2020年7月8日

「新・人財戦略 商社編」日鉄物産 岡山浩之常務 能力フル発揮へ 風土・仕組みづくりを

――人財戦略上のテーマから。

「中期経営計画(2018-20年度)では、経営課題である『成長戦略へのシフト』を担っていく人材の確保と育成が主要テーマとなっている。まずライン部課長等の職位別研修の充実を図り、並行して働きやすい職場、働きがいのある仕事を創造する働き方改革に取り組んでいる。17年度に設立していた『働き方改革委員会』は、残業や時間外労働の削減、休暇取得促進に当初はフォーカスしていたが、多様化する社員が能力をフルに発揮できる職場づくり、生産性向上といった第2ステップに移っている。足元は鉄鋼業、繊維産業において大きな構造変化が続き、新型コロナウイルス影響も広がる中、『デジタル』『グローバル』『サステナブル』をキーワードに多様な課題に対応できる人材の確保と育成もテーマに浮上している」

――新たな課題を意識して育成する人材のイメージは。

「事業構造変化に対応できる『経営人材』、グローバル戦略の実現や多様な人材を生かす『グローバルリーダー』、デジタルやサステナブル等の視点で解決策を導き出す『イノベーション人材』。並行して現有社員が能力を最大限に発揮するための風土や仕組みづくり、女性やシニアの活用も重要課題であり、研修・人事制度の見直し、働き方改革を急ぐ」

――業容拡大に伴い人員が増えている。

「旧・日鉄商事と旧・住金物産が経営統合した13年10月時点は単体1539人、連結7755人だった。本年4月は、単体1924人、連結7971人。単体が大幅に増加しているのは18年4月の三井物産グループの鉄鋼事業譲受に伴う200人弱の入社、19年4月の日鉄物産ビジネスサポート統合による100人強の受け入れによる」



――海外駐在員は。

「現在は183人で、単体の約1割。増えてきてはいるが、同業他社と比較すると少ない。事業会社の多寡が背景にあり、事業ポートフォリオ、人材育成の両面で課題となっている」

――採用について、女性、外国籍を積極的に採用している。

「新卒は5年間平均で総合職45人、一般職15人。直近3年間の平均で総合職のうち15人が女性で、外国籍は3人。女性比率は33%に達している」



――21年4月入社の新卒採用計画は。

「新型ウイルス影響もあって先行きは極めて不透明。通年採用も視野に入れており、一定の人数は確保するものの、4月採用は抑制する予定である」

――外国籍の社員も増えている。

「現在42人で、5年前に比べて20人増えている。国籍は中国21人、韓国13人、台湾3人、インド2人、米国2人、マレーシア1人で、日本人が持たない多様性を発揮してくれている」



――優秀で多様な人材を採用するための方策を。

「インターンシップを実施し、大学訪問については地方の国公立大学、海外の大学へとアプローチの幅を広げている。日英バイリンガルの就職イベントである『ボストンキャリアフォーラム』にも参加。複合専門商社である強みをPRし、学生が気にする配属リスク低減に配慮するなど地道な工夫を重ねてきている。採用ホームページでは、専門商社としてプロフェッショナルを育成するストーリーの動画を配信している」

――売上高が2兆円を超え、大手総合商社に次ぐ7番手に位置し、日本製鉄グループ企業というPRポイントもある。

「日本製鉄グループの中核商社として活躍できるステージの大きさはPRしている」

――インターンシップの内容は。

「メインの9月と2月の2回は『5デイズ』で、『ワンデイ』『ハーフデイ』のパターンもある。『5デイズ』では、学生が新規事業を立案し、中堅社員や管理職のサポートを受けて事業計画としてまとめ、最終日にプレゼンテーションを行う。毎回35人程度を受け入れており、一大イベントとなっている。学生の満足度は高いようで、経済誌の調査で高位にランクされたことがある」

――社会全体の新卒離職率は3年3割といわれている。

「多少の変化はあるが、過去3年の離職率は9%程度。退職の理由は、起業を目指すケース、すぐに海外に駐在したいといったことがある」

――新卒社員の育成制度は。

「入社後は1カ月半の集合研修がある。5月下旬に部署に配属し、指導員の下での実務研修に入る。10-11月に1週間程度の海外研修を実施し、モチベーションを高め、視野を広げてもらう。翌2月に1年間を振り返るフォロー研修を実施する。3年目研修では、上司からの評価や目標感などを示すことで、4年目以降の働く意欲を高めてもらっている」

――企業理念で「人を育て、人を活かし、人を大切にする企業グループを創ります」と謳っている。

「能力開発については、事業戦略実現のための人材育成、社員の自律的な学習の促進と支援、多様な働き方やワークライフバランスの実現を基本方針とし、地方・海外勤務者等への教育機会の提供も配慮している」

