2023年9月4日

JFEスチールのGX戦略を聞く 福島裕法副社長 電炉活用 最大効果を追求 CCS枠組み進展 CR高炉、段階的に開発

JFEスチールは、CO2排出削減に向けて高効率・大型電炉の導入を検討し、UAEでの低炭素還元鉄の製造やマレーシアでのCCS(二酸化炭素回収・貯留)の新プロジェクトの具体的な検討も始めた。カーボンニュートラル(CN)の推進は新たな価値を生み、将来の成長につながる。全社のCN推進プロジェクトを統括する、福島裕法副社長に直近の取り組みを聞いた。

――2030年度目標のCO2排出30%以上削減に向け西日本製鉄所倉敷地区での高効率・大型電炉導入検討など電炉の活用策を相次ぎ打ち出した。

「倉敷にどのような電炉を建設するか検討を進めているところだが、電炉の活用については足元のCO2削減のために特殊鋼の製造拠点である仙台製造所の電炉で高級鋼の製造に取り組んでいる。倉敷の高炉・転炉で製造している特殊鋼・棒鋼・線材について製造可能な製品を仙台の電炉に置き換える。仙台で能力増強と高級鋼製造の施策を24年に打つが、高炉材指定の鋼種であり、お客様での認証を経て切り替えていくことになる。さらに東日本製鉄所千葉地区のステンレス製造プロセスでの電炉導入を決めたが、これは25年下期の稼働を予定している。これまではクロム鉱石と炭材を使用した溶融還元プロセスでコスト削減を進めてきたが、CO2削減の観点から電炉での生産に切り替えていく」

――高効率・大型電炉で主な課題となる高級鋼の製造と生産性の向上をどうクリアするのか。

「千葉地区に試験電炉を24年に導入し、電炉の高効率化に向けて電力原単位を低下させるために予熱、撹拌、熱付与の技術を中心に開発する。不純物の除去については西日本製鉄所福山地区に精練炉を導入し、脱窒など二次精錬の開発を行う。電炉の原料には鉄スクラップの他に直接還元鉄のHBIを利用する。HBIはスラグ分を含むため、その溶解に電力の一部を使用しなければならず、電力原単位は増加する。さらに将来的には、よりスラグ分を多く含む低品位のHBIを使用せざるを得ないことが想定されることから、熱付与や予熱などで電力原単位増加を抑制するための試験を進め、得られた知見を倉敷の高効率・大型電炉に生かす。電炉の建設にはスクラップヤードや荷役・港湾のインフラ、電力インフラの整備が必要だが、電力インフラにも大きな投資を要する。特に電炉プロセスでより低炭素な鋼材を製造するにはクリーンな電力供給が重要であり、政府が掲げている脱炭素電源への転換など早急にインフラ整備を進める必要がある」

――電炉での高級鋼の製造は技術的にめどがついているのか。

「生産性の確保と高級鋼の製造については、ハードルは高いもののクリアできると考えている。ただ、実際に電炉で製造した高級鋼を供給するには、高炉材を使用しているお客様が電炉材に切り替える移行期間が必要であり、高炉からどのように置き換えていくか設計図を描いておかなければならない。倉敷の高炉改修の時期となる2027―30年までそう時間はなく、早期に検討を進めていく」

――原料の冷鉄源の調達も大きな課題に。

「全社で年間にだいたい300万トン弱の鉄スクラップを消費しているが、倉敷に年産200万トン規模の電炉を導入した場合には、スクラップ消費は新たに200万トン程度増える可能性がある。自社の製鉄所で発生するスクラップは量が限られる。お客様からスクラップを戻してもらえれば成分を把握している自社の鉄なので使い勝手はよい。自社発生とお客様や市中から購入するスクラップ、それに直接還元鉄も使用してどのような鋼種の高級鋼が電炉で造れるか、詳細を詰めていく」

――UAEのエミレーツ・スチール、伊藤忠商事と共同でUAEに低炭素還元鉄の工場建設を計画している。

「UAEは天然ガスが豊富でコスト的に優位であり、CCSの立地にも恵まれている。低炭素還元鉄工場の操業ノウハウを持つエミレーツと昨年に話を始め、年産250万トン程度の生産を想定し、伊藤忠商事の参画で比較的品位の高い鉄鉱石の調達も期待できる。倉敷の高効率・大型電炉は高級鋼の領域を想定しているが鉄スクラップだけでは製造できない鋼種や製品があり、高品位冷鉄源の低炭素還元鉄のプロジェクトの意義は高い。将来の鉄源確保に向けては還元鉄の活用が有効であり、国際資源大手のBHPとも豪州鉱を活用した還元鉄製造で共同研究を進めている」

――電炉の活用で30年の目標に届くのか。

「30年の目標実現に向けては、電炉の活用、溶銑配合率低減によるスクラップ利用の拡大や各プロセスの省エネ技術の開発に取り組んでいく。さらにマレーシアのペトロナスと連携したCCSの共同検討についても日本企業4社で今年6月に覚書を結んだ。CO2を分離・回収する技術は確立されているが、CO2を液化して船舶で輸送し、貯留するのは当社単独ではできない。石油資源開発、日揮ホールディングス、川崎汽船と協力して具体化し、CCSの取り組みも加速させていく」

