2021年7月19日

営業戦略を聞く JFEスチール 門田純副社長 需給タイト 安定供給に全力 鉄の価値再構築へ顧客と対話

――下期に向け国内市場をどう見通すか。

「自動車生産の半導体不足の影響は限定的で徐々に解消される見通しだ。自動車メーカーの国内生産は夏以降での挽回を含め年度で920万台を想定しており、高水準の生産が続くとみている。建築はホテルなど中小物件の見直しはあるが大型再開発や物流倉庫が計画通り進み、鉄骨需要は前年から約4%増え430万トン程度を見込む。土木は国土強靭化で一定の出件があり、インフラの老朽更新含め堅調。建設機械は資源価格の上昇を受けて鉱山機械の生産が増え、産業機械や工作機械は海外向けを中心に増えている。低調だった造船はコンテナ船の発注が増え、カーボンニュートラルへの取り組みからLNG燃料船の需要が増え始めており、下期にかけて鋼材の需要は上向いていくとみている」

――海外市場も回復が続く。

「自動車生産は中国が好調でインドネシアも上向いている。タイとインドは新型コロナウイルス感染拡大の影響で直近では停滞しているが全体的に回復傾向にある。エネルギー分野は脱炭素などから石油ガス向けの鋼管需要が盛り上がりに欠けるが、原油価格が1バレル70ドル強に上がり、リグカウントも持ち直し傾向であり、北米中心に鋼管の問屋販売が増えつつある。特に天然ガスは環境負荷が低いため一定の需要が望め、鋼材需要の回復を期待している」

――需給のひっ迫はしばらく続くのか。

「当社の今年度の粗鋼生産量は2650万トンの計画で足元は多くのラインがフル生産を続けているが、需給はほぼ全品種がタイトな状況だ。今年12月に西日本製鉄所倉敷地区の第4高炉の改修を終える予定なので下期に粗鋼生産を増やしていく。国内はひも付きのみならず、コイルセンターやシヤリングメーカー、建材特約店など長く安定的に取引しているお客様の比率が高く、海外向けも日系のお客様やアライアンス先、海外の事業会社向けが過半を占める。デリバリーの対応や安定供給に全力を挙げるのが素材メーカーとして大事な使命。お客様の操業や在庫の状況を的確に把握し、より神経を使ってデリバリー対応にあたるよう営業部門内で徹底している」

――今年度開始の中期計画で掲げる「世界トップレベルのトン当たり収益」の達成にどう向かうか。

「中長期的にみると人口減少に比例し内需の減少を想定せざるを得ない。東日本製鉄所の京浜地区の上工程や千葉地区のブリキラインの休止を決め、中期計画で『量から質への転換』を掲げて電磁鋼板やハイテン鋼、厚板の大単重材など高付加価値品の比率を現在の40%程度から50%に引き上げる目標を示した。粗鋼生産を2600万トンに縮める中で競争力のある製品を追求していくと必然的に高付加価値品の比率が高まる。一方で汎用品や市況連動性が高く安定的な採算確保が難しい製品は比率が低下していく。『世界トップレベルの収益力』の確立に向けた営業戦略として、プロダクトミックスを転換していく」

――構造改革で一部製品の供給に変化が生じる。

「京浜地区や千葉地区の設備休止に伴って製造中止や製造地区の変更を伴う製品があり、お客様への説明を始めている。お客様に負担をおかけするが事情をご理解いただき、対処を進めている。デリバリー調整含め営業部門は構造改革に関するところでも汗をかき、お客様への影響がミニマイズされるよう取り組む」

――厚板は洋上風力発電事業向けの拡販を計画している。

「JFEエンジニアリングが洋上風力発電向けに基礎構造物のモノパイルの製造に乗り出す。6月に倉敷地区で立ち上げた第7連続鋳造機を活用して大単重の厚板を製造し、モノパイル製造時の溶接工数の削減などに寄与する。モノパイルの鋼材需要は24年度に10万トン、その先に16万―20万トンが見込まれている。大単重の厚板は造船や圧力容器向けでもメリットを発揮できるので、そうしたお客様にも貢献していく」

――ひも付き販価是正の進ちょくは。

「主原料の価格が上期に想定した以上に上がっており、速やかに販価に反映させていく。物流など諸費用も上がっている。過去からの経緯や連続性を踏まえつつも、社会環境が変わってきているところも含めてお客様と販価について会話をさせていただいている。また、EV化に伴う軽量化ニーズの高まりを捕捉するべく、ハイテン材の生産を強化し、倉敷地区で高級無方向性電磁鋼板の能力増強を24年度上期に行い、生産能力を2倍にする。さらにカーボンニュートラルへの対応で巨額の設備投資や研究開発費が必要となり、こうした取り組みのためにも適切な水準の利益の確保に努める」

――エキストラの見直しに着手している。

「これまでも継続的に点検してきている。過去からの経緯やコストなど様々な要素があって形成されてきたが、今の時代にそぐわなくなっているケースもある。お客様と会話を進め、点検作業と変更の作業を並行し、鉄の価値の再構築に着実に取り組んでいく」

――原料価格がなお上がり、下期も製品値上げの必要が生じる。原料価格は下期も高止まりとみるか。

「足元の原料価格の状況からみて下期も値上げが必要になる。原料の需要は強く価格は今のところ、下がる要素が見当たらない」

――中国の鋼材市況が5月に一時調整安に転じた。

「政府による物価統制が発端だが、使用する中国産の原料炭の価格が高く、鉄鉱石の輸入価格も高止まりしているので鋼材価格の下げ余地はさほどないとみている。CO2排出削減に向けて鋼材輸出を抑制する政策をとっており、輸出数量は限定されるだろう」

――海外事業の拡大に向かう。

「インドでJSWスチールと主に変圧器に使われる方向性電磁鋼板の製造販売会社の合弁設立を検討し、事業化調査を始め、年度内に判断する予定だ。JSWは長期にわたって信頼関係を構築してきた重要なパートナーであり、すでに技術を供与している自動車用鋼板を含めてJSWと協力し、市場を取り込む。無方向性電磁鋼板など他の分野でもニーズがあれば連携を考える」

――ベトナムのフォルモサ・ハティン・スチールや中国のグループ会社は生産が堅調だ。

「フォルモサは順調に操業している。鋼材市況が上昇し、利益は大きく改善している。当社のベトナムのお客様へ、一部フォルモサから継続的に熱延コイルを供給している。中国は広州JFE鋼板が好調でめっき能力の増強工事を8月完工に向けて取り組んでいる。特殊鋼棒鋼を製造する宝武JFE特殊鋼は日系のユーザー開拓を順調に進めている。ミャンマーのカラー鋼板製造拠点のJFEメランティミャンマーについては生産を停止し、再開のめどが立たない状況だ」

「北米事業は自動車用鋼板製造のニューコアJFEスチールメキシコの立ち上げがコロナ禍で遅れたが昨年12月に生産を再開し、自動車メーカーの承認取得を進めている。北米の自動車生産は好調で承認取得とともに生産を増やしていく。カリフォルニアスチールも堅調な鉄鋼市場の追い風を受けている」

(植木美知也)

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