2026年1月22日

非鉄新経営 厳しさ増す市場に対応/DOWA HD社長/関口 明氏/製錬の副産物回収強化/電子材、新規商品受注が増加

DOWAホールディングスは、今年度より新たな3カ年中期経営計画「中期計画2027」をスタートさせた。環境・リサイクル、製錬、電子材料、金属加工、熱処理の5つの事業でそれぞれどのような成長展望を思い描いているのか。関口明社長に聞いた。

――今期の事業環境を。

「想定よりマイナスに振れたのは銀粉。亜鉛鉱石のTC(溶錬費)の落ち込みは想定通りだ。プラス要因としては、為替を含む相場が有利な方向に振れた。相場影響が一番大きいのがメキシコの2鉱山の収益。いずれも売り上げの半分以上を占める銀の価格が史上最高まで上がり、収益が大きくなっている。電子材料系の新規商品の出荷がサンプルも含め想定より上振れているのも、来年度以降に向け明るい材料。当初の業績見通しは減益を見込んでいたが、前期並みで着地しそうだ」

――部門別の状況と成長戦略を聞きたい。まず環境・リサイクル部門について。

「これまでの取り組みがうまく収益につながっている。低濃度PCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の処理期限が27年3月に迫るが、それをカバーする高単価の難処理廃棄物の集荷・処理を推進する。新中計の200億円のM&A枠は環境・リサイクル関連を想定する。当社事業とシナジーがある、あるいは相互補完できる相手がいれば事業提携やM&Aを行いたい。例えば手薄な中京圏や近畿圏などで候補があれば取り込みたいが、まだ具体的な案件はない」

――熊本と栃木の新工場は。

「熊本は試運転から本格操業に移行しつつある。熊本は半導体産業が集積し、廃棄物処理やリサイクルのネタが多く転がっている。敷地に拡張余地もあり、九州経済圏全体での当社ビジネスをより一層強化できると思う。栃木で予定する新拠点は、まずメルテック小山に関連する事業を行う。グループの製錬所がある東北と関東の中間地点に位置し、結節点としての活用も考えている。栃木やいわきでは一般廃棄物の焼却灰の溶融処理事業を手掛け、小坂製錬でそこから金属を回収している。循環経済の観点で自治体の関心も高く、処理費と再資源化で利益が得られるビジネスとして追求する」

――Eスクラップの増集荷は。

「最大の集荷先である北米は、これまで東海岸側を中心に集めていた。新たに設立した営業拠点を活用し、西海岸側も増やしたい。米国拠点から足を延ばせばメキシコ、ブラジルなどもポテンシャルがありそう。東南アジアでも集荷拡大を探りたい」

――リチウムイオン電池(LiB)のリサイクルはどうか。

「LiBは少しマーケットの立ち上がりが遅れそう。技術はある程度確立できており、ブラックマスの品質向上をさらに追及する」

――東南アジア事業の取り組みを。

「インドネシアの第2最終処分場が黒字に浮上。シンガポールも赤字事業の手仕舞いが完了し、出血を止めて反転攻勢に入ろうかというところだ。シンガポールとタイの子会社への増資を発表したが、シンガポールは一部老朽化設備のリプレースと増強を行う。医療系廃棄物を中心に、難処理・高単価な廃棄物がまだまだある。同国の炭素税がかかるキャパまでは少し余裕があるため増強もできる。タイは財務基盤を整え事業強化に向けた次の手を模索する。現中計期間は準備段階が中心になると思うが、30年以降はさらなる成長を具体化できそうだ」

――製錬部門の事業環境は。

「亜鉛TC悪化と過去数年の電気代高騰に苦しんできたが、スポットTCは25年のベンチマークを上回っており、26年はTCが明らかに好転する。国内の亜鉛需給は1社撤退により改善した。製錬で22種類の元素を回収しており、金属相場上昇と円安が収益を押し上げる。ここ数年低調だったPGM(白金族類)価格の回復で、自動車の使用済み排ガス浄化触媒の集荷も底打ちした。触媒リサイクルはこれまで投資してきた小坂工場の設備能力増強、北米のサンプリング工場新設、スペインのサンプリング工場強化などの効果を発揮できる環境が近々整いそうだ」

――製錬はコンビナート機能の強化を掲げる。

「製錬・リサイクル複合コンビナートの再構築プロジェクトとして30年までに1000億円という投資目標を打ち出した。労働人口減少への対応や作業環境改善、革新的な工場づくりなどのアイデア出しをしている。製錬設備に限らず、原料の前処理や事業買収なども含めてフリーハンドで検討する」

――小坂製錬の重点施策を聞きたい。

「原料中の有価金属の回収率を中長期的に上げる。これまで使えていない廃棄物を、環境・リサイクル部門で製錬原料にする取り組みも徐々に進んでいる。小坂は100%リサイクル製錬だが、元々は鉱石を処理していた設備のため、最初の工程のTSL炉以外はキャパが大きすぎてバランスが悪い。無駄な建屋もあって動線が悪く、老朽化も進むため、設備の再配置などは1つのテーマだ。そうすることで将来的に回収率を高めたり、回収対象の元素を増やしたりする拡張余地もできる」

