SANGYO SHIMBUN 90th ANNIVERSARY
INTERVIEW STORY
Portraits of Strategy

鉄スクラップ 米国市況、二極化進む 鋼材 トランプ関税恩恵で上昇

2026.09.04 / 3 min read
Special Partnership
OFFICIAL PARTNERS
激動の時代において、不変の価値とは何か。
最前線で舵を取るリーダーが、その胸中を明かす。
米国の鉄鋼市場で鋼材と鉄スクラップの価格差が広がっている。熱延コイルの相場は昨秋から約1年にわたり上昇基調にある一方、鉄スクラップ価格は約5カ月間下がり続けている。鋼材市況が上昇した最大の要因はトランプ大統領による鉄鋼の追加関税引き上げだ。安価な輸入材の流入が減り、国内鉄鋼メーカーの受注が回復し、保護貿易の恩恵を享受している。ただ、中東情勢の悪化や中国の過剰生産などで世界の鋼材需要は伸び悩んでおり、主原料となる鉄鉱石や鉄スクラップの市況も弱含んでいる。世界最大の鉄スクラップ輸出国である米国もその影響は免れず、当面は鋼材と鉄スクラップ市況の二極化が続きそうだ。

 米国鉄鋼協会(AISI)によると、1―7月の鋼材輸入は前年同期比19・6%減の1686万5343ネットトン。このうち、熱延コイルは38・4%減の55万5982トンと大幅に減少している。

 調達先が国内鉄鋼メーカーに回帰する中、鉄鋼最大手のニューコアは毎週月曜日に発表する熱延コイルのスポット販売価格を5―10ドルと小幅な上げ幅で小刻みに改定。1月から6月まで23週連続で値上げを実施するなど、市場への着実な浸透を図ってきた。最新の販価はネットトン当たり1185ドル(約18万7000円)と1年前と比べ310ドル高い。

 輸入減に加え、米国の鋼材需要が堅調なことも市況を押し上げる要因となっている。AI開発の加速に伴い、データセンターの建設が活況を呈しており、エネルギーや半導体などハイテク産業向けも好調に推移している。市場調査会社の米スチールベンチマーカーの調べによると、米国の熱延コイル相場は先月末時点でトン1284ドル(約20万5000円)と昨年8月末と比べ373ドル高い。昨年10月末以降はほぼ一貫して上昇している。

 一方、鉄スクラップ(HMSNo.1)の価格は3月23日に直近高値のグロストン当たり397ドルを付けてから下がり続け、8月24日時点では352ドルと、5カ月間で45ドル(11・3%)下がった。

 相場下落の背景には、世界最大の鉄スクラップ輸入国であるトルコの鋼材需要の低迷がある。2月末に米とイスラエルがイランを攻撃したことによる中東情勢の緊迫化が影響した。米国は世界最大のスクラップ輸出国で、国際市場の影響を受けやすい。

 東南アジアや南アジアの鉄スクラップ需要国の鋼材生産が雨期に落ち込んだことなども米のスクラップ相場を冷やす材料となったもよう。中国やロシアの割安な鋼材が国際市場に流通して世界的に製鋼原料の需要が停滞していると指摘する声も聞かれる。

 米国の使用済み自動車由来のスクラップ輸出量も減少しており、需給を緩めた。現地の鉄鋼市場関係者はその理由を「全ての鉄鋼輸入品に課される50%の関税の影響で、トルコ、インド、南米などの鉄鋼価格が米国よりもはるかに低いため」と説明する。

 また米国では例年、春から夏にかけて気温が上昇するのに伴い、廃自動車や建築物の解体工事が増えて鉄スクラップ母材の発生量が増加する傾向にある。

 ある商社は「足元は、2025年春から26年春まで上がり続けた鉄スクラップの国際相場の調整局面を迎えている」と分析する。米国のスクラップ相場を押し上げる材料は今のところ「見当たらない」ようだ。

 世界情勢を映す鉄スクラップ市場に対し、鋼材市場はトランプ関税の高い壁に覆われているが、その壁の一部を低くする動きもあった。米国が25年に最も鋼材を輸入した相手国がカナダだが、そのカナダとの間で先月まで行われていた通商交渉では、鉄鋼関税を現行の50%から25%に引き下げる方向だったとロイター通信が伝えている。交渉が決裂したことで鉄鋼関税は継続し、国内メーカーの優位性も保たれることとなり、鋼材市況が下振れするリスクは遠のいた。

 ただ、内外価格差の拡大を受け、直近ではアジアからの輸入が増えており、韓国からの輸入は7月に前年同月比31・8%増の55万6000ネットトンとカナダの同月実績の2倍に達した。今後の市況にも影響を与えるとみられ、上昇ペースはこれまでよりも緩やかなものとなりそうだ。

BACK TO TOP 90周年特設サイトへ戻る
次代を創る、
働き方のヒント。