2021年6月30日

新社長に聞く JFE商事 小林俊文氏 グループ成長基盤 再構築

――新社長としての抱負から。

「JFEグループの中核商社として、提案力・発信力を高め、お客様とともに持続的に成長するJFE商事であり続けたい。地政学的リスクの拡大、気候変動対応、デジタル技術の革新、新型コロナウイルス感染拡大などが重なり、経営環境は大きく変化している。成長基盤をいま一度しっかり見極めながら、商社ならではの自由度やグローバル・ネットワークを活かし、JFEグループ全体の成長に貢献していきたい」

――「第7次中期経営計画」(2021-24年度)をスタートした。

「サプライチェーンマネジメント(SCM)を拡充し、トレードと事業の両面からグループの成長基盤を再構築する。施策としては『重点分野における成長戦略の推進』『仕入れ・販売力の強化』『新たなビジネス機会への対応』の大きく3点。重点分野では、電磁鋼板、自動車用鋼材のグローバル・ネットワークを一層強化しながら、海外の建材事業も加速させる。また、国内の鉄鋼需要を徹底して捕捉していく。設備投資・事業投融資は、引き続き既存事業の機能維持・拡大および成長戦略を中心に4年間で1200億円の計画。JFEグループは過去に経験したことがない、厳しい経営環境に置かれているが、中核商社としての機能を発揮し続けるため果敢に挑戦を続け、24年度のセグメント利益の目標は過去最高の400億円とした」

――利益目標の手応えを。

「第4次中計の平均が203億円、第5次は235億円、第6次が276億円。第6次は18年度357億円、19年度270億円、20年度200億円だった。20年度はコロナ禍で上期は需要が陥没し、下期は環境が好転した。本年度は4月、5月と順調に推移しているが、逆に下期が見通せない。米国ではホットコイルがメトリックトン当たり1800ドルに跳ね上がり、現地の事業会社は好調であるが、どこまで続くかは見通せない。4年間で倍増させる高い利益目標を達成するため成長戦略をスピード感を持って推進する」

――投融資を拡大する。

「前中計の6次中期は、米中対立や新型コロナ感染拡大など厳しい環境下、3年間600億円の計画に対して473億円と目標には届かなかったが、5次中期実績の312億円は上回った。今中期は国内外で幅広く展開する加工・物流拠点における安全投資を最優先。SCM強化など成長戦略投資、市場構造変化に合わせた設備劣化更新、システム更新を行いつつ、情報セキュリティ強化、デジタルトランスフォーメーション(DX)にも積極的に対応していきたい」

――重点施策について、電磁鋼板は世界トップレベルのネットワークをさらに強化する。

「世界規模で電力需要が拡大しており、方向性電磁鋼板の安定供給が求められている。EV化の進展で無方向性電磁鋼板の需要もこれから急速に伸びる。電磁鋼板のサプライヤーは限られており、供給不足が懸念されているが、JFEスチールは無方向性電磁鋼板の生産能力増強を決定し、インドのJSWスチールとは方向性電磁鋼板の合弁事業化について検討を開始した。当社は、国内ではJFE商事電磁鋼板を中心に4拠点でスリット加工やコア製造を手掛けている。海外では仏ブルジョアや一宮電機とのアライアンスを含め、中国、ASEAN、インド、メキシコ、カナダなど10カ国で17拠点を展開。方向性・無方向性の電磁鋼板をともに扱い、世界トップレベルの加工・物流、コア製造の体制を構築している。北米ではカナダのコジェント・パワー(7月1日付でJFE商事パワー・カナダに社名変更)を買収し方向性を強化してきたが、今後は無方向性の需要も取り込んでいく。SCMのエリア拡大、加工機能深化など付加価値拡大の両面でバランスを取りながら成長戦略投資を続け、伸びる世界の高級電磁鋼板需要をJFEグループ全体で捕捉していく」

――自動車向けのSCM強化策を。

「EV化の進展、車体軽量化ニーズの高まりを背景に製品特性や環境性能で優位な高張力鋼板の採用が国内外で広がっていく。日本、中国、ASEAN、米州のグローバル4極において、グループ全体最適を図りながらSCMを拡充していく。メキシコのグアナファト州に新設したJSSBが本年3月に操業を開始した。隣接するJFEスチールとニューコアとの自動車鋼板合弁が昨年12月に稼働を再開しており、同社が製造する高張力鋼板や外板用鋼板の加工・流通機能を担っていく。まずはこのJSSBを順調に立ち上げることに注力したい」

――海外の建材事業は。

「世界の鉄鋼需要のうち、建材が約7割を占め、拡大が期待できる重要な分野であり、『建材ビジネス推進室』を立ち上げて戦略を練っている。とくに市場が大きい米国、需要が伸びるASEANをターゲットに、トレードビジネスを拡大し、現地企業との協業も図ることで事業基盤を拡充していく。米国は、鋼管メーカーのVEST、鋼管問屋のケリー・パイプがあり、JFEスチールの合弁事業CSIが鋼板を製造している。ケリーは不安定なOCTG分野から撤退し、ガス・水用配管など建設分野への取り組みを推進している。VESTはCSIから鋼板を調達し、建設用の構造用鋼管などを製造している。米国JFE商事ホールディングスが核となって、両社の事業基盤をベースにM&Aも視野に入れ、エリア・品種拡大の両面で建材事業を広げていく。ASEANは、国が分かれており、法制度も異なるので、米国とはアプローチが異なる。建設分野でも現地調達化が目立ち始めており、日系や地場ゼネコンとのビジネスを積み重ねていく中で、鉄筋加工やファブリケーターなどの現地企業といくつかの小規模な協業を広げていきたい」

