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2024.11.29
2024年11月19日
新社長に聞く/メタルワン/渡邉善之氏/機能重視 成長施策を加速/次期中計、北中米で案件創出へ
――本年9月に社長に就任した。厳しい事業環境の中での舵取りとなるが、トップとして率いていく抱負を。
「三菱商事、旧日商岩井(現双日)両社の鉄鋼製品部門統合時にメタルワン設立準備室にいたメンバーでもあり、社長に就任したことは運命と思っている。メタルワンでは、三菱商事と旧日商岩井から継承された鉄鋼事業をこの20年間維持・拡大し、新しい社員も増えている。メタルワン設立以来の皆さんの思いを引き継ぎ、鉄鋼業界に貢献することで恩返ししていきたい。2019年にメタルワンの経営企画部から三菱商事に異動、この5年半、鉄鋼以外の新規事業の開発を手掛けた。日々変化する市場やメガトレンド・課題を俯瞰して捉え、他の素材や会社人生で学んだことをメタルワンに注ぎ込む。株主やグループ企業、各地域のメタルワンクラブの会員企業さま、その他様々な機能を持った企業さまと連携のうえ、弊社が提供する機能にソリューションのサービスを加えながら世の中の変化の早さ・課題に対応していく。最終年度を迎えている中期経営計画2024は『変革』と『成長』がテーマ。社員は自分ごととして取り組んでおり、しっかりと仕上げていきたい」
――中期計画のテーマの「変革」と「成長」それぞれの成果、手応えは。
「人手が足りない中で、デジタルをひとつのツールとして活用、お客さまと一緒に効率化を実現していくことが重要。現在、弊社が提供する(デジタルプラットフォームの)メタルエックス、メタルエックスユーピーはご好評をいただいており、商社として機能を示すことができているのではと考えている。また、グループ内での対応としては、メタルワンや事業会社それぞれでコーポレート機能を持つと流通コストが増し、メーカーやお客様の競争力につながらないため、コーポレートの業務標準化などの取り組みを進めており、『変革』に関しては一定の成果を感じている。『成長』については、ベトナムで現地有力企業であるナム・ファット社と提携するなど伸びゆくマーケットでの打ち手が少しずつ形になっている。電磁鋼板ではイタリアの変圧器用コア製造のラゴア社に出資した。インドは広いので地域ごとに少し長い目で取り組みを考えていく。中東、アフリカではこれまで株主会社の拠点を活用していたが、今年春にナイロビに事務所を置くなどの仕掛けを進めながらトレーディングの強化に取り組んでいる。国内の新しい取り組みとして波力発電の商品化を目指す技術ベンチャーのグローバルエナジーハーベスト社に出資した。将来への布石の一つであり、投資や新規分野を経験する社員を増やす狙いもある。今後、さらに『成長』に軸足を移し、成長施策を加速させていく」
――市場の現状と先行きをどう見通し、どのように対応していく考えか。
「国内は人件費などのコスト上昇が影響し、建設案件が遅れるなど需要は低調だ。海外をみると、中国は内需の減速を背景に各商品の輸出が増え、通商リスクの高まりを警戒しなければならない。EV化が進む中国の存在によって日系自動車メーカーによるアジア展開にも脅威を与えつつある。米国の大統領選もあり、市場は不連続で不確実な状況にあるが、その中で各地域の市場にアドレスし、課題を踏まえチャンスを捉えることが重要だ。仕事の仕方を変えることでチャンスは増える。北村前社長は『健全な危機感を持って前向きにチャレンジしていこう』と語っていた。それを踏襲し、短期と中長期の視野を持ちながら厳しい経営環境を前向きに捉えてチャレンジしていきたい」
――25年度開始の新中期計画で構想する重要テーマは。成長戦略をどう描く。
「国内は人口が減少し、人手不足や高齢化の問題が深まっていく。物流問題が本格化するのはこれからであり、デジタル以外も含めてお客様にソリューションを提供していく。グループのエムエム建材は国内に広いネットワークと建築案件をもっており、その関係よりいろいろな接点を持っている。そのようなグループの接地面積・経営資源を活用しながら、リアルビジネスにデジタル技術も活用しながらしっかりと基盤を固めていく。海外は広い地域で考えていくが、引き続き北中米での案件創出に向け検討を進めていく。国内と海外の地域ごとの課題、マーケット環境や産業ごとの課題の違い、メガトレンドやニーズを把握し、それぞれに応じた打ち手を考える。お客様に新たな機能を提供、一緒に価値を創造するとともにグループの総合力を活用して機能を加えることで事業や社員の良さを伸ばしていきたい。成長に向けた案件創出の考え方、地域ごとの案件の方向感を定め、今後の攻め手を新中期計画で示していく」