――秋田製錬は。

「亜鉛は鉄鋼メーカーの電炉シフトに伴い二次原料の電炉ダストが増加する。ダストからの亜鉛回収強化は中期的に進めていく。一方で、製錬コンビナート機能を生かして副産物収入を拡大するためには鉱石の確保も重要。ティサパとロスガトスの2鉱山に加え、新しく副産物収入が期待できる良いプロジェクトがあれば参画したい。ロスガトスは周辺鉱区で探鉱も行う。ティサパは24年後半からストが続いたが、10月に再開した」

「秋田製錬は完全子会社化し、周辺の亜鉛系子会社も統合した。一つの組織として亜鉛の製錬・加工から副産物のレアメタル回収までできる体制が整ったが、成り立ちの違いがあり、必ずしも効率良い設備配置にはなっていない。やるかやらないかは別だが、例えば秋田製錬で造った地金を加工工場で再溶解しているのを、工場が横にあれば樋でつなぎ溶体で送れる。一朝一夕にはできないが、こういった取り組みがコンビナート再構築のテーマになる」

――副産物をどう増やすか。

「原料のすそ野を広げるのが一つの手で、それは環境・リサイクル部隊が取り組んでいる。製錬側では回収率を上げたい。TSLのパイロットプラントを使い、操業条件の最適化などを探っている。また、5部門の需要家と一緒になり、資源循環ループをもっと多く作りたい。村田製作所との銀の水平リサイクルスキームを公表して以降、様々な問い合わせがある。鉱山プロジェクトへの参画や外部調達を含め、副産物が多い鉱石の集荷を進めるのも一つだ」

――自山鉱比率の考え方を。

「ティサパとロスガトスで秋田製錬の必要量の4割位を賄えている。安定調達できる電炉ダストも1割位あり、これが2割になればより安定性が増すのかなど、外部調達も含めうまい組み合わせを考えていく。自山鉱比率をこれ以上高めることにはこだわらない。ティサパの山命があと10年位のため、その後継は見つけたい」

――電子材料部門はどうか。

「銀粉は中国で太陽光パネル向けのシェアが落ちている。最大の要因は中国製品との価格差だ。これまでは高性能なものを提供することで埋めてきたが、需要家のペーストメーカーやパネルメーカーが多少性能の落ちるものも使いこなすようになった。価格差を性能で埋める方針が通用しなくなったと認識しており、中国での太陽光パネル向け銀粉事業はゼロベースで見直す。ここにきて中国以外のパネル向けでも少し銀粉の消費が出ており、そこは高性能品でしっかりとシェアを獲得する。パネル以外の電子部品にも銀粉は結構使われる。ここは国内需要家が中心であり、シェアを維持したい」

「銀粉以外の新商品でも収益の底上げを図る。近赤外LEDと受光素子のグレードアップ商品が需要家の次期製品に搭載されることが決まり、受注が逐次入っている。この事業は経常黒字化できている。次の世代の製品への搭載でも引き合いがあり、試作品を供与して非常に良好な反応をもらっている。燃料電池用の複合酸化物粉も、ここにきてAIサーバーの電源に使われる燃料電池向けで受注が増えている。この1―3月期あたりから販売する見立てで、さらなる増産要望もある。電子材料の既存商品では人件費や輸送費の上昇分を転嫁するため価格改定活動も地道に行い、多くの需要家に理解をいただいている。電子材料は来年度の黒字化をある程度確信している」

――金属加工部門は。

「情報通信機器・半導体関係の伸銅品の引き合いが、AIブームも受け強まっている。半導体向けは薄くて高強度の材料が求められ、近年投資してきたDOWAメタニクスの新圧延機が良いタイミングで完成した。メタニクスは差別化できる高機能品の製品ラインアップを拡充できており、足腰が強くなっている。めっき事業は車載向けを中心に、当社しかできない厚物めっきなどの引き合いが強まり、今後3年位はモデルチェンジする電気自動車の多くで我々の技術が使われそう。金属セラミックス基板は鉄道向けに加えて産業機械や車載向けも引き合いが増しており、拡張工事も視野に入れる」

――最後に熱処理事業を。

「自動車関連が中心のため、自動車生産に左右される。幸い当社の取引先は多くが順調だ。新たな低環境負荷熱処理炉への問い合せも増え、商業ベースでの処理の引き合いもある。需要家の設備リニューアルなどのタイミングで、置き換え需要も今後あると思っている。工業炉の脱炭素化は、省エネルギーによる操業コスト削減効果も見込める。脱炭素とコスト削減を両立できるアイテムとして需要家に評価いただきたいと考えている」

「もうひとつ期待しているのがインド。経済成長と大気汚染対策などで電気自動車の普及が進む。当社は7工場全てで初めてフル生産になり、なお足りないような引き合いがある。いくつかの工場ではラインの増強を検討する。現地経営陣のネットワークを活用し、熱処理以外の4つのビジネスでもインドで何かできないか探索したい」

――GXの取り組みについて。

「当社の事業は高度化するほど追加のエネルギーが必要になる。社会全体の脱炭素化に貢献しているという部分を、第三者機関の協力なども受けながらいかに理論的に世の中にアピールしていけるかが、GXに対する取り組みの方策の一つだ。一方で、自前の技術開発で排出を極力抑える取り組みは当然進める。環境・リサイクル部門が開発したバイオコークスは、小坂製錬のTSL炉パイロットプラントも利用して実証試験している」

(田島 義史)







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