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2024.11.27
2024年11月28日
財務・経営戦略を聞く/神戸製鋼所 取締役執行役員/木本和彦氏/数量に寄らず高収益確保/アルミ・銅・チタン 下期に採算改善効果
――需要環境が前年以上に厳しい。
「今年度前半に自動車の減産が続き、海外向けのKD部品も減少している。部品メーカーが自動車生産の回復を期待していたが、上期から下期に入ったところでも自動車生産が伸びず、サプライチェーンの中での在庫調整が鋼材需要に及んでいる。自動車の国内生産台数は下期にかけて緩やかに回復していくものの、見込み台数を下回る可能性がある。生産台数の変動に部品の在庫調整が加わり、鋼材需要の挙動は生産台数の増減以上に大きくなる。懸念するのは現在の生産台数が一時的ではなく常態化すること。そうならないことを願うが、海外市場の需要減退もあり、以前のような900万台前半の水準には当面戻らないだろう」
――下期に期待していた半導体関連需要の回復が鈍い。
「アルミ関連はデータセンター向けのディスク材が好調だ。半導体製造向けの回復は遅れているが、来年1―3月に動き出すとみており、販売計画に少し織り込んでいる。銅板は自動車の減産と半導体の回復遅れが影響し販売が減少している。建設は大型再開発の案件は多く、1―3月に少し需要が戻るのを期待しているが、人手不足からゼネコンが受注を抑えており、全体的には依然低調だ。社会問題の解決策としてゼネコンには当社の自動溶接ロボットや建設機械の遠隔操作システム『K―DIVE』を提案している」
――上期に減益となり、通期の連結経常利益予想を1300億円と前回予想の1500億円から下方修正した。
「市場環境が厳しく、上期は素材系と建設機械の販売量の悪化が響いたが、機械系が支えた。機械・エンジニアリングはエネルギー関連などの受注の好調が続いている。機械は圧縮機中心にサービスの売上高が増えて収益を増やし、エンジは神鋼環境ソリューション含め受注が堅調だ。直接還元鉄製造プラントのミドレックスは変わらず多くの引き合いをいただいており、成約に至るのはお客様の事情もあって年間2―3件だが以前に比べ相当に多い。電力の利益も安定しており、機械・エンジと電力で、素材系の減益をある程度カバーする。通期の連結経常利益予想を下方修正したが、将来に向けた投資に変更はなく、中期経営計画で掲げた課題に着実に取り組んでいく」
――鋼材販売の通期予想を470万トンと10万トン下方修正したが、粗鋼生産は600万トンで変えていない。
「自動車生産の振れによって部品在庫が大きく動くので現段階で粗鋼生産を減らす必要はない。鋼材輸出を増やす考えはなく、需要が想定以上に減少するようであれば減産対応を進める」
――価格改善について。特に遅れていたアルミ製品は進展がみられた。
「鋼材は主原料の変化プラス諸物価・固定費上昇分の転嫁を進め、ひも付き向けはほぼ転嫁できている。ただ、マージンを改善し収益力を上げていく取り組みは今後も必要だ。素形材は鋼材に比べて遅れていたコスト転嫁やアルミのフォーミュラ化が徐々に進み、採算は改善してきている。アルミ・銅・チタンは年度後半に向かうほど採算の改善効果が出てくる」
――アルミ関連事業の赤字脱却のめどは。
「アルミ関連の利益は数量減の影響で減少しているが、コスト転嫁の進展でトン当たりの収益性はかなり改善している。数量が戻れば確実に黒字化する。米国のサスペンション事業においても、製造における実力の強化が進んでいる。アルミは自動車・部品のモデルごとに価格を決めているが、原料価格に続いて副原料・その他コストのフォーミュラ化に加え、労務費や固定費の転嫁により、改善している。モデル変更時の利益効果は大きい。中国のアルミ板事業を改革し、宝武鋼鉄集団と連携して中国国内での一貫製造体制を整え、宝武鋼鉄集団の販売力によって中国系自動車メーカーにも販売を増やす。独禁法審査を終え次第、事業を開始する。対策が徐々に具体化し、数量の回復によって利益を見込める段階にきている」
――建機は通期利益予想を上方修正した。
