2022年9月22日

営業戦略を聞く JFEスチール 門田純副社長 販価改善3つの具体策 構造改革・グリーン鋼材検討本格化

――鉄鋼市場は不確実性が増している。

「地政学的リスクや為替の円安など懸念材料はあるが、国内外とも新型コロナ禍の影響から回復傾向を維持し、需要は持ち直していくという見方に変更はない。国内自動車は、部品の供給制約が緩和されつつあり、下期に向け生産は回復していく見通し。KD部品の生産も海外の自動車生産の回復により堅調だ。造船は受注量が増え、造船各社は2―3年の受注残を確保している。人手不足の影響は受けるが、造船用厚板の需要は年270万トン程度を想定し、向こう2―3年ほどは安定した需要が見込める」

「建築は首都圏再開発や物流倉庫、半導体関連工場など堅調で今年度の鉄骨需要は465万トンと前年並みの予想。土木は資機材高騰による設計見直しで遅れるケースもあるが案件は維持されており、下期後半には復調することを期待したい。建機は上期に部品供給の制約を受けたこともあり、メーカー各社は下期に上期比20%程度増という過去最高水準となる計画。EVで使用される資源開発向けの販売が好調と聞いている。産業機械は半導体やEV、再生エネ関連の設備が堅調だ」

――海外市場は好悪の材料が混在する。

「ロシア産の石油やガスの代替として北米や中東中心に開発が進み、高クロム系シームレス鋼管の引き合いが増えている。自動車も堅調な需要を背景に回復が継続している。一方で熱延黒皮やスラブは価格が底を打ったものの安定していない。中国の経済減速やインドの季節要因などによる両国の輸出シフトも影響しているとみている。ただ、中国の自動車生産やインフラ投資は堅調であり、10月の党大会に向けて経済対策による回復が期待され、粗鋼生産を前年以下に抑える方針でもあり、インドは雨季が明けて需要期に向かい、需給は締まる方向だ」

――下期の単独粗鋼生産は上期と同レベルの予想だが。

「上期の粗鋼1300万トン弱は自動車減産の長期化と海外市況の下落が影響し、当初の計画より下振れした。下期は需要が増える想定だが9月に東日本製鉄所千葉地区の高炉改修に入り、上方弾力性が限られる。上期に先造りしているため、鋼材出荷は下期に伸びるが、粗鋼は上期並みの見通しだ」

――下期の鋼材販売価格をどう考えるか。

「鉄鉱石や原料炭の価格は、鋼材需要の回復や供給地の季節的要因により下期に向けて上昇する可能性がある。金属やエネルギーの価格、物流費他が上昇し、円安も加わりコスト負担が増えている。これらは歴史的に見ても高水準で推移している。持続可能な収益を確保するためのスプレッドに到達させ、これをいかに維持するかが最大の課題だ。22年度業績予想は棚卸資産評価差など除く実力ベースの連結事業利益で280億円、鋼材トン当たり1200円程度と現行中期計画で掲げた1万円とまだ乖離がある。構造改革によってコスト削減を進めること、高付加価値品の比率を20年度の40%から24年度に50%へと高めることが重要だ。高付加価値比率は21年度実績で45%とオンラインであり、こういった自助努力とともに販売価格の改善に取り組む」

――具体策は。

「販価改善には3点あり、1つは変動する原料価格を速やかに反映していくこと。原料価格をフォーミュラで参照しながら鋼材価格を決定するお客様で、参照する原料価格の期間と販売価格の期間にタイムラグがある場合にはルールを見直し、タイムラグを短くしている。建築や海外のエネルギーなど長期に渡るプロジェクト案件についても、ある程度契約期間を区切り、最新の原料価格を参照できる仕組みを提案・導入するなど双方のリスクヘッジを図っている」

「2つめは諸物価の上昇を適切に販売価格に反映すること。諸物価高騰に対するお客様の理解は深まってきたが、道半ばでもあり、継続して取り組む。諸物価については一部合金などでスキーム化を実施しているものと、現状はスキーム化ができていないものや、そぐわないものもある。急騰している電力、ガスなどエネルギーコストを含め適切に反映できるよう交渉を続けていく。3つめはエキストラの見直しだ。小ロットや板厚など製造に関わるコストや当社が考える製品の付加価値とエキストラが見合っているか、昨年度来確認・見直しを実行している。例えば厚板での板厚エキストラや建材関連で物流エキストラを設定するなど、取り組みを加速している」

