2022年8月3日

日本の特殊鋼/世界に誇る技術の粋/(15)/明日を創る期待製品/日本高周波鋼業/独自鋼種たゆまぬ改良

日本高周波鋼業は、「小ロット・多品種・高機能が製品開発のポリシー」(小野寺謙司取締役常務執行役員営業本部長)で、規格鋼種にとどまらず、耐熱性や耐食性、靭性や加工性などに優れた特性を有する独自製品を生み出し、需要家に提供している。メイン製品である工具鋼をはじめ、ステンレス鋼、高合金鋼、独自成分によるオリジナル鋼など幅広いラインアップを誇る。

富山製造所(富山県射水市)では製鋼、鍛造、分塊圧延などの上工程から、伸線、熱処理を含めた二次加工までを一貫して手掛けるとともに、製造所長の下に商品開発部門を設置している。「ものづくり」のノウハウを駆使しながら、マーケットニーズにマッチした製品の開発・チューニングを実現。本社営業本部やグループ会社のカムス(本社=群馬県太田市)と連携して情報を共有するなど、需要家への技術サービスを強化している。

【ホットスタンプ金型用鋼】

ピラー(窓柱)やルーフ(屋根)など自動車ボディーの骨格に使うホットスタンプ(プレス成形と同時に焼き入れを施す塑形加工法)用金型鋼として、熱間工具鋼SKD61の改良鋼を開発し、国内のティア1メーカーを主体に採用されている。

ホットスタンプは鋼板を高温に加熱して軟質化させた状態でプレス成形と同時に、金型との接触冷却で焼き入れを行い、高い引張強さと部品の高寸法精度を実現するもの。ホットスタンプで使う金型の熱伝導率が上がれば鋼板の冷却速度が速くなり、成形速度がアップするほか、より効率的に焼き入れすることが可能。また硬度が高く、耐摩耗性に優れた鋼材を用いた金型は長寿命化が期待できる。

需要家のニーズを受けて、熱伝導率に優れ耐摩耗性の高い金型用鋼「KDAHP1」を開発し、2015年に市場投入した。「SKD61」をベースに合金元素を調整したもので、「KDAHP1」は「SKD61」と比較して熱伝導率は約1・3倍、耐摩耗性は約1・5倍と性能が向上。ドリル加工性やフライス加工性など被削性をキープしながら、高温下で酸化皮膜が形成され、自己潤滑性を持つため、金型の耐摩耗性がアップ。また、PVD(物理蒸着法)コーティングとの相性も良く、表面処理皮膜が剥離しにくく、金型の長寿命化が一層向上する。

他社に先駆けて、ホットスタンプ金型用鋼の市場投入、バリエーションの拡充に取り組んできた。「KDAHP1」は国内ティア1メーカーをはじめ中国の自動車部品メーカーで採用されており、販売量は7年間累計で1000トン前後。中国向けを主体に輸出を強化するなど、新規開拓を推進している。現在、需要家へのサンプル出荷件数を増やしており、アピールを強化して採用に結び付けていく。

【高炭素マルテンサイト系ステンレス鋼】

00年に高炭素クロム鋼「SUJ2」をはじめとする軸受鋼の営業権を神戸製鋼所に譲渡。「SUJ2」で培った技術・ノウハウを活用し、軸受用ステンレス鋼の開発・ブラッシュアップに力を注いできた。その結果、高炭素マルテンサイト系ステンレス鋼「SMX」シリーズをラインアップ。介在物を高いレベルでコントロールした清浄度の高いステンレス鋼として軸受けをはじめ自動車部品や半導体製造装置などの各分野で採用が漸増している。

特にステンレス製ミニチュアベアリング材として日本高周波鋼業は国内トップシェアを誇り、ハードディスク部品や医療、食品関連の加工機械など、耐食性が求められる広汎・多岐にわたる分野で使われている。

「SMX」シリーズは、「SUS440C」の改良鋼であり、焼き入れ・焼き戻し性能や耐摩耗性、耐食性や耐疲労性など、さまざまな特性を有した鋼種をそろえた。形状は磨棒鋼がメインで線材でも出荷する。国内向けが約4割、輸出は約6割。

ミニチュアベアリング向けだけでなく直動ベアリング向けでも採用が促進。今後は半導体製造装置など腐食環境下で使用される機械向けなどで販路拡大を計画している。ベアリング用途で年間5000トン前後を出荷しており、新規分野の開拓で同1000トンの上積みを目指す。欧州などへの輸出拡大も課題だ。

「SMX」シリーズにおいて、耐食性の最上位クラス「SMX314」については一部の需要家がサンプルを評価しているという。

【DR会議を通じて、製品開発をPDCA】

製品開発はDR(デザインレビュー)会議を定期的に開催、開発の進捗状況を踏まえDR0―5までの6段階評価を設定し、PDCAを回している。DR5の評価を得た市場投入が近い製品については戦略商品玉出し会議で審議し、基準をクリアすれば最終的に商品化される。開発では神戸製鋼所の技術開発本部の協力を得ている。

カムスは金型用鋼を在庫して切断や切削、熱処理や表面処理などの各種加工を施し、グループ一貫でのサービス体制を構築。23年4月には金型などの製造販売を担う高周波精密(本社=千葉県市川市)をカムスに統合する。統合シナジーで加工レベル向上が実現するとみられており、新製品開発にも好影響を与えると期待されている。

(濱坂 浩司)

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