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世界中でアルミ原料不足

露・欧州は厳冬追い打ち/中国大手でも手当て難

日刊産業新聞 2010年01月25日

 世界各国でアルミ原料不足が深刻化している。最も発生の多い北米市場では品薄が長期化する中、中国がけん引する外需増加で市況は騰勢を強めている。ロシアや欧州でも厳冬が追い打ちをかけ発生量が激減。この影響で、中国の大手二次合金メーカーであっても注文に見合う原料を手当てしにくい状況が続いている。

 「2010年のアルミスクラップはタイト感が一層増すだろう」。米西海岸の大手鉄・非鉄原料業者、アルパート&アルパートのハーベイ・ローゼン・アルミ部門副社長は、昨年11月中旬来日した際、こう明言した。ローゼン氏の予想は現実のものとなり、年明けのアルミ原料市場は物不足が顕在化している。

 世界最大手のアルミ二次合金メーカー、シグマグループは78年の創業以来初となる原料不足に直面、「一部注文を断っている」(トニー・フアン会長兼CEO)。中国の大手二次合金メーカー、怡球グループも同様に「すべての引き合いに対応できていない」(ケニー・リュー・販売・物流部門長)。

 成長著しい中国自動車市場を追い風に、中国の二次合金需要は右肩上がりで推移する。当然、シグマ、怡球の大手2社への引き合いも強い。だが、足元はこうしたトップメーカーであってもより多くの原料を確保するのが極めて困難な情勢が続いている。

 国内発生の少ない中国は主に北米産アルミ原料に依存。米景気の低迷で自動車関連をはじめとする工場稼働率の低下、消費の冷え込み、建築解体件数の激減など複数の要因が重なり、国内のアルミ発生は依然停滞したままだ。米西海岸に事務所を構える日本の大手二次合金メーカー現地法人は「リーマンショック後は一時、発生量が最盛期と比べ3―4割まで落ち込んだ。現在はやや回復したものの、せいぜい6割程度にとどまっている」と指摘する。

 シグマは不足分の原料を補うため、苦肉の策として高品質原料、ロシア産AK5M2を大量に成約した。これらの船積みが届く「3月には原料不足を解消できるだろう」(フアン会長兼CEO)と踏んでいる。

 しかし、ロシア側の供給事情もまた厳しい。長引く輸出低迷が収益を直撃し「大手も含め多くの合金メーカーが破産手続きを進めており、生産量も少ない」(セルゲイ・サンドロコフ氏・大紀アルミニウム工業所ロシア連絡事務所)。最低気温マイナス20度という大寒波に見舞われ、アルミスクラップの発生も激減、これを受け大手問屋業者であっても操業停止に追い込まれている。

 シグマや怡球の大手クラスであれば、強い購買力と米現地法人などのネットワークを駆使し、発生薄でも何とか一定量の原料を調達できる。だが、資金力に乏しい中国のB団、C団の二次合金メーカーの中には原料集荷に苦慮し、生産減、操業停止を余儀なくされるところも少なくないという。こうした事情で「B団、C団からの2―3月積みの日本向け輸出オファーはほとんどない」(商社筋)。

 日本のアルミ原料市場も発生が大きく落ち込んでいる。「日本で発生するアルミスクラップの数量は今後、年100万トン程度になるだろう」。19日、都内で開催された日本アルミニウム合金協会の賀詞交歓会であいさつに立った川上耕二会長(日軽エムシーアルミ社長)はアルミ原料の大幅な減少を予測した。

 日本のアルミスクラップ発生量は最盛期で年160万―170万トンあったと推測される。金融危機以降の内需縮小に伴う工場稼働率の低下や、建設不況などが響き発生量はすでに大きく減退している。多くの原料問屋は「取扱量は従来の6割程度にとどまっている」と口をそろえる。日本の合金メーカーに対して顧客から増量要請が相次いでいるが、大手メーカーの多くは、原料不足と引き合い価格の低さを理由に「注文を断っている」(大手メーカー)。

 アルミスクラップは国内外ともに売り手の立場がさらに強まったことで、先高を見越して売り惜しみする業者も少なくないようだ。春節休暇で2月は中国勢の買い一服が予想されるものの、工場が再稼働する3月以降は再び市況がジリ高推移する可能性が高い。

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