2022年4月22日

新副社長に聞く UACJ 川島輝夫氏 EBITDA700億円超へ



資源高や地域紛争など先行きへの不透明感に包まれるなか始まった新年度。UACJが稼ぐ力の向上などを掲げた構造改革は最終年度を迎え、今後の成長への基盤を整えつつある。4月から新たに就任した川島輝夫副社長に22年度の経営課題などを聞いた。

――副社長就任にあたっての意気込みを。

「引き続き、財務全般を担当する。経営戦略やコーポレートコミュニケーション関連にも携わる。これまで財務本部長やボードメンバーとして経営に参加してきた。過去にはARCO(現TAA)の買収やUACJ設立の準備委員会、統合後の海外事業戦略なども担当した。米シカゴに16年から3年間駐在した。これらの経験を生かし企業価値創造に貢献したい」

「資源高や地域紛争など不透明な要因はあるものの、課題はこれまでと大きく変わらない。19年に発表した構造改革は最終年度を迎えた。210億円の改善を進めており、おおむね計画通りに進捗している。構造改革を完遂し、同時に2年目を迎える23年度までの中期経営計画と30年までの長期経営ビジョンにも注力する」

――21年度を振り返って。

「総じて良い1年となった。第3四半期で発表した通り、北米やタイ事業がけん引し、期首計画と比べて上方修正となった。グリーンフィールド投資でタイに工場を設立することに当初は厳しい声もあったが、21年は32万トンの生産・販売を実現。現地のタイ人オペレーターが習熟し、機械を使いこなせるようになったことが寄与した。需要分野では米国の缶材ビジネスが想定より拡大していることが追い風となった」

「21年度は過去最高の経常利益を記録するだろう。統合前は400億円に達することはなかった。アルミ地金価格高騰による棚卸資産影響額が大きい。事業環境は缶材を中心に需要面でプラスに働いた。一方で添加金属やエネルギー価格の高騰などコスト上昇による厳しい面もあった」

――添加金属のフォーミュラ制の導入。

「フォーミュラ制により、価格の高騰や下落を反映できる。タイムラグはあるが損益管理やキャッシュフロー管理の見える化にもつながる。経営管理の安定性から取り組んでいく。米国では顧客とのフォーミュラ化がおおむね浸透している。日本やタイでも同様に根付くよう顧客との話し合いを続けていく」

――財務基盤強化の施策とは。

「資金創出力強化のため、EBITDAを意識する。足元では600億円半ばだが、今後700億円超を目指す。一方で投資は200億―300億円を予定している。金融費用・税金・株主還元なども必要となるが、相当なキャッシュフローが確保できるだろう」

「足元は資源価格高騰により運転資金が増加しているが、利益や投資キャッシュフローなど長期資金創出を確保できている。財務基盤を強くしながら成長投資も実施し、企業価値創造を実現していく」

「日本、米国、タイに熱間圧延能力を持っていることが強みだ。下工程への投資で、今後の需要増にも対応する。中計では、23年度末にD/Eレシオ1・2倍以下を目指しており、30年には0・6―0・7倍にしたい。この調子で進捗すれば達成できるだろう」

――22年度の財務目標とは。

「中計の目標値の線上を目指す。地金価格の変動など日々状況は変化している。棚卸資産影響はコントロールできない部分もあるが、できる限り管理する」

――棚卸資産影響への対応。

「棚卸資産影響はLME価格に応じて変わる。シミュレーションをして、影響を毎月把握している。フォーキャストの精度をさらに上げ、より正確に管理していく。地金価格に加工賃を乗せる価格体系は悪くないと考えている。素材産業はコスト構造で原材料部分が大きい。原料価格の変動に合わせて、売値価格を変えることは損益管理をする上で重要だ」

――投資に関して。

「維持更新や安全投資、需要動向に合わせて増強投資を考えていく。さらに今後はCO2排出削減など環境がキーワードだ。国内ではリサイクル関係の投資を進めていく」

――新事業の開拓。

「企業理念の通り、これまで築いたアルミ関連の技術力を新分野に生かす。異業種との協業も模索していく。30年までに事業部や一部の製品を構成するなど目に見える形にしたい。当社は100年以上アルミに携わっている。新たな需要を開拓し、新分野を形にしていく」(増岡 武秀)



▽川島輝夫(かわしま・てるお)氏=82年明大政経卒、住友軽金属工業入社。13年UACJ執行役員、16年UACJノースアメリカCEO、20年常務執行役員財務本部長、22年4月から現職。趣味は街歩き。近代日本の歴史や文学への造詣も深い。「道は一つではない」を信条に、新たな視点で解決策を導く。1959年12月21日、神奈川県生まれ。

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