新社長に聞く/JFE条鋼/錦織 正規氏/変化し続ける集団に

新社長に聞く/JFE条鋼/錦織 正規氏/変化し続ける集団に
大手電炉メーカー、JFE条鋼は2026年4月1日付で錦織正規氏(前・JFEスチール専務執行役員西日本製鉄所長兼福山地区所長)が社長に就任した。新社長の抱負や経営方針などを聞いた。

――抱負から。

「当社は数トン単位の細かな注文をくださるお客さまに対し、営業担当者が1社1社と真摯に向き合い、強い信頼関係を築いている。また全国5製造所はコンパクトで小回りが利き、効率良くモノづくりを行っている印象を受けた。強みであるこの企業文化を生かしながら価格だけでなく、従業員の『仕事の品質』も含めた品質をはじめ納期、お客さま対応など総合的な観点においても信頼を高めていく。また新しいことに挑戦して失敗を恐れずに変化し続ける集団を目指し、コミュニケーションを密にして会社を前進させていきたい」

――鋼材需要の低迷、各種コストが上昇している厳しい環境下で舵取りを担うことになる。

「鉄スクラップをはじめとする原料、資機材などの諸物価が高騰するとともに、鋼材需要についても形鋼と異形棒鋼の国内販売や輸出が低迷するという厳しい経営環境下にある。コスト上昇分を製品販売価格に転嫁するべく、お客さまに丁寧にお願いする必要がある。流通の皆様と一体になり、サプライチェーン全体で再生産が可能になる販売価格の実現を目指す。一方、操業安定化や生産性向上、コスト競争力の維持・強化を図り、製販一体で事業基盤を一層強化する」

――中東情勢の影響は。

「JFEスチールを含めた各社の協力によって、現時点で操業に支障を及ぼすような大きな影響は出ていない。ナフサショックで潤滑油や作動油類は値上げの直撃を受け、従来よりも納入に時間を要するものもあるが、メーカーや流通の協力を得ながら、操業に影響が出るような枯渇状態が起きないようにしている。今後も先行きの見通しは不透明だが、前広に情報を収集し、調達に万全を期す」

――カーボンニュートラルへの取り組みを。

「電気炉への排ガス分析装置導入など省エネルギー設備の戦力化を進め、データサイエンス(DS)技術適用による効果最大化を目指す」

――環境配慮型鋼材「エコエル」の状況は。

「販売を拡大してマーケットへの普及を図るため、取引先や取引先のお客さまへのPR活動を強化している。形鋼では受注が決まった案件も出ている。異形棒鋼は民間建築の基礎鉄筋で引き合い、使用が増えている。官公庁建築案件や高規格道路、橋梁など土木分野へのアピールを強めて、受注に結び付ける」

――設備投資の状況はどうか。

「姫路製造所は伊・ダニエリの次世代型製鋼用電源システム『Q―ONE』の導入が25年10月に完工。初期トラブルが発生したものの、現在は安定稼働を続けている。水島製造所はダニエリが電気炉更新と『Q―ONE』導入、それに伴う交流式電気炉への換装を行う。28年春の稼働を目指して工事を進めているが、工事期間中にお客さまに影響が出ないよう、ビレットを備蓄して圧延生産を継続するよう計画している」

――製造所のAI活用、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の状況を。

「DXは前中期経営計画の成果発現の段階を迎えている。各製造所共通のデータ統合プラットフォーム構築は姫路、鹿島両製造所で部分稼働がスタートした。BIツールとの組み合わせによって生産実績などKPI指標の可視化を行うとともに、手入力で煩雑なエクセル作業から脱却した異常解析用ツールとして活用している。また、25年からDX担当の技術主監を配置してDS教育を進めてきた。操業知識を有する社員がDX、DSを駆使することができ、効果創出に直結しやすい体制作りを目指している。さらに外部教育機関も活用し、トップデータサイエンティストを1人育成した。各製造所のDX/DSプロジェクトは解析・検討のフェーズから、成果発現のための実装段階に移行しつつある。このほか事務系社員を含めた全社において、市民開発ツール適用の取り組みを本格的にスタートしている。25年度末時点で30件以上が実運用され、200時間弱の繰り返し業務時間短縮を達成しており、社員のより本質的な業務への移行を推進している」

「AIの普及はオフィス人材の働き方を確実に変えると考えており、当社ではすでにその変化が始まっている。26年度からAIエージェントの活用に着手した。『出荷予測&生産計画立案エージェント』の開発トライアルを始めており、複数部署にまたがる業務を1つのエージェントが代行し、意思決定の高度化・迅速化を目指している」