――成長への大きな原動力となるグループ会社、株主会社との連携の強化策とは。
「グループ力、人材の力をいかに活用できるか。グループ会社でも経営人材の育成に取り組み、経営幹部を担ってもらうようグループ社員を育成する。その為にも本社で行っていた経営塾をレベルアップし、経営人材の育成プログラムも取り組んでいく。また、各種課題を個社単位ではなく、グループ単位で考えたい。実際にベストプラクティス(最善策)はいろいろなところにあり、共通化することで各社の事業強化を図る。メタルワン単体については現在、三菱商事からの出向者数は減っており、今後、コーポレート部門の部長含め、メタルワン入社社員の管理職を増やしていきたい。他方、株主会社との連携強化に率先して取り組んでいく。実際に、株主会社のビジネスパートナーがメタルワンのビジネスパートナーとなっていただく可能性もあり、そういった観点でも株主会社との連携を強化していきたい」
――取り扱いの規模に対するスタンスは。
「量だけを追求するのではなく、価値を提供しなければならない。トレーディング会社であるのは事実だが、量だけのトップを目指すのではなく、求められる機能を提供しながら質も重視していく」
――カーボンニュートラルの取り組みをどう発展させる。
「グループ全体のGHG(温室効果ガス)排出量の可視化を進め、20年度比で2030年までに半減を目標にしており、株主会社の再生可能エネルギー事業の活用などで実現できそうだ。気候変動への取り組みについては、11月下旬にコーポレートサイトをリニューアルする際に開示する。GXは再生可能エネルギーの新たな取り組みに乗り出し、グリーン鋼材の販売については仕組みを作り、積極的に展開していきたい。サーキュラーエコノミーはエムエム建材が取り組んでおり、株主会社とも連携して新たな策を考えていきたい」
――グループ社員に求めることは。
「設立時に『メタルマーケットメーカー』というビジョンと、『メタルバリューオプティマイザー』というミッションを掲げた。当時は早すぎたテーマと感じたが、今こそ大事なことであり、志を忘れずに取り組み、DNAをつないでいきたい。現場の業務は同じことをやりながらも変化していくニーズを捉えて仕事や自分を少しずつ変えていくことが大事。課題解決に向けて自分たちを変え、挑戦してほしいし、経営として社員が挑戦しやすい環境を作っていく」(植木 美知也)
「三菱商事、旧日商岩井(現双日)両社の鉄鋼製品部門統合時にメタルワン設立準備室にいたメンバーでもあり、社長に就任したことは運命と思っている。メタルワンでは、三菱商事と旧日商岩井から継承された鉄鋼事業をこの20年間維持・拡大し、新しい社員も増えている。メタルワン設立以来の皆さんの思いを引き継ぎ、鉄鋼業界に貢献することで恩返ししていきたい。2019年にメタルワンの経営企画部から三菱商事に異動、この5年半、鉄鋼以外の新規事業の開発を手掛けた。日々変化する市場やメガトレンド・課題を俯瞰して捉え、他の素材や会社人生で学んだことをメタルワンに注ぎ込む。株主やグループ企業、各地域のメタルワンクラブの会員企業さま、その他様々な機能を持った企業さまと連携のうえ、弊社が提供する機能にソリューションのサービスを加えながら世の中の変化の早さ・課題に対応していく。最終年度を迎えている中期経営計画2024は『変革』と『成長』がテーマ。社員は自分ごととして取り組んでおり、しっかりと仕上げていきたい」
――中期計画のテーマの「変革」と「成長」それぞれの成果、手応えは。
「人手が足りない中で、デジタルをひとつのツールとして活用、お客さまと一緒に効率化を実現していくことが重要。現在、弊社が提供する(デジタルプラットフォームの)メタルエックス、メタルエックスユーピーはご好評をいただいており、商社として機能を示すことができているのではと考えている。また、グループ内での対応としては、メタルワンや事業会社それぞれでコーポレート機能を持つと流通コストが増し、メーカーやお客様の競争力につながらないため、コーポレートの業務標準化などの取り組みを進めており、『変革』に関しては一定の成果を感じている。『成長』については、ベトナムで現地有力企業であるナム・ファット社と提携するなど伸びゆくマーケットでの打ち手が少しずつ形になっている。電磁鋼板ではイタリアの変圧器用コア製造のラゴア社に出資した。インドは広いので地域ごとに少し長い目で取り組みを考えていく。中東、アフリカではこれまで株主会社の拠点を活用していたが、今年春にナイロビに事務所を置くなどの仕掛けを進めながらトレーディングの強化に取り組んでいる。国内の新しい取り組みとして波力発電の商品化を目指す技術ベンチャーのグローバルエナジーハーベスト社に出資した。将来への布石の一つであり、投資や新規分野を経験する社員を増やす狙いもある。今後、さらに『成長』に軸足を移し、成長施策を加速させていく」
