日新製鋼とステンレス専業メーカーの日本金属工業は19日、共同株式移転による持ち株会社設立に合意し、統合基本契約を締結したと発表した。本年10月に設立する持ち株会社は、株式移転比率が日新製鋼1対日金工0・56。社名は日新製鋼ホールディングス(株)。取締役会長に鈴木英男・日新製鋼会長、代表取締役社長に三喜俊典・日新製鋼社長、代表取締役副社長執行役員に義村博・日金工社長がそれぞれ就任する。ステンレス事業は、製鋼工程を日新・周南製鋼所に集約して日金工・衣浦製造所の設備を休止し、販売機能を日新に集約する。グループ事業や本社・支社機能統合などの再編を実施し、2016年度めどに経常利益ベースで年間130億円の統合効果を引き出す。
日新製鋼・日本金属工業両社長の会見内容は次の通り。
――株式の比率と役員の比率は大きく違うが。
三喜「株式交換比率は、現在の株価を条件としている。いくつかの方法があるが、基本契約を結んだときから遡ってとか、11月15日を起点としてとか、お互いのアドバイザーの決定による範疇の中で決めた。役員の数は時価総額、総資産といった企業規模でどうかという点で、この内容になった」
――新会社の人事は。
三喜「一つは子会社の経営をどうしていくかがポイント。義村氏には製造子会社となる日金工の経営をしっかりやってもらい、私は10月1日以降子会社になる日新製鋼の経営をしっかりやっていく。そのベースの上に持ち株会社が成り立っている。マネジメントというか事業計画などは持ち株会社でやっていく。われわれはほとんど兼務になる。別々の経営体制では無駄になる。会長というポジションもほぼ相似形として持ち株会社にもっていく」
――3人の役割分担はどうなる。
三喜「それぞれの子会社の事業管理なり事業の方向性をきちっと。それを踏まえて全体系を決め、持ち株会社で議論する。(全体で10人の)取締役も入るので、ボードメンバーと一緒に全体事業計画を進める。会長の立場としては(経験豊かな会長なので)アドバイスをもらいながら、全体をいい方向に持っていきたい」
――製鋼をなぜ周南に集約するのか。
三喜「まず、今の段階では製鋼工程は2つあるが、(周南、衣浦とも)もう40年以上経っている。国際競争力の中では品質面、生産性で太刀打ちできない。余力ある中、1カ所に集約することで無駄なコストをなくす。これでコスト競争力も上がる」
――2016年までにリプレースなり追加投資が必要となるのか。
三喜「16年までに一定の投資は必要となる。いい品質の製品が出せるように、歩留まりなりコスト競争力が出せるような、プラスアルファのメリット出る投資にしたい」
――(設備は)どこまで統合できるか。
三喜「かなりの可能性がある。現状、フル稼働ではない断面で見れば、(数年前、能力的に足りないケースも出ていたが)ある一定の設備投資は必要になる。それらを踏まえ、2016年度までには実現することを考えておかないとシナジー効果は出ない。ただ、16年度を待って集約するのではなく、今の段階から一番最適な生産体制をどんどんやっていく」
――要員の合理化は。
三喜「つねに新陳代謝はある。その中で吸収できるものは吸収していく。製鋼を合理化すると、瞬間的には余剰人員が出てくるわけで、その人員をどういう風にうまく活用していくか。これは今からの課題だ。ステンレスだけで吸収するのか、普通鋼でやるのか、(日新、日金工の)グループ会社含めてやるのか、いろんな方向を探しながらやっていく」
――製鋼、熱延、冷延含めて人員削減はしないのか、(削減は)否定できないということなのか。
三喜「合理化だがリストラというイメージは持っていない。当然、人的余力、人的偏在は出てくる。ライン集約していく中で、即イコール人はいらないとはならない」
義村「配置転換は付きまとうので、職場を提供していくということはやっていきたい」
――統合で国内ナンバーワンになるということだが。
三喜「まずは国内・国外で線引きすることが間違っている。毎月(全体生産量の)10%を超える輸入材が入ってきている。これを国内と考えるのか、国外と考えるのかだが、輸入材は海外と一緒。彼らに勝っていかないといけない。その意味で品質的にもコスト的にもナンバーワンを目指さないと。ボーダーレスの考え方をしている」
――国際競争力は。
三喜「1社では難しい。幸い日新はスペインのアセリノックスと40年来ともにやってきている。さらに日新が30%資本参加するマレーシアのバル・ステンレスは1期工事が終わり立ち上がった。一緒になってどう活用していくか。1社でどうするかという考えは全くない。さらに中国では寧波宝新とも事業展開している。国内は単体で勝つという考えもあるが、海外では今までの蓄積、インフラを生かし、全てのパワーをつぎ込んでいく。これが海外戦略になる」
義村「ナンバーワンを目指し一歩でも二歩でも近づきながらシナジー効果を出せば競争力のある商品が出せる。また、規模は小さいが、マレーシア、シンガポール、台湾などに子会社がある。ここの生産設備を活用し、バルの材料を供給してもらうなどのシナジー効果も期待できる」
――グループ再編の中で、日金工商事はどうなる。
義村「10月1日以降、本体の販売体制が決まってからになる」
三喜「今の段階では話はない。コンプライアンスに触れるので、原則できない。摺合せをやることで問題が出てくるので、10月1日以降に決める。グループ会社もいろいろあってメンテナンス、物流はどんどんやるが、販売に関わることは10月以降慎重に。まずは日新と日金工がどうするかという足元を固めてから」
――200系(マンガン系)は将来どうしていくのか。
三喜「現にアセリノックスもやっているし、海外中心にアライアンスの中でうまくやっていけば、日金工の技術・販売が生かせる」
義村「ニッケル価格が乱高下する中で、Dシリーズ鋼はニッケル価格の影響を比較的受けにくいのが特徴で、日新も理解している。Dシリーズに限らず、ブランド品の考え方は大事にしていく」
――共同持ち株会社にした目的は。
三喜「いろんな統合の仕方あるが、(経営統合は)内部の体制を固める、ガバナンス、労働条件など含めて摺合せに相当な時間とパワーがかかる。まず、統合シナジーを上げることをベースに考えた場合に、一番いい選択肢はこの形態と判断した」
――さらに先のステンレス再編を見据えた形態だったのか。
三喜「それは全くない。われわれは普通鋼もステンレスも表面処理もあって、その中で、お客様に提供していく。日金工は専業だが、日新は専業ではない。薄板のあらゆる商品を提供するという考え方は踏襲していく。その中に、日金工の商品群が加わり、お客様が加わり、相乗効果が発揮できる。日金工のお客様に普通鋼を売ることだってある。まずは足元でしっかりした会社を作っていくことに軸足を置いている。将来のことは何も肯定も否定もしない。含みも今はない」
――製鋼から下の生産体制はどうなる。
三喜「一番最適な生産体制にし、統合検討委員会で継続して検討する。よりベターな選択肢を選ぶ。ユーザー立地も考えながら」
――今の製鋼能力は。
三喜「日新製鋼は約66万トン、日金工は約30万トン。量が伸び悩んでいる中での話というのが統合の大前提。適正規模をどうみるかをベースに考える。両方足すと100万トンになるが、100万トンを生産しようとは考えていない」