――内需の捕捉について。

「国内は最も重要な市場であり、JFEスチールと戦略を同期化しつつ、極限まで販売数量を伸ばしていく。これまで当社は薄板・厚板・建材などの各品種で関係の深い多くのオーナー系と協力し販売網を構築してきた。前中期は、新潟地区の薄板加工事業の最適生産体制を目的に、藤田金屬とグループ会社の新潟スチールでアライアンスを具体化し、関西地区では、小野建グループから三協則武鋼業の一部株式を取得した。国内の鉄鋼需要が縮小する中、それぞれが得意とする分野に経営資源を集中することで、エリアにおける過剰投資を避けつつ、各社の経営基盤強化を図る。各分野・品種のグループ会社、オーナー系加工・流通企業との連携が重要になってくる。地域ごと、品種ごとに最適な企業と取り組むことで、とことんまで需要を取り込んでいく」

――「JFEグループ環境経営ビジョン2050」における役割について。

「JFEグループは2050年カーボンニュートラルに向けて、鉄鋼事業のCO2排出量削減、社会全体のCO2削減への貢献の拡大、洋上風力発電ビジネスへの取り組みなどのテーマを設定している。当社としては、バイオマス発電事業燃料となるPKS(ヤシ殻)輸入で国内2位グループのポジションにあるが、JFEエンジニアリングのバイオマス発電事業と連携するなど扱い調達量を大きく拡大していく。リサイクル関連では日本からの輸出でトップクラスのスケールを維持している鉄スクラップについてグローバル規模でビジネスを広げていきたいと考えている」

――洋上風力発電へのアプローチについて。

「JFEホールディングスがヘッドとなり、グループ全体でサプライチェーンを構築していく。JFEエンジニアリングが着床式モノパイル(基礎構造物)の製造事業に本格参入を検討。モノパイルは巨大な鋼製構造物で、溶接線が少なくなる厚板の調達が工期などの競争力を左右する。JFEスチールは、西日本製鉄所倉敷地区の第7連鋳が今月稼働し、アジア最大の大単重厚板の量産体制を整え、世界でも欧デリンジャーと並ぶ数少ないサプライヤーとなった。JMUは洋上風力発電浮体の制作や作業船の建造を手掛ける。当社は鉄鋼貿易本部内に新設した『再生可能エネルギー鋼材貿易チーム』が洋上風力発電に関連する鋼材のサプライチェーン構築を進めている。洋上風力で先行する台湾でジャケット方式の着床式基礎構造物を製造する現地企業と協業しており、厚板のSCMで実績とノウハウも積み重ねている。日本近海の洋上風力発電ビジネスにおいても鋼材・加工製品のSCMなどでJFEグループの総合力発揮に貢献していく」

――仕入れ・販売力強化策として、JFEスチール関連以外の取引拡大もテーマに掲げている。

「お客様のニーズに応えるため、JFEスチールが供給できない鋼材を国内外のメーカーから調達して納入する。一方で、原料や資機材の調達先がスチールやアライアンス先以外にも販売してほしいといった要望に応えていく。つまり、当社が提案力・発信力を高め、お客様・ビジネスパートナーとともに成長するための重要な方策を行うことで、結果的にJFEグループ・アライアンス先の製品に加え、他のサプライヤーの製品についても取り扱いが拡大していく。それがJFEグループの持続的成長につながっていく」

――社長就任会見では、鉄鋼物流のリニューアルがテーマと指摘した。

「国内はトラック・トレーラー運転手不足や待機時間などの問題が常態化している。内航船が減り、フレートも上昇傾向にある。課題は見えているが、解決策がまだ見つかっていない。物流ではビール業界の協業が進展している。重量物を効率的で安全に運ぶには、港湾の置き場渡しなど、鉄鋼業全体で仕組みを変えていく発想が必要となっている」(谷藤 真澄)

【プロフィル】 小林俊文(こばやし・としのり)氏=1980年京大法卒、川崎製鉄(現JFEスチール)入社。05年JFEスチール名古屋支社名古屋自動車鋼材営業部長、07年本社自動車鋼材営業部長、11年常務執行役員、14年専務執行役員、16年代表取締役副社長。21年4月から現職で、コロナ禍が続く中、各部署とのオンライン懇親会を重ねているが、社員の快活さ、ダイバーシティの進展に目を見張っている。座右の銘は「日々新又日新」。趣味は読書、温泉巡りや車の運転で、旅先では焚火の炎、川のせせらぎや海の景色など自然に親しむ。家族は妻と一男一女。57年12月19日生まれ、兵庫県出身。

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