2021年7月16日

総合商社/金属トップに聞く/丸紅・金属本部長 桑田成一氏/鉄鉱石・銅が業績けん引/商品割組織に変革 脱炭素へ新事業展開

丸紅の金属本部は鉄鉱石、銅をはじめ業績が好調だ。将来の脱炭素の変革に向けた対応を鉄鋼原料、非鉄それぞれで進める。新たな技術やリサイクルを含めて事業化を探るという桑田成一本部長に方針を聞いた。

――2020年度の総括を。

「コロナウイルスの影響を懸念していたが、値上がりした鉄鉱石と銅がけん引役になり計画を上回った。アルミも堅調だった。伊藤忠丸紅鉄鋼(MISI)も底力を発揮した。原料炭は中国の豪州炭に対する輸入規制があり苦戦した」

――21年度は。

「けん引役は変わっていない。足元は鉄鉱石、銅などが当初想定より高値で推移している」

――想定以上の要因は。

「昨年下半期から脱炭素に関して世の中の流れが加速した。根本的に需給に対する考え方を変えなければいけない。EVは銅の使用量がガソリン車の4倍だ。火力発電所に比べて太陽光でメガワット当たりで倍、陸上風力で2・5倍、洋上風力だと7・5倍だ。銅の世界の使用量が年間2500万トンレベルだがEVと再生可能エネルギーへのシフトで30年までに年間で500万トン近く増える。長い目で織り込まれていた需要増加が前倒しになり、供給が追い付いていない。洋上風力は送電線の距離が長いので銅と一緒にアルミも使用量が増える。最近でヨーロッパに日本で普及しているアルミボトル缶がペットボトルの代替品として販売できた。まだトライアルだが、脱プラの動きだ。包装材のアルミ需要が伸びる。鉄もインフラ需要に加えて太陽光発電所の建設には架台に鉄が必要になる。風力発電所も鉄が必要になる。水素社会になるとプラントもパイプも運ぶ船も鉄が必要。マテリアルとしての需要の増加がこの半年から1年で前倒しになったと実感している。脱炭素には我々も取り組む。金属関係のリサイクルもしっかりやっていく」

――ロイヒル鉄鉱山の再拡張はないか。

「今のところは。ボトルネックは港だ。大規模な投資が必要となる。鉄道は貨車を増やせば(年)6000万トン以上の輸送は可能だ。当面6000万トン体制を続ける」

――センチネラ銅鉱山の拡張は。

「22年央までに意思決定して拡張を進める計画だ。意思決定に向けエンジニアリングを進めて最後の調達を含めた仕上げを今年の後半に行う」

――ロスぺランブレス銅山は。

「生産も出荷も計画通り進んでいる。海水の淡水化のプロジェクトを進めているが、コロナの影響で2、3カ月遅れ気味になるところがあったが何とか追い付いている」

――チリのロイヤルティー引き上げ問題はプロジェクトに影響する。

「勘案せざるを得ない。下院を通過した時点の内容が過激だったが、上院では冷静な議論がされていると聞いている。本当に実効税率が8割になる法案が可決されるようならどこの鉱山も再投資ができない。チリの銅の鉱山業が終わる。それは理解された模様だが若干の増税は避けられないだろう」

――アルミ製錬の加アロエッテ増設計画は。

「今のマーケット環境と増設コストと天秤にかけると難しいところだ。一方でグリーンアルミにプレミアムが付くようになるという話が出てきている。ケベック州は水力、再生可能エネルギーなのでその部分で差別化を期待している」

――水力が有利になれば豪州など火力電源のアルミは苦しくなる。

「その可能性は出てくる。オーストラリアは国として電源を石炭火力から再生可能エネルギーにシフトしようと計画している。一時その影響で大型の火力発電所の閉鎖が決まると(電力)スポット価格が高騰した。アルミの製錬所を運営する安定電源としては風力と太陽光だけでは問題があるが、国として解決されれば可能性はあるかもしれない。豪州は一大水素産出国を目指している。日本も注目しているが植林による二酸化炭素(CO2)のオフセット拠点としての潜在性、CCS(炭素の回収・貯留)の潜在性もある。オーストラリアは色々な意味で方法は違うがグリーンなアルミの産出国になり得る要素はいくつか持っている」

――50年のCO2排出ゼロの中で原料炭は。

「持っている権益は鉱量が50年くらいまでだ」

――還元材が全部水素になるわけではない。

「水素による直接還元は可能だと思うが高炉は水素が一定量以上になると温度が下がるので限界がある。水素を増やしたりカーボンのリサイクルとか色々検討してもPCI(微粉炭吹き込み)を含めた原料炭は一定以上減らせない。鉄の供給を減らすと相当障害が出てくる。鉄を一番効率的に低コストに作ろうとすると高炉だ。原料炭が50年以降なくせるか疑問だ。豪州も1級の原料炭はソースは限られる」