「エンジン認証問題に関する補償金収入があり利益は改善しているが、国内外とも市場は低調で現在の販売台数では満足できる利益を確保できない。シェアを伸ばす方針だが現在の景況では難しい。部品やアフターサービス、K―DIVEのようなソリューションの提供に注力し、販売台数に寄らずに利益を上げていく」
――棚卸資産評価差等除く実力の連結経常利益予想は1285億円と前回から110億円下方修正したがどう評価する。来期に見込む利益水準はどの程度に。
「実力の利益としては満足していない。実力の連結経常利益予想には数量の回復を織り込んでいないが、現在の水準から100億―200億円の上積みを図りたい。機械はサービス拠点の拡充を進めており、収益力をさらに高めることができる。為替の円安は追い風だが、成長戦略にしっかりと前に進めることで収益対策の効果を見込んでいる。素材系や建設機械の販売量の回復を待つのではなく、数量が多少減少しても利益に大きな影響を受けない構造的な改善策に数年かけて取り組む。実力損益を上げていくプロセスを続け、その中で数量が巡航速度に戻ればさらに利益を得ることができる。素材系事業は数量に左右はされるものの、KOBELCOグループらしい取り組みで収益力を強化していきたい。機械系についてはM&Aも選択肢の一つだ」
――米国は新政権による経済対策で景気浮揚が期待できそうだが、一方で中国は経済対策を打ちつつも景気の低迷が続いている。
「米国は新大統領の経済政策によって景気が上向く可能性がある。現地で自動車用鋼板を製造している当社のプロテックは今期に一定程度の利益を確保し、来期はより改善を期待できる。中国は変調する市場をみて事業のあり方を見極める。アルミ板は宝武集団との協力で新たなスキームを組み事業を強化していくが、鉄鋼関連は影響を強く受ける日系自動車メーカーの動向を注視し将来像を考えていく。東南アジアで事業の中心となるタイは新政権の政策によって経済が自動車産業含め緩やかに上向いていくとみている。当社のタイの事業会社は特殊鋼線材製造のコベルコ・ミルコン・スチールはじめ操業度が低い中で利益を確保しているが、構築している当社の特殊鋼線材のサプライチェーンの競争力、マーケット対応力は圧倒的に高い。市場の回復とともに収益を上げていく見込みだ」(植木 美知也)
「今年度前半に自動車の減産が続き、海外向けのKD部品も減少している。部品メーカーが自動車生産の回復を期待していたが、上期から下期に入ったところでも自動車生産が伸びず、サプライチェーンの中での在庫調整が鋼材需要に及んでいる。自動車の国内生産台数は下期にかけて緩やかに回復していくものの、見込み台数を下回る可能性がある。生産台数の変動に部品の在庫調整が加わり、鋼材需要の挙動は生産台数の増減以上に大きくなる。懸念するのは現在の生産台数が一時的ではなく常態化すること。そうならないことを願うが、海外市場の需要減退もあり、以前のような900万台前半の水準には当面戻らないだろう」
――下期に期待していた半導体関連需要の回復が鈍い。
「アルミ関連はデータセンター向けのディスク材が好調だ。半導体製造向けの回復は遅れているが、来年1―3月に動き出すとみており、販売計画に少し織り込んでいる。銅板は自動車の減産と半導体の回復遅れが影響し販売が減少している。建設は大型再開発の案件は多く、1―3月に少し需要が戻るのを期待しているが、人手不足からゼネコンが受注を抑えており、全体的には依然低調だ。社会問題の解決策としてゼネコンには当社の自動溶接ロボットや建設機械の遠隔操作システム『K―DIVE』を提案している」
――上期に減益となり、通期の連結経常利益予想を1300億円と前回予想の1500億円から下方修正した。
「市場環境が厳しく、上期は素材系と建設機械の販売量の悪化が響いたが、機械系が支えた。機械・エンジニアリングはエネルギー関連などの受注の好調が続いている。機械は圧縮機中心にサービスの売上高が増えて収益を増やし、エンジは神鋼環境ソリューション含め受注が堅調だ。直接還元鉄製造プラントのミドレックスは変わらず多くの引き合いをいただいており、成約に至るのはお客様の事情もあって年間2―3件だが以前に比べ相当に多い。電力の利益も安定しており、機械・エンジと電力で、素材系の減益をある程度カバーする。通期の連結経常利益予想を下方修正したが、将来に向けた投資に変更はなく、中期経営計画で掲げた課題に着実に取り組んでいく」