――2050年のカーボンニュートラル(CN)に向けた対策の目玉のカーボンリサイクル(CR)高炉の開発手順は。

「千葉地区に炉内容積150立方㍍規模の試験高炉を25年に建設し、次に30年までに倉敷で700立方㍍規模の中規模高炉で実証を行い、早期の実機実証試験を進めていきたい。30年代半ばに西日本製鉄所で次の高炉改修の時期を迎えるが、その時に国内の水素供給量やコストがどの程度整備されているかは大きなポイント。電炉だけで全ての鋼材を製造するのは困難であり、超高級ゾーンの製品は将来も高炉・転炉で造る必要がある。CR高炉の開発まで段階を踏むことを想定しており、CR高炉に将来変換できるトランジションの酸素高炉が必要かもしれない。酸素高炉でCО2を削減しつつ、将来開発するメタネーション設備を設置するスペースを設けておくことも考えられる」

――CR高炉の他に必要なことは。

「CR高炉を実機化しても合成メタンでの還元は50%程度で残りの50%はコークスを使用するのでCCUSが必要。コンビナート連携でのCCU(二酸化炭素回収・有効利用)も検討しており、すでに五井・蘇我地区コンビナート連携と水島のコンビナート連携が動き始めている。コンビナート連携には大きな柱があり、一つは水素やアンモニア、電力などグリーンエネルギーの供給基地となること。もう一つは製鉄所という大きなCO2発生源を持つ中でCCUを進めることであり、エネルギー供給とCO2削減の二つの観点で具体化していく。当社はCCUSの推進に関して、22年8月にエネルギー技術部を中心としたCCUS・グリーンインフラ検討チームを設置し検討を進めてきたが、取り組みを具体化するためには専用部署が必要と考え、今年4月にGXインフラ開発部を設立し専任化した」

――グリーン鋼材「JGreeX(ジェイグリークス)」の供給を始め、海運8社が建造するドライバルク船への採用を決めた。

「海運会社とCO2削減価値をサプライチェーン全体で負担する社会分配モデルを新たに世界に先駆けて構築した。JGreeXを販売する際にプレミアムをいただくが当社も荷主の1社として一部を負担する。現在海運3社が建造する4隻への採用が決まり、造船2社に合計約1万4000トンのJGreeXを納入する。JGreeXに対し、問い合わせはいろいろといただいている。第三者機関により認証された22年度のCO2排出削減量に基づき、約20万トン分を23年度に供給できるため、徐々に販売を増やしていきたい」

「さらに、社会全体のCN実現に貢献する鋼材として電磁鋼板の生産能力を増やしていく。需要が伸びるのは間違いなく、5月に追加の増強を決定し、8月にはインドのJSWとの方向性電磁鋼板の合弁会社設立に関して合弁契約を締結した。また、洋上風力向けの鋼材も大きなエコプロダクトだ。大単重厚板のJ―TerraPlateが洋上風力発電の基礎構造物に初めて採用された。最大単重37トンの厚板を製造できるメーカーは世界で限られるため、ニーズを捉えていく」

――CN関連で多くの組織を立ち上げた。運営上の今後の取り組みは。

「21年7月にカーボンリサイクル開発部を作り、今年春にもGXインフラ開発部や倉敷電気炉建設検討班を設けるなどこの2年ほどで10余りの組織を設置した。営業系も含めたグリーン鋼材戦略検討チームも作り、組織体制はほぼ整えたが兼務者が多い。これからは若い社員が専任となって、CNに向けた取り組みを積極的に推進していってほしい。CR高炉は技術を確立した後もさらに進化していくとみており、若い方には研究開発に積極的に手を挙げ、プロジェクトに長く関わってほしい。自動車用鋼板や電磁鋼板の製造面で合弁事業などインサイダー事業のさらなる深化を進めているが、CR製鉄の技術が確立できれば、それをソリューション型のビジネスモデルとして成長戦略に組み込み、海外に打って出ることも考えられる」

――25年度からの次期中期計画で取り組む課題は。

「CNはやはり大きなテーマとなる。次期中計では倉敷の電炉導入の方向性が定まり、電炉の建設や原料の調達が本格化していく。DX(デジタルトランスフォーメーション)も重要だ。現中計で製鉄所の全プロセスCPS化が完了する予定であり、設備稼働の予測精度のさらなる向上や設備等の自動化が進む。さらに、次期中計には製鉄所も含めた全社オープン化が完了し、それに伴ってクラウド上で全てのシステムが動くことになり、さまざまな改革を進めやすくなる。デジタル化が加速し、製鉄所の姿が変わっていくだろう。自分たちで開発したモデルをソリューションビジネスとして海外に展開し、新たな成長につなげていくことになる」(植木 美知也)

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