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豪レアアース開発が迷走

代替国の魅力薄れ

日刊産業新聞 2009年02月23日
 オーストラリアの希土類(レアアース)資源開発が迷走している。世界生産の90%を占める中国の代替国として豪では複数の開発案件が進行中だが、アラフラ・リソーシズが中国の出資を受け入れるといった「矛盾」が生じている。金融危機の影響で新規開発案件が資金難に直面、開発継続のためになりふり構わず中国の支援を受け入れた。一方で中国の出資を拒否しているライナス・コーポレーションは開発中断を発表しており、金融危機が希土類資源の脱中国化を妨げている。

アラフラ社 中国資本受入れ

 「中国とは関係ないプロジェクトだから価値があるのに、中国の出資を受け入れたら何の魅力もない」

 豪北部準州で希土類のノーランズ開発プロジェクトを手掛けるアラフラ社が18日、中国の資源開発グループである有色金属華東地質探査局(ECE)の出資を受け入れたことについて、国内の希土類業界関係者は手厳しく批判した。

 希土類は中国が世界シェア90%以上を占める。日本の自動車、家電、工作機械などには欠かせない資源だが、中国の輸出規制強化などにより安定供給に不安を抱えている。

 世界的な需要拡大を受け、中国以外の供給国としてカナダ、ベトナムなどで資源開発機運が盛り上がっているが、豪もそのうちの一つ。それだけに今回アラフラ社が中国資本を受け入れることについては「理解に苦しむ」と、国内需要家は切って捨てる。

 ここ数年の資源バブルによりファンド資金による新規開発案件が相次いだ。しかし金融危機の影響で資源バブルは崩壊。ファンド自体の体力も弱っており、資源開発への投資余力は減退している。

 ファンド資金を後ろ盾とする資源会社は資金調達難に直面。アラフラ社は開発継続のために中国資本という安易な道を選択したが、希土類のメジャー市場である日本の視線は冷ややかだ。

ライナス社 資金難で開発中断

 中国は国外の希土類資源の囲い込みにも積極的だ。先週18日に産業新聞社の取材に応じたライナス社のマシュー・ジェームス副社長は、「(中国から)出資の話はいくつもある」と明かす。

 ただし、「自分たちは中国と提携する意思はない」とも話す。これからの希土類資源開発では、「中国とつながっていないことが重要」だと認識しているからだ。

 しかし金融危機の影響で資金難に直面している状況はアラフラ社と同じ。ライナス社は3月末で開発を中断する。そして豪、マレーシア、日本の政府系機関や、日、欧、米などの需要家に資金支援を要請する考え。

 日本の業界関係者は脱中国を貫くライナス社にはおおむね好意的だ。しかし開発資金を支援するとなると別の問題が浮かび上がる。

 ライナス社のジェームス副社長は中国の資源寡占化に言及し、「日本の需要家は決断する時だ」と訴える。日本側も「中国以外の供給先は重要」との認識で一致しているが、それは建前。景気悪化による価格急落と需要減で「出資する余裕はない」というのが本音のところだ。

 アラフラ社は中国資本の受け入れで当面の開発継続は保障された。しかし、将来の販売に支障を来すリスクも抱えたことになる。一方で信念を貫いたライナス社は開発中断に追い込まれるなど、金融危機が豪の希土類開発をほんろうしている。    


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