2020年9月25日

「未来へ 見出す活路 鋼管メーカー・商社、難局突破へ」 エネ分野「つくる力」継続強化 技術開発・コスト競争力 両輪をフル回転

 2020年4月20日、NY市場で国際的な原油取引の指標WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の5月先物価格が前日比1バレル当たり56ドル近く下落し、マイナス37・63ドルと史上初めてマイナスを記録した。その後に持ち直したものの、産油国が大規模協調減産で合意した後に起きたマイナス価格は、産油国だけでなく世界経済に衝撃を与えた。

 世界最大の産油国となった米国(北米)の市場でオイルマーケットに関わる企業の油価損益分岐点は40―50ドルと言われる。直近の3年間、サウジアラビアとロシアがOPECプラスとして生産調整で合意し、原油価格はバレル50―60ドルで安定的に推移していたことで、油井管を製造するメーカー、取り扱う商社は利益を確保できていた。

 しかし新型コロナウイルスの感染拡大が世界に広がる中、OPECプラスの協議がサウジ―ロシアの対立で決裂しWTIは30ドルを切る水準まで下がった。その後もサウジとロシアは増産を続け、原油価格は20ドル台に。その状況で米トランプ大統領が積極的な仲介に乗り出したが、時すでに遅し。世界経済の落ち込みは全く異なる段階に入っていった。

 米中貿易摩擦による世界経済の低迷と油価下落、コロナ禍で三重苦の鋼管メーカーは、国内製造拠点を集約するとともに「つくる力」の継続強化に乗り出している。

 日本製鉄はいち早く東日本製鉄所鹿島地区のUO鋼管ラインを休止し君津地区のUOラインに集約した。また君津地区(東京)の小径シームレス鋼管工場を休止し、和歌山に生産集約を行った。まずはコスト競争力のある製造体制を整えた上で、エネルギー開発における効率化ニーズを捉える考え。オイルメジャーなどとの長期契約をより深化させ、世界の鋼管マーケットでプレゼンスを高める。

 さらに出資する仏鋼管大手のバローレックと共同で油井管用ねじ開発に注力し、拡販に乗り出す。油井管・ラインパイプにおいて最重要なのが「ねじの技術」とされており、両社はねじの技術開発でさらなる高みを目指す。

 JFEスチールは元来強みを持つ「ねじ」の分野で最高レベルの気密性を誇るねじ継手を開発し、グローバルに積極拡販。13%クロムシームレス鋼管をはじめ、耐サワー鋼などの商品と組み合わせ油井管需要を取り込んできた。オイルメジャーとの技術交流会など地道な取り組みが成果を出し始めている。

 製造面では知多製造所における油井管用中径ねじ切り加工ラインで、鋼管の両端にねじ切り加工が一度にできるようになり、生産性向上につながった。コロナ禍での需要減でも着々と「次なる投資」を行い、アフターコロナの需要回復期での飛躍を狙う。

 一方、総合商社は北米で規模の最適化を模索する。住友商事・鋼管本部は持分法を含めて海外事業会社を18社保有する。うち北米の13社を半分の規模(7社)にする計画だ。すでにチャンピオン・シンコとB&Lパイプコは統合し、カナダのSTCやアラスカのTSAは米国老舗4問屋のブランチ化を進める。ねじ切り加工業のユニークマシン(アンカレッジ)とサミットマシン(カルガリー)も売却あるいは拠点閉鎖を視野に入れる。

 本多之仁・執行役員本部長は「機能統合と機能連携を組み合わせ、さらにDXなども積極導入し資産効率を上げる」と述べ、抜本的な事業改革に乗り出している。

 北米市場で独自商品開発に注力する商社は兼松だ。シェール開発会社向けにコストを抑えた油井管用ねじ継手をこのほど共同開発し、提案営業を開始した。

 油井管用のねじ継手は通常、プレミアムジョイントといわれる高級品種と米国石油協会(API)が制定する一般規格品に大別される。兼松は北米油井管用特殊ねじ加工会社ベンワのプレミアム・ジョイントネジと汎用APIネジとの中間品となる「セミプレミアム型」をルイジアナ州ホーマのテクニカルセンターで開発。一定の品質を担保し、価格メリットを強みに、いち早く北米において市場投入し先行販売の強みを生かす。

 これまで主に石油・ガスに依存してきた世界のエネルギー構造は「脱CO2」の旗印の下、再生可能エネルギーの比率が確実に高まる。自動車をはじめとする輸送機は石油系燃料を中心としながら、水素、電気、LNG、カーボンニュートラル燃料(エタノール、バイオディーゼル)と多様化が進む。優勝劣敗の行方はベストミックスを模索しつつ、変化の潮流をいち早くつかむことができるか。国内企業はこれまで培ってきた技術開発力とコスト競争力の両輪をフル回転させ、未来への活路を見出す。

(菅原 誠)

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