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2024.12.4
2021年9月8日
鉄鋼業界で働く/女性責任者編 インタビュー/長期的視点で問題解決
鉄鋼業界で活躍する女性が少しずつ増えている。関西地区の独立系コイルセンター、大裕鋼業(本社=堺市堺区、井上浩行社長)が所有するダイユー・スチール・ベトナム(以下DYV、ビンズオン省)では今年1月から、本社営業部に在籍していた井上優子さんが責任者に就任した。優子さんの渡越に影響を受け、ベトナムに留学経験のある日本人の友人も現地で働き始めるなど、すでにさまざまな反響があるという。渡越し半年が経った今、これまでの苦労や、海外で働くこと、今後の目標について聞いた。
――渡越して半年以上経ちましたが、現在の心境は。
「昨年のクリスマスにベトナムに渡り、2週間の隔離を終えた正月明けごろから出社を始めました。無力と感じることも多くまだまだといった心境ですが、毎日ベトナム語の書類に目を通したり話したりすることには慣れてきて、最初できなかったことが少しずつできるようになっています。社内のみんなから信頼を得られるよう、勉強することばかりです」
――現在の仕事内容は。
「DYVの責任者として、書類のチェックなどを行うのはもちろん、私自身も営業を担当しており、配電盤を取り扱うユーザーなどを担当しています。営業の経験を積むために、クレームなどがあった場合は他の社員の同行もしますね。工場と連絡を取りながら、製品を自分の目で見たり、改善点を考えたり、債権回収について担当者と会議をしたり…と、日々あっという間です。人事も担当しているのですが、ベトナムではスマートフォンで求人情報を探す人が多いため、SNSで求人情報を発信。これまでに25―30人の面接を行いました」
――大変なことは。
「会社の課題として、組織を構築していくことや品質を高めることなどを考えながら、現在の状況にあった生産販売体制を整えないといけない状況にあり、大変ですね。またDYVではみんな温かく迎え入れてくれているのですが、若くて経験がない私がマネージャーという責任ある立場に就いているので、どう思われているか時折不安に感じていました。でも、社会経験を長く積んだベトナム人の女性マネージャーから私の仕事の姿勢について『あなたから学ぶことも沢山あるよ』と言っていただけたことが心強く、モチベーションにつながっています」
――良かったことは。
「製品の品質の基準の違いはもちろん、考え方や一つの問題に関する解釈が異なります。だからこそ、日本人目線、日本人としての価値観が会社の中に加わることで、問題の解決方法の幅が広がっているのではと思います」
――日本との文化の違いは。
「日本人は協調性のような文化があると思うのですが、ベトナムにはそれがないという前提で考えるようにしています。自分の仕事は自分の仕事、と言った感じの人もいますし、DYVははっきり意見を言うメンバーが多く、けんかなども多いです。でも意見を言ってもらえるのはありがたいことだと感じていますね。また、日本とは違って製品の料金をインボイスで支払っていただくことが多いため、支払いが遅延することも多々あります。ローカルを対象に売るという社長の方針がある以上、遅れてでも回収し、与信枠を超えないように気を付けています。遅れることを許容しているわけではありませんが、リスク回避に努めていますね」
――現在(ホーチミン市でロックダウン中)のベトナムの状況は。
「営業職1人と工場内の社員5人が泊まり込みで業務を行い、その他の社員は在宅勤務をしています。泊まり込みをしないと操業ができないほど、ロックダウンの指令が厳しいものとなっています。できることなら私も泊まり込みで業務に関わりたいのですが、現在の住居が会社と別の地域にあり、越境になるため行くことができない状態にあります。今回のロックダウン開始時は週に2回、行政から配布されたチケットを持ってスーパーマーケットに買い物に行くことができましたが、今はそれもできなくなりました。散歩も禁止され、デリバリーもありません。別の会社では、300人が泊まり込みをしていて250人が感染してしまったという例も聞いており、厳しい状況です」
――今後の目標は。
「目の前の目標は、今は人事面での仕事が落ち着いてきたので、営業を頑張って勉強したいです。また管理面でも、ただ問題を解決するだけでなく、長期的な人材雇用、生産・販売数量を増やすための計画を立てていきたいと思っています。仕事は人生の大半を占めるので、できるだけ楽しく働き人と関わりたいと思っています。女性に鉄を売ることもしてみたいなと思っていますね。長期的な目標としては、若くて経験のない自分が苦労したこと、今後苦労するであろうこと、社内外の人と接していて感じたことから学びを得て、いつか自分が年を重ねた時に、未来を担う若者が将来への希望を持って、一緒に仕事をしてくれるような存在になりたいです」
