2020年7月9日

「新・人財戦略 商社編」JFE商事 鬼澤徹常務 個人の活躍 今まで以上に評価

 ――人財戦略上のテーマから。

 「全社員のモチベーションアップ、多様な人材の活用、グループ連結人事施策の強化、経営人材・グローバル人材の育成、若手社員の早期育成・登用など数多くのテーマがあり、課題解決に向けて新人事制度を本年4月にスタートさせた」

 ――人事制度改定の背景と狙いを。

 「JFEグループ、またマーケットにおいて高い存在感を維持し続け、さらなる成長を実現するには、社員全員のモチベーション向上と良い意味での緊張感が必要。また働き方が多様化し、仕事に対する意識も変化しつつあり、年功序列や終身雇用といった日本型の制度によって社員が定着する時代でもなくなっている。チームで目標を達成することは重要だが、個人の活躍を今まで以上に評価して社員のモチベーションを高めていく必要もあった。若手社員を早期登用して組織を活性化するとともに、潜在能力を引き出したいとも考えた。こうした考えの下、社員全体が自身の成長をより強く意識できる制度に改定した。また、ビジネスモデルの変化に伴い業務内容が変わり、一般職の役割はより重要になっている。一般職の業務領域拡大を見据え、役割や処遇も見直した。すべての社員がモチベートされる環境整備が最大の狙いだった」

 ――制度設計で重視したポイントは。

 「メリハリがあり、納得性の高い制度となることを重視。担うべき役割、目指すべき姿が明確な『資格制度』、個人の成果を反映し、成長を後押しするメリハリのある『評価制度・賃金制度』、若手の早期戦力化、早期登用が可能な『評価制度』、一般職の役割・目標が明確になって成長を後押しする『資格制度』作りを意識した」

 ――それぞれの仕組みについて、資格制度から。

 「資格ごとの定義を見える化し、自身の役割、目指すべきステージを明確に意識できるよう心掛けた。管理職が6つの資格、総合職は3つの資格、一般職も6つの資格とし、資格ごとに求められる役割と必要な能力を改めて定義した。一般職掌には『EP職』を新たに設定し、補助業務のみならず、総合職と同様に自立的に基幹業務を担当する社員を処遇するステージも新設した」

 ――評価制度については。

 「以前の評価制度は、プロセスや能力を総合的に判断して評価するものであり、一時金は基本的に社員一律の考えで支給されてきた。そこで社員が成長する上で『何が十分で、何が不十分か』を可視化でき、成果に対してメリハリのある評価を行い、社員のモチベーションアップにつなげる制度を目指した。具体的には『成果評価』『能力評価』の2軸をベースとした総合評価に改定した。昇降格の決定は『成果評価』『能力評価』に加え、資格が求める役割と能力への合致を確認した上で行うこととした」

 ――「賃金制度」は。

 「資格ごとの役割の再定義に合わせて賃金制度を改定した。特に一般職については、役割の変化と処遇がマッチしていなかった部分を改善した。一時金については全社一律の業績連動から、相対的な個別の『成果評価』を反映させる、メリハリをつけた支給体系に見直した」

 ――賃金体系、定年については。

 「現時点では、新卒採用した社員が徐々に能力を上げ、レベルの高い業務を担っていくということを見据えた賃金体系となっている。この基本軸を持ちながら、キャリア採用など優秀人材の確保も狙い、『メンバーシップ型』と『ジョブ型』を組み合わせた柔軟な体系を考えていきたい。定年は現在60歳であるが、シニア層の活躍は、社員・会社双方にとって重要なテーマであり、最適解を求めてじっくり議論していきたい」

 ――現在の人員構成を。

 「単体は1396人で10年前と比較すると63人増加している。内訳は管理職、総合職で1056人、一般職340人。管理職、総合職に占める女性は126人と10年前の約2倍になっている」

 ――さて採用について、基本方針から。

 「バブル期直後、また日本版金融ビックバンの時期に採用を大きく抑制した結果、年齢構成がいびつになった反省を踏まえ、コンスタントな採用を心掛けている。併せてキャリア採用含め多様な人材を採用することで発想力の広がりや、知識・技能の獲得を狙っている。春・秋をメインとする通年採用を導入することで、人材獲得の機会も増やしている。

 ――採用推移は。

 「15年度以降の5年間は60人前後で推移し、本年4月は過去最多となる70人が入社した。うち総合職が55人(女性14人、外国籍3人でいずれも最多)となった。一般職は例年並みの15人だった。本年はコロナ禍等緊急事態であり、JFEグループ内での人材の活用も意識し、例年より採用を抑え、総合職30人、一般職10人を予定している」

 ――続いて人材育成について。

 「『プロフェッショナルとして、誇りと自信を持つ人材』『グローバルな視野を持ち、広く国内外で活躍できる人材』『変化にチャレンジする前向きなマインドを持った人材』『高い倫理観と愛社精神を持った人材』の四つが理念として求める人材像。育成方針は『OJTとローテーションを通じた育成』『OFF―JT(=会社研修)を通じた育成』『自己研鑽、自己啓発による成長』の大きく三つとしており、『経験』と『学習』の両面から人材育成を進めている。求める人材像と育成方針を踏まえてプログラムを組み立てており、階層別研修、法務・信用管理や事務処理等の実務研修に加え、グローバル研修、スキル研修、ダイバーシティ研修等を実施している。研修プログラムの拡充や経営人材の育成もテーマとなっている」