――鉄スクラップの調達戦略は。

「ディールコネクトの鉄スクラップ納入予約・管理システム『Onetap(ワンタップ)納入管理』システムを全製造所に導入し、ドライバーの待機時間短縮など改善を図っている。また鉄スクラップを安定的に購入するため、地域の鉄スクラップディーラーや商社の要望を聞く場を設け、それを取り入れている。また、金銭面以外で納入業者にとってのメリットを考えている」

――資源リサイクル事業はどう推進するか。

「鹿島、水島両製造所の東西2拠点体制で、一般廃棄物と産業廃棄物のリサイクルを拡大させていきたい。水島は『低濃度PCB廃棄物無害化処理』についての環境大臣認定を取得し、25年9月から無害化処理を始め、25年度下期の処理実績は445トンとなった。大型炉による高効率処理を行うことで、PCB廃棄物処理の早期化に寄与する。鹿島は25年11月に発生した火災影響で一時期、処理不能になったが、26年5月から電気炉による一般廃棄物の処理を再開した。処理能力をアップし、お客さまの期待に応えるようにする」

――人材の確保・育成についてはどうか。

「労働市場が一段とタイト化する中、優秀な人材を継続的に確保していくことは極めて重要。総合職や技能職ともに定期採用だけでなく、キャリア採用や社員紹介採用などで採用母数を拡げながら、ほぼ通年単位で採用活動を行い、必要な人材を確保する。姫路製造所では女性現業職採用推進の観点を含めて建設を進めてきた初の女性専用厚生棟が25年度末に完成した。今後も各製造所の厚生棟や現場詰所、食事・休憩スペースなど老朽化状況に応じたリニューアルを進めていきたい」

――働き方改革への取り組みを。

「現行の第8次中期経営計画内において、柔軟な働き方や制度見直しの検討を進めている。育児休業、とくに男性の育児休業の取得率向上は課題。子供が生まれた社員を対象にアンケートを実施してニーズや課題の実態把握を行っており、取得向上への施策を講じる。また一般事業主行動計画で女性総合職比率を現行5・8%から8%へと2%以上増やす目標を掲げ、採用活動や定着対策を進める。さらに休み方改革として、年末年始やゴールデンウイーク、シルバーウイーク以外で『最低5連休の取得』ができるよう働きかけている」

――27年4月をめどにJFEスチール西日本製鉄所福山地区の形鋼事業の運営を、JFE条鋼に移管する。

「福山地区の形鋼事業は高炉素材を使ってどれだけやれるかを、収益面を含めて検証してきたが、厳しい部分は厳しく、操業度も落ちていたため、生き残るためにどうするかを考えた。福山の形鋼サイズについては電炉でも十分出来ているところもある。27年度中に福山地区のブルーム連鋳機を休止する計画で、倉敷地区から福山にブルームを供給するとしていたが、電炉材であるJFEスチール仙台製造所や当社姫路製造所のブルームを活用することも踏まえ、JFEスチールグループで形鋼の中心的役割を担っている当社に素材供給を含めて事業運営を移管される。今後も形鋼需要は爆発的に増えることはなく、集約も含めて移管したほうがいいとJFEスチールと当社で判断した。需要が長期低迷することも想定し、JFEグループとして最適生産体制や、さらなる協業についても検討を進めていく。この中で、必要があると判断すれば投資も考える」(濱坂浩司)

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▽錦織正規(にしこおり・まさのり)氏=89年東北大大学院工学研究科修士課程(金属工学専攻)修了、川崎製鉄(現JFEスチール)入社。入社後は製鉄所に勤務し、一貫して製鋼畑を歩んできた。JFE条鋼社長就任で初めて東京での勤務となり、「毎日スーツを着る生活に慣れていない」と苦笑い。

18年JFEスチール常務執行役員東日本製鉄所(千葉地区)副所長、21年同棒線事業部仙台製造所長、23年専務執行役員西日本製鉄所長兼福山地区所長、26年4月に現職就任。

「明るく、楽しく、前向きに」と「やるべきことをしっかりやり抜く」が信条。好きな言葉は山本五十六氏の「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」、「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」という。

「一人でも、仲間とでも動き回っているのが好き」で、趣味は城跡巡りや旅行、乗り鉄・撮り鉄など多趣味。料理は中華などが得意で、味にこだわりを持つ。64年5月14日生まれ、千葉県出身。

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