンから01年に2億1700万トンに減少。02年に続いて、03年は2億3000万トン前後に微増するとされるが、品質が良くないこともあり、輸入鉄鉱石(供給量の約30%)への依存が高まっている。

 輸入鉄鉱石(Fe65%)をみると、オーストラリア産が主で、01年9200万トン、02年1億1200万トン(予想)と伸び、03年は1億7000万トンに増加するという。石炭は自給化できる態勢を整えているが、鉄鉱石の生産は頭打ち状態となっており、輸入鉄鉱石は年々増加、世界の鉄鉱石需給をタイト化させている。

 【冷鉄源需給】

 一方、鉄スクラップ消費量は年間約3000万トンで、供給元は製鋼工程で発生するリターンスクラップが50―60%を占める。その他、輸入スクラップ785万トン(02年、雑品スクラップ含)、鍋や釜など市中老廃スクラップが約1000万トン。地方の中堅電炉でも優質鋼(特殊鋼)を生産するなど、高品位な新断、高炉リターンスクラップの需要が高い。

 銑鉄の生産量は、01年実績1億5550万トン、02年は1億7000万トンに増加し、03年は1億9900万トンと約2億トンに達するとの見方がある。高炉、電炉が集まる揚子江(長江)近辺では、現在建設中の『ミニ高炉』が数基あり、中国全体でも割高な鉄スクラップの代替として使用する場合が増えており、銑鉄の生産能力は高まりそうだ。

 【統制の利かない中国市場】

 国家経済貿易委員会が01年に示した「10次5カ年計画」(01年―05年)では、増産による発展期を終え、今後は総量を規制し競争力を向上させる、との方針だった。だが、02年の粗鋼生産は、05年の粗鋼生産目標の1億6000万トンを超え、1億8155万トンに達した。「製品を造れば必ず売れる」(中堅電炉の担当者)。老朽化した設備廃棄を進める割には、目に見えた効果が上がっていないのが現状で、中国の経済成長は今後も続きそうだ。

→写真でみる中国のスクラップ現物
 スクラップ現物のカラー写真を掲載しています。