 ――グローバル研修等の内容を。

 「若手のうちからローテーションにより海外の業務、文化を体験し、また研修や留学によって基礎能力を高めることで、グローバルに活用できる人材を数多く育成していきたい。そのスタートとして位置付けている研修が2年間の海外トレーニー制度である。最大2年間の海外派遣を通じて語学と実務の両面のスキル向上を狙っている。その他海外留学にて経営戦略などMBA科目の基礎を学ぶ本部別選抜制研修や国内の所属に籍を置いたまま、海外の文化に触れる短期異文化体験など、グルーバル人材を育成していくために幅広く研修制度を整備している」

 ――経営人材の育成について。

 「海外中心に事業領域を拡大する上で、経営者の育成は喫緊の課題。何よりの教材は『経験』。そこで若手のグループ会社経営層への早期登用も始めている。いくつもの修羅場を経験することで、物事をジャッジする物差しを自分の中に持つことができる。この物差しは経営者としてジャッジし、方向性を定める上では必ず必要である。並行して部長以上への経営者研修、若手社員の経営基礎知識習得など、基礎力の強化もさらに充実させていきたい」

 ――関連会社の採用、人材育成は、グループ総合力を左右する。

 「会社説明会『JFE商事グループフェア』をグループ会社と共催し、グループ全体の採用力強化を図っている。JFE商事の管理職層以上の研修、新入社員研修、法務・信用管理・貿易実務・事務処理等の実務研修、新人指導員研修、ダイバーシティ研修にはグループ会社の社員も数多く参加している。海外では海外ナショナルスタッフ初級マネジメント研修を年1回実施。毎年、各社から選抜されたスタッフが東京でマネジメントの基礎を学んでおり、所属会社の管理職として、視野の広いマネジメントに生かし、組織を活性化してくれている」

 ――海外ナショナルスタッフの登用は。

 「現地法人の社長や取締役への登用は増えている。適材適所の観点から、役員や上級マネージャーへの登用を一層広げる必要があり、上級マネジメント層への研修なども企画している。さらに海外の優秀なナショナルスタッフに対し、数年間日本での業務を体験していただき、日本の文化、日本のマネジメント、日本での業務を経験することで、将来の経営TOPを担う人材への育成も進めている」

 ――新型コロナウイルス感染防止策として、働き方改革を迫られた。

 「在宅勤務によって、場所の制約を受けずにできる仕事が多くあることを確認できた。一方で、在宅勤務では難しい仕事も再認識できた。マネジメント、コミュニケーションの充実、エンゲージメントの維持、評価の手法などについても考えさせられた。現在のマネジメントは『ジョブ型』を前提にしておらず、一定の在宅勤務を継続するのであれば、各社員のミッションを上司・部下がしっかり共有し、活動のゴールを明確にする必要がある。戦う集団としての商社マインドなど、当社の良さを削ぐことがないようワークライフバランスの観点も踏まえた新たな働き方のスタイルを考えていきたい」

 ――WEB会議などICTの活用も広がった。

 「原則在宅勤務を決定し、950人の出向者を除く国内単体社員すべてにネットワーク環境を整備した。リモート会議システムによる社内外のミーティングや社内研修が一気に普及。プリンター・モニター貸与による事業継続にも取り組んだ。頻発する大規模自然災害やパンデミックを想定し、グループ全体のBCPのレベルアップを急ぐ」

 ――RPAの活用による業務効率化も進めている。

 「18年からの3年計画で、事務業務の生産性向上のためのRPA活動を全社展開しており、順調に進展している。業務改革活動である『J―SLIM』と連携し、まず業務の棚卸と見直しを行い、費用対効果だけではなく、業務フローの改善が見込める業務にRPAを導入。業務改革とRPA化をセットで推進している。目標の年間4万時間削減のメドがついたことから、グループ会社にも19年後半から展開している」

 ――最後に中長期の課題認識を。

 「働き方改革やダイバーシティにより社会全体が多様な働き方を強く意識し、働く環境が大きく変わりつつある。このタイミングに想定外のコロナ禍というパンデミックに直面し、変化のスピードは一気に加速した。しかし、われわれの目的がJFEグループの競争力最大化であることに変わりはない。JFEグループとしての最適人材配置、効果的かつ効率的な役割分担について検討を深めるとともに、その原動力となるグローバル連結ベースでの人材育成、社員がモチベーション高く仕事に臨める仕組みのブラッシュアップに継続して取り組んでいく。働き方のスタイルはデジタル化やテレワークの導入等により、より働きやすい環境を目指していきたいが、ある部分は効率的に、ただある部分は泥臭く、JFEグループの中で担う役割を全うするために、社員一丸となって目標に突き進む企業風土という軸はぶらさずに、今後の当社の働き方を考えていきたい」(谷藤 真澄)

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