――製造体制の構造改革が動き出した。

「いよいよ構造改革が本格化する。千葉地区で缶用鋼板を製造する第1冷延工場を8月に休止し、西日本製鉄所福山地区に集約した。さらに千葉地区では9月末から第6高炉を改修し、東日本を中心とした薄板やステンレスの製造拠点として整備する。その上で23年度上期末には東日本製鉄所京浜地区の製銑・製鋼及び熱延工場を休止する。製品の製造地区変更や生産を中止する製品もあり、振り替え・承認作業を進めている。お客様への影響をミニマイズし、パフォーマンスが落ちないよう製販一体で取り組んでいる」

――カーボンニュートラルに向けて電炉の活用を本格化する。

「30年度にCO2排出を13年度比で30%以上削減する目標を掲げている。諸施策の一つとして仙台製造所の電気炉を増強し、倉敷地区の高炉で製造している特殊鋼棒鋼の一部を製造する。鉄スクラップ内の銅などトランプエレメントの影響を軽減し、高炉品と同等の製品を製造できるよう開発を進める。30年度に30%のCО2削減を実現すると、マスバランス方式では500万トン程度のグリーン鋼材の供給が可能となる。グリーン鋼材戦略検討チームを立ち上げており、グリーン鋼材の定義付けや認証取得方法、さらには不可欠となる価値に見合ったグリーン鋼材市場の形成に向けて検討を深めていく」

――今後の輸出の動向は。

「千葉地区の高炉改修以降は、海外市況や為替影響がどのようであっても、23年度下期以降の構造改革後の体制を見据えた販売活動が重要となる。量から質への転換を図り、輸出中心に汎用品の比率を下げていく。構造改革後は海外の事業会社や日系需要家、提携先の鉄鋼企業向けが大半となる」

――軽量化に資するハイテン鋼や電磁鋼板のニーズが高まる。

「海外の事業会社含めてニーズに応えていく。海外の自動車用亜鉛めっき鋼板製造拠点は中国のGJSSが昨年にCAL(連続焼鈍設備)をCGL兼用のGALに変えて増強し、めっきの能力を引き上げた。上海ロックダウンなどの影響も受けたが、すでに自動車販売は回復し、フル操業である。タイのJSGTやインドネシアのJSGIもフル操業を継続している。今後もハイテン比率を高めていきたい。北米では、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)により、原産地適合材へのニーズが高まっている。自動車用鋼板製造のNJSMへの期待は高く、順次承認を取得して徐々に生産を増やしている。メキシコの自動車生産台数が今年350万台、23年に400万台とコロナ禍前の水準に戻る見通しであり、承認取得とともに生産を拡大する」

「電磁鋼板は倉敷地区の高級無方向性電磁鋼板の設備増強が予定通り進み、24年度上期に現状の能力の倍にする。拡大するニーズに応えるため、今後も能力の増強を検討していく。力を入れる洋上風力発電のビジネスについてはJFEエンジリングが岡山県笠岡にモノパイル式基礎の工場を建設している。倉敷地区の第7連続鋳造設備の製造範囲を広げて戦力化し、大単重の厚板をJFEエンジに供給していく」

――出資先のベトナムのフォルモサ・ハティン・スチール(FHS)との連携、インドのJSWスチールとの電磁鋼板の合弁会社設立検討の進捗は。

「FHSは、高炉2基立上げによる操業度アップもあり、今後、収益的にも効果が期待される。また、ベトナムのJFEグループであるJスパイラルや出資先のSUNSCOに熱延を供給している。JSWについては、21年に粗鋼生産が初めて2000万トンを超え、今後も成長が続く。方向性電磁鋼板の共同製造販売会社の設立を検討し、事業化調査を行い、最近は現地で直接面談を重ね、交渉を進めている。インドは政府による電力網整備などで方向性電磁鋼板の需要は大幅な増加を期待できる。前向きに考えていきたい」(植木 美知也)



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