(芦田 彩)
鉄鋼業界で活躍する人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。
――渡越して半年以上経ちましたが、現在の心境は。
「昨年のクリスマスにベトナムに渡り、2週間の隔離を終えた正月明けごろから出社を始めました。無力と感じることも多くまだまだといった心境ですが、毎日ベトナム語の書類に目を通したり話したりすることには慣れてきて、最初できなかったことが少しずつできるようになっています。社内のみんなから信頼を得られるよう、勉強することばかりです」
――現在の仕事内容は。
「DYVの責任者として、書類のチェックなどを行うのはもちろん、私自身も営業を担当しており、配電盤を取り扱うユーザーなどを担当しています。営業の経験を積むために、クレームなどがあった場合は他の社員の同行もしますね。工場と連絡を取りながら、製品を自分の目で見たり、改善点を考えたり、債権回収について担当者と会議をしたり…と、日々あっという間です。人事も担当しているのですが、ベトナムではスマートフォンで求人情報を探す人が多いため、SNSで求人情報を発信。これまでに25―30人の面接を行いました」
――大変なことは。
「会社の課題として、組織を構築していくことや品質を高めることなどを考えながら、現在の状況にあった生産販売体制を整えないといけない状況にあり、大変ですね。またDYVではみんな温かく迎え入れてくれているのですが、若くて経験がない私がマネージャーという責任ある立場に就いているので、どう思われているか時折不安に感じていました。でも、社会経験を長く積んだベトナム人の女性マネージャーから私の仕事の姿勢について『あなたから学ぶことも沢山あるよ』と言っていただけたことが心強く、モチベーションにつながっています」
――良かったことは。
「製品の品質の基準の違いはもちろん、考え方や一つの問題に関する解釈が異なります。だからこそ、日本人目線、日本人としての価値観が会社の中に加わることで、問題の解決方法の幅が広がっているのではと思います」
――日本との文化の違いは。
「日本人は協調性のような文化があると思うのですが、ベトナムにはそれがないという前提で考えるようにしています。自分の仕事は自分の仕事、と言った感じの人もいますし、DYVははっきり意見を言うメンバーが多く、けんかなども多いです。でも意見を言ってもらえるのはありがたいことだと感じていますね。また、日本とは違って製品の料金をインボイスで支払っていただくことが多いため、支払いが遅延することも多々あります。ローカルを対象に売るという社長の方針がある以上、遅れてでも回収し、与信枠を超えないように気を付けています。遅れることを許容しているわけではありませんが、リスク回避に努めていますね」
――現在(ホーチミン市でロックダウン中)のベトナムの状況は。
「営業職1人と工場内の社員5人が泊まり込みで業務を行い、その他の社員は在宅勤務をしています。泊まり込みをしないと操業ができないほど、ロックダウンの指令が厳しいものとなっています。できることなら私も泊まり込みで業務に関わりたいのですが、現在の住居が会社と別の地域にあり、越境になるため行くことができない状態にあります。今回のロックダウン開始時は週に2回、行政から配布されたチケットを持ってスーパーマーケットに買い物に行くことができましたが、今はそれもできなくなりました。散歩も禁止され、デリバリーもありません。別の会社では、300人が泊まり込みをしていて250人が感染してしまったという例も聞いており、厳しい状況です」
――今後の目標は。
「目の前の目標は、今は人事面での仕事が落ち着いてきたので、営業を頑張って勉強したいです。また管理面でも、ただ問題を解決するだけでなく、長期的な人材雇用、生産・販売数量を増やすための計画を立てていきたいと思っています。仕事は人生の大半を占めるので、できるだけ楽しく働き人と関わりたいと思っています。女性に鉄を売ることもしてみたいなと思っていますね。長期的な目標としては、若くて経験のない自分が苦労したこと、今後苦労するであろうこと、社内外の人と接していて感じたことから学びを得て、いつか自分が年を重ねた時に、未来を担う若者が将来への希望を持って、一緒に仕事をしてくれるような存在になりたいです」
(芦田 彩)
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