――市場の現状と先行きをどう見通し、どのように対応していく考えか。
「国内は人件費などのコスト上昇が影響し、建設案件が遅れるなど需要は低調だ。海外をみると、中国は内需の減速を背景に各商品の輸出が増え、通商リスクの高まりを警戒しなければならない。EV化が進む中国の存在によって日系自動車メーカーによるアジア展開にも脅威を与えつつある。米国の大統領選もあり、市場は不連続で不確実な状況にあるが、その中で各地域の市場にアドレスし、課題を踏まえチャンスを捉えることが重要だ。仕事の仕方を変えることでチャンスは増える。北村前社長は『健全な危機感を持って前向きにチャレンジしていこう』と語っていた。それを踏襲し、短期と中長期の視野を持ちながら厳しい経営環境を前向きに捉えてチャレンジしていきたい」
――25年度開始の新中期計画で構想する重要テーマは。成長戦略をどう描く。
「国内は人口が減少し、人手不足や高齢化の問題が深まっていく。物流問題が本格化するのはこれからであり、デジタル以外も含めてお客様にソリューションを提供していく。グループのエムエム建材は国内に広いネットワークと建築案件をもっており、その関係よりいろいろな接点を持っている。そのようなグループの接地面積・経営資源を活用しながら、リアルビジネスにデジタル技術も活用しながらしっかりと基盤を固めていく。海外は広い地域で考えていくが、引き続き北中米での案件創出に向け検討を進めていく。国内と海外の地域ごとの課題、マーケット環境や産業ごとの課題の違い、メガトレンドやニーズを把握し、それぞれに応じた打ち手を考える。お客様に新たな機能を提供、一緒に価値を創造するとともにグループの総合力を活用して機能を加えることで事業や社員の良さを伸ばしていきたい。成長に向けた案件創出の考え方、地域ごとの案件の方向感を定め、今後の攻め手を新中期計画で示していく」
――成長への大きな原動力となるグループ会社、株主会社との連携の強化策とは。
「グループ力、人材の力をいかに活用できるか。グループ会社でも経営人材の育成に取り組み、経営幹部を担ってもらうようグループ社員を育成する。その為にも本社で行っていた経営塾をレベルアップし、経営人材の育成プログラムも取り組んでいく。また、各種課題を個社単位ではなく、グループ単位で考えたい。実際にベストプラクティス(最善策)はいろいろなところにあり、共通化することで各社の事業強化を図る。メタルワン単体については現在、三菱商事からの出向者数は減っており、今後、コーポレート部門の部長含め、メタルワン入社社員の管理職を増やしていきたい。他方、株主会社との連携強化に率先して取り組んでいく。実際に、株主会社のビジネスパートナーがメタルワンのビジネスパートナーとなっていただく可能性もあり、そういった観点でも株主会社との連携を強化していきたい」
――取り扱いの規模に対するスタンスは。
「量だけを追求するのではなく、価値を提供しなければならない。トレーディング会社であるのは事実だが、量だけのトップを目指すのではなく、求められる機能を提供しながら質も重視していく」
――カーボンニュートラルの取り組みをどう発展させる。
「グループ全体のGHG(温室効果ガス)排出量の可視化を進め、20年度比で2030年までに半減を目標にしており、株主会社の再生可能エネルギー事業の活用などで実現できそうだ。気候変動への取り組みについては、11月下旬にコーポレートサイトをリニューアルする際に開示する。GXは再生可能エネルギーの新たな取り組みに乗り出し、グリーン鋼材の販売については仕組みを作り、積極的に展開していきたい。サーキュラーエコノミーはエムエム建材が取り組んでおり、株主会社とも連携して新たな策を考えていきたい」
――グループ社員に求めることは。
「設立時に『メタルマーケットメーカー』というビジョンと、『メタルバリューオプティマイザー』というミッションを掲げた。当時は早すぎたテーマと感じたが、今こそ大事なことであり、志を忘れずに取り組み、DNAをつないでいきたい。現場の業務は同じことをやりながらも変化していくニーズを捉えて仕事や自分を少しずつ変えていくことが大事。課題解決に向けて自分たちを変え、挑戦してほしいし、経営として社員が挑戦しやすい環境を作っていく」(植木 美知也)
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