――育成のテーマは。

「管理職層のレベルアップ、次世代を担う中堅・若手社員の育成、デジタルトランスフォーメーション、SDGs等の経営課題に対する意識づけ、 グローバル人材の育成、多様性を生かしたイノベーションを起こす基盤作り、シニア層の戦力活用とミドル層の戦力強化、グループ力強化、経営人材育成等をテーマに掲げている。職位別研修と専門知識研修、Eラーニング等多様なプログラムを用意して、自己研鑽についても支援している」

――語学学習の支援制度は。

「語学については、Eラーニングを提供し、TOEICなどの受験対策コースを複数用意。フィリピンでの1カ月間の語学研修も実施した。入社3-10年目を対象とする『海外チャレンジ制度』は毎年5―6人を派遣している。語学研修1年、実務研修1年で、2年間しっかり学ばせる」

――海外事業会社のナショナルスタッフの育成・登用について。

「現時点で統一的、体系的な仕組みはないが、グローバル化の中で必要不可欠な課題と認識しており、海外拠点における実務研修や近隣拠点の中堅社員を対象とした集合研修、事業本部毎に主催する日本での集合研修等実施している。また、半年から2年程度の出向受入により将来の幹部育成等も実施。現在、海外グループ会社では12人の外国籍役員を登用している」

――人事制度について。

「管理職人事制度を14年7月、組合員人事制度を15年7月に制定した。統合会社として『融合』をテーマに旧両社の制度を統合したもので、その後の働き方の変化、事業環境の変化を踏まえて見直すタイミングを迎えている」

――資格・評価制度、賃金体系については。

「能力・業績評価、資格に基づいた賃金体系であるが、年功序列的な要素が強い。働き方の変化を踏まえ、いわゆるジョブ型や成果型等当社の社員の能力の最大発揮にふさわしい制度を検討していきたい」

――海外駐在、関連会社への派遣・出向についての考え方は。

「若手、中堅については、専門知識の吸収と併せて、マネジメント意識の醸成を目的に、積極的な海外派遣、出向を実施している。また、ベテラン層については、経営陣として派遣しており、海外については、概ね5年程度の駐在が平均的。鉄鋼事業本部では、薄板や自動車関連の営業部では、若いうちにコイルセンターを経験させている」

――シニアの活躍も時代の要請。

「定年は60歳で、65歳までの再雇用制度を適用している。シニア層の活躍を促すため昨年、再雇用制度を改訂した。能力に応じた体系を設けて成果主義のウエートを高め、週3日勤務制度も導入した。定年延長については、新制度の効果を見極めながら、法改正や他社の状況を踏まえ判断していく」

――日本製鉄との人事交流は。

「技術系人材は政策的に派遣してもらっている。戦略を同期化する中、原料、機材、法規、内部統制などの部署では自然体で人事交流している。日鉄エンジニアリング、日鉄物流などグループ企業との人事交流も広げていきたい」

――三井物産の鉄鋼製品事業を譲受し、総合商社のビジネスセンスも加わった。

「18年4月の事業譲受は国内商権を円滑に引き継ぐことがメインテーマだったが、輸出・海外事業におけるシナジーが広がってきている」

――新型ウイルス感染が広がる前の1月からテレワークを制度化していた。

「本年1月、ワークライフバランスを意識し、在宅勤務、サテライトオフィス、モバイルワークが利用できるテレワーク勤務制度を導入していた。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2月末から利用上限を撤廃するとともに、PCや社内システム利用の対応を順次進めてきた。3月下旬からは一部の業務を除き、在宅勤務が可能な環境を整備。緊急事態宣言中は概ね2割の出社率を実現した。3月中旬よりWeb会議の利用を本格化し、『Teams』を会議や業務連絡に活用している。会社説明会や面接にも活用し、新入社員研修もほぼ在宅で行った。新型ウイルスにつ

いてはワクチン、治療薬が確立されておらず、7月以降も約5割が在宅勤務を継続している。WEB会議も浸透しており、今後は生産性向上の観点からも活用を促進していきたい」

――本社移転を控えている。

「テレワークが浸透し、働き方の多様化ニーズと理解が広がってきた。一方で、マネジメントや評価に対する不安や問題意識も出ている。BCPの観点からオフィスのあり方も再考する必要がある。22年1月以降の日本橋への本社移転を控え、オフィスの基本コンセプトを検討中。生産性向上、働き方、BCPの観点などから、テレワークの拡大、フリーアドレスの導入を含めて、新しい時代にマッチしたオフィスを設計していきたい」

――本年3月に健康経営優良法人の認定を受けた。

「社員の能力を最大限に発揮してもらうには、家族を含めて心身ともに健康であることが大前提となる。健康経営そのものをレベルアップさせて、働きやすい環境、働きがいのある仕事の創出の実現を目指す」(谷藤 真澄)

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