――鋼材販売の通期予想を470万トンと10万トン下方修正したが、粗鋼生産は600万トンで変えていない。
「自動車生産の振れによって部品在庫が大きく動くので現段階で粗鋼生産を減らす必要はない。鋼材輸出を増やす考えはなく、需要が想定以上に減少するようであれば減産対応を進める」
――価格改善について。特に遅れていたアルミ製品は進展がみられた。
「鋼材は主原料の変化プラス諸物価・固定費上昇分の転嫁を進め、ひも付き向けはほぼ転嫁できている。ただ、マージンを改善し収益力を上げていく取り組みは今後も必要だ。素形材は鋼材に比べて遅れていたコスト転嫁やアルミのフォーミュラ化が徐々に進み、採算は改善してきている。アルミ・銅・チタンは年度後半に向かうほど採算の改善効果が出てくる」
――アルミ関連事業の赤字脱却のめどは。
「アルミ関連の利益は数量減の影響で減少しているが、コスト転嫁の進展でトン当たりの収益性はかなり改善している。数量が戻れば確実に黒字化する。米国のサスペンション事業においても、製造における実力の強化が進んでいる。アルミは自動車・部品のモデルごとに価格を決めているが、原料価格に続いて副原料・その他コストのフォーミュラ化に加え、労務費や固定費の転嫁により、改善している。モデル変更時の利益効果は大きい。中国のアルミ板事業を改革し、宝武鋼鉄集団と連携して中国国内での一貫製造体制を整え、宝武鋼鉄集団の販売力によって中国系自動車メーカーにも販売を増やす。独禁法審査を終え次第、事業を開始する。対策が徐々に具体化し、数量の回復によって利益を見込める段階にきている」
――建機は通期利益予想を上方修正した。
「エンジン認証問題に関する補償金収入があり利益は改善しているが、国内外とも市場は低調で現在の販売台数では満足できる利益を確保できない。シェアを伸ばす方針だが現在の景況では難しい。部品やアフターサービス、K―DIVEのようなソリューションの提供に注力し、販売台数に寄らずに利益を上げていく」
――棚卸資産評価差等除く実力の連結経常利益予想は1285億円と前回から110億円下方修正したがどう評価する。来期に見込む利益水準はどの程度に。
「実力の利益としては満足していない。実力の連結経常利益予想には数量の回復を織り込んでいないが、現在の水準から100億―200億円の上積みを図りたい。機械はサービス拠点の拡充を進めており、収益力をさらに高めることができる。為替の円安は追い風だが、成長戦略にしっかりと前に進めることで収益対策の効果を見込んでいる。素材系や建設機械の販売量の回復を待つのではなく、数量が多少減少しても利益に大きな影響を受けない構造的な改善策に数年かけて取り組む。実力損益を上げていくプロセスを続け、その中で数量が巡航速度に戻ればさらに利益を得ることができる。素材系事業は数量に左右はされるものの、KOBELCOグループらしい取り組みで収益力を強化していきたい。機械系についてはM&Aも選択肢の一つだ」
――米国は新政権による経済対策で景気浮揚が期待できそうだが、一方で中国は経済対策を打ちつつも景気の低迷が続いている。
「米国は新大統領の経済政策によって景気が上向く可能性がある。現地で自動車用鋼板を製造している当社のプロテックは今期に一定程度の利益を確保し、来期はより改善を期待できる。中国は変調する市場をみて事業のあり方を見極める。アルミ板は宝武集団との協力で新たなスキームを組み事業を強化していくが、鉄鋼関連は影響を強く受ける日系自動車メーカーの動向を注視し将来像を考えていく。東南アジアで事業の中心となるタイは新政権の政策によって経済が自動車産業含め緩やかに上向いていくとみている。当社のタイの事業会社は特殊鋼線材製造のコベルコ・ミルコン・スチールはじめ操業度が低い中で利益を確保しているが、構築している当社の特殊鋼線材のサプライチェーンの競争力、マーケット対応力は圧倒的に高い。市場の回復とともに収益を上げていく見込みだ」(植木 美知也)
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