――脱炭素は新しい事業にもつながる。

「今年組織を変えた。鉄鉱石部と鉄鋼原料部の商品割にした。それぞれの商品で新しい商売を含めた課題、対策がだいぶ異なってきている。将来的には還元材としての水素は高炉メーカー向けに海外から輸入したものを納める局面が出てくる。それは鉄鋼原料部隊が扱うべきだ。銅鉱山部隊もチリで水素の話が出ている。グリーン水素の潜在性は世界有数と言われる。銅鉱山の部隊はチリに10人近く駐在員を置いているのでフォローさせている。チリ(銅鉱山事業)は22年以降は電力契約が全て再エネに変わる。ロイヒルもチリも自動化を進めているのに加えて重機の動力の電化もある。西豪州は電力も火力から再エネにシフトが進んでいるのでスコープ1、2の排出を極力ゼロに向けて加速させる。チャージ・オン・イノベーション・チャレンジというのが鉱山業の電化だ。メインはBHPとかリオティントとかヴァーレが主体となり進めているが、我々も参加する。今はディーゼルで動かしているが全部電化する。電源はオーストラリアは基本的には再エネに変わっていく。アルミはアルミニウム・スチュアードシップ・イニシアチブに丸紅として加盟して責任あるアルミを供給する。銅はカッパー・マークという団体ができセンチネラ、アントコヤ、ロスぺランブレスがクリーンな銅の認証を取る。EVバッテリーのリサイクルとリユースは北米と日本を中心にやっているがEVが増えると廃バッテリーの問題は大きな社会課題になる。バッテリー材料に戻して再利用できる部分とバッテリーそのものを再利用する両方を狙っている」

――リサイクルの今後の姿をどう描くか。

「鉄スクラップは丸紅テツゲンで、銅・アルミスクラップは丸紅メタルで以前から取り組んでいる。冷鉄源は製鉄の環境対策の観点での材料の調達と供給が大きな課題になってくる中で一役買いたい。バッテリーは国内で検討しているのはリユースだ。アメリカでも廃電池回収業者及び化学メーカーとの協業でバッテリー材料に戻す加工をしてから販売しようと検討している」

――22年量産予定と。

「サンプルテストを進めている」

――還元鉄事業は。

「良質の鉄鉱石と天然ガスの安い場所がいい。最初は天然ガスで始めて水素に置き換わる潜在性も踏まえると西豪州が一つの拠点になり得るだろう。ペレット加工プラントが必要になる。ある程度の選鉱も必要になる」

――鉄スクラップの取り組みは。

「課題として認識している一方で悩んでいる。調達が厳しくなって量が必要になっている。中国がスクラップの輸入も解禁して日本にとどめる調達すら難しくなっている。高級鋼が電炉からどこまでできるかというところで(取り除くのが難しい)トランプエレメントの除去はかなりハードルが高い。製鉄の方向性も脱炭素として電炉、あるいは還元材の変更、CCUS(炭素の回収・利用・貯留)、海外を含めてオフセットかどの方向に進むか分からない。CCUS含めオフセットが進んでしまうと今まで通りでよくなってしまう怖さがある」

――MISIが20周年を迎える。

「期待をはるかに超えるパフォーマンスを発揮してくれた。特に底力を感じているのがここ1年。油価や北米のリグカウントの低迷で鋼管が苦戦しているが、それ以外は伸びてきている。レパートリーの組み合わせが好不調の波をうまく乗り切っている。この先をどうしていくか大きな課題だ。このままでできることは限られてくるので業界で何らかの再編の動きのなかで取るべき選択肢を取っていく。株主としての連携という点では太陽光の発電とか水素とか鋼材の需要が出ている。太陽光の中東のメガソーラーの架台はMISIも商談に加わっている。水素が本格化してくるとパイプも必要になってくる。情報を共有化して鋼材の部分でMISIを引き立てていく」

――収益力もまだ期待がある。

「全部の札が揃う環境が来ると思う。油井管、パイプラインを含めていずれ水素の需要が出てくる。自動車もEVになっても車体は必要だ。ポートフォリオは間違っていない。それぞれ強化していくといずれ揃ったときに相当なレベルになる」

――DXの展開は。

「2つある。一つ目鉱山の自動化・遠隔操業だ。ロイヒルもチリも進めている。コロナで必要性を認識し直した。二つ目はトレード分野。マーケットの需要とか事業だけでなくトレードをやってマーケットの中にいるから色々なことが肌感覚で分かる。ブロックチェーンが進んで商社が排除されないように豪州でコムチェーンをやっているが、しっかりやっていかないと乗り遅れる」(正清 俊夫、松尾 聡子)

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