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岐路に立つメタル電線事業/<上>

調整は09年度後半

高圧電力ケーブル、中東特需に陰り 円高の進行

日刊産業新聞 2009年01月28日
 世界経済の急変調で、銅電線事業は新たな岐路を迎えつつある。送配電インフラ用の高圧電力ケーブルは直近3年間、世界的な好況に恵まれた。国内外の電線メーカーは受注残を抱えて現在もフル生産だが、2009年度(10年3月期)後半には操業率低下の可能性が出てきた。中東特需の陰りと円高の進行が、日本勢の新規受注獲得を鈍らせる公算が大きい。

 中東地域の旺盛な電力インフラ需要は、当初から「向こう3年間」の時限で見られることが多かった。オイルマネーによる積極的な電力インフラ投資。原油相場がいずれ下がれば、電力ケーブルの大型敷設プロジェクトも下火になる。あくまで「特需」と、関係者はあまねく認識していた。

 昨秋の金融危機の影響は中東にも及び、ドバイの不動産バブル崩壊など、地域経済の急停滞を伝える報道が増えている。日本国内の高圧電力ケーブルメーカー3社、ジェイ・パワーシステムズ(JPS)、ビスキャス、エクシムでは、昨年12月時点で中東の受注済み案件の延期やキャンセルは出ていない。

 ビスキャスは向こう1年間、エクシムは2009年秋まで、主力工場の高操業が続く見込みだ。電力ケーブルの敷設プロジェクトは受注から納品完了まで平均1―2年と足が長く、受注残の消化がまだ続く。

 しかし、「09年度後半には生産体制の見直しが必要かもしれない」(武田弘美・エクシム社長)。超高圧電力ケーブルを製造するエクシム愛知工場(愛知県豊川市)は現在、3班2交代制で土日もフル操業だが、今後の受注状況によっては、09年度下半期にも土日休業の通常体制へ戻す可能性があるという。

 新興国、とくに中東地域の電力インフラ投資動向が、景気後退で読めなくなったためだ。  日本勢には円高も痛い。超高圧電力ケーブルは、自国の工場で造り需要地へ輸出するのが主流。外国為替市場では昨秋から円の独歩高が進んだ。競合電線メーカーのいる欧州と韓国では、逆にユーロとウォンの対ドルレートが下がった。田邊輝義・ビスキャス社長は「輸出競争力が大きく落ちる。今後の新規受注に影響が出る」と強い懸念を示す。

現地生産・供給開始時期に苦慮

 為替変動リスク対策として、需要地でのケーブル現地生産が考えられる。そもそも07―08年を境に、日本勢を含む超高圧電力ケーブルメーカー各社は「現地生産・現地供給」の設備投資を強化する流れにある。

 JPSは既にインドで初の海外工場建設に着手。ビスキャスも海外製造合弁の設立交渉を詰めてきたが、最終段階に及んで電力ケーブル需要の先行き不透明感と、金融危機に伴う融資難の問題が急浮上した。「合弁の話はマーケットの膨張が前提。投資してもフル操業に持っていけるのか」(田邊社長)。

 ビスキャスはこのため、現在「待ち」の状態。一方のJPSはインドの工場建設を当初計画の規模・時期で進めており、2010年上半期に操業を始める意向だ。海外進出のいち早い決断が先行者利益につながるためともみられるし、既に建屋建造・設備発注の段階に入り後戻りできないとの見方もできる。

 エクシムの武田社長は「今後の仕事量がどれだけ減るかは1―2月である程度見えてくる」と予想する。昨年10月に中東で大規模な電力ケーブル敷設プロジェクトが挙がっており、1月中旬に入札締め切り、2月ごろに入札結果開示となるためだ。「今後の価格や数量の試金石になるのでは」(同)。

 需要量が減ってもし値引き競争の流れに傾けば、円高の影響も受ける日本勢は採算面で非常に厳しい。ただ、需要も為替もメーカー自身に制御できない外部要因。JPSの福永定夫社長は「品質やサービスを重視してくれるユーザーとの付き合いを大事にするしかない」と、日本メーカーならではの強みを前面に打ち出す姿勢にぶれがない。

 国内3社も手をこまねいているわけではない。ケーブル接続部品の海外生産開始、直流CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ケーブル)の量産検討など、新たな成長策に動いている。高圧電力ケーブルの旧国内6ブランド体制が3ブランド体制に統合されて約4年。特需の終息とともに、3社の真の体力と戦略が問われ始める。    


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