2026年2月4日
商社の経営戦略 ―事業・人財ポートフォリオ―/メタルワン 渡邉善之社長/重点領域・レイヤー二軸で/大胆な事業創造できる人財育成
――2025年度上期は連結純利益が前年同期比20%減の126億円だった。
「中国の内需不振や米国の関税政策などの影響を受けて、世界の鋼材需要が低迷し、国際市況も弱含みで推移した。国内は人手不足によって建設工事が停滞して建材の荷動きが減少し、自動車は米国の関税政策による影響を受けた。主力の自動車と建設関連需要が減少する中、鋼材取扱量は1%増の780万トンと前年並みを維持したが、販売単価が約10%低下し、売上収益は9%減の1兆74億円にとどまった。売上総利益が6%減の646億円となり、インフレ進行に伴い、販管費も増加し、純利益の減少幅が広がった」
――24年度は通期純利益が288億円で、上期が157億円、下期は131億円だったが。
「インドなど一部で力強い需要が見られ、米国の関税政策で停滞していた自動車も回復の兆しは窺えるが、中国からの安値の鋼材輸出が続き、米国を中心とした保護主義の動きが各国に広がっており、日本からの輸出環境はさらに厳しくなっている。国内は人手不足に残業規制が加わって建設工事が大きな制約を受けており、製造業は半導体の供給不足リスクも高まっている。総じて経営環境は厳しいが、取りこぼしがないよう気配りをしながら、下期は上期を上回るレベルで着地したいと考えている」
――下期の重点課題は。
「来年度以降に利益貢献できる投資候補をしっかりと見極め、着実に案件を積み上げていく」
――振り返ると2004年度は売上高が2兆2800億円、純利益は227億円だった。
「メタルワンは2003年1月の設立だが、直後の中国の経済成長が世界の需要拡大を牽引し、歴史的低水準に落ち込んでいた鋼材価格が上昇に転じた。三菱商事と当時の日商岩井(現・双日)の鉄鋼製品事業を統合して事業規模を拡大していたメタルワンは、こうした追い風を捕捉。04年度は売上高が初年度の1兆9000億円から20%増加し、純利益は106億円から227億円に倍増した」
――その後も収益は拡大を続けた。
「国内では日商岩井鉄鋼建材とエムシー・メタルテックを統合したメタルワン建材やステンレスワン、メタルワン特殊鋼を立ち上げるなどPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を進めながら、中国やインド、メキシコ、ブラジル、カナダなどで事業投資を積極展開した。そうした効果も加わって、純利益は05年度329億円、06年度399億円、07年度391億円(15カ月決算)と拡大を続けた」
――売上高は10年後の14年度が2兆4200億円、24年度は2兆1900億円と伸び悩んでいる。
「14年11月に100%子会社のメタルワン建材と三井物産スチールの建材・スクラップ事業を統合し、折半出資による三井物産メタルワン建材(現エムエム建材)を設立した。国内建材ビジネスが連結子会社から持分法適用会社になって連結売上高対象から外れた。同様に19年4月に住商メタルワン鋼管を設立した。国内鋼材価格の上昇を背景に売上高は20年度以降も2兆3000億円規模を維持したが、24年度は国内外の鋼材価格下落と需要停滞が響いて2兆2000億円を下回った」
――純利益は14年度が227億円、24年度は288億円。
「米リーマン・ショックによる深刻な影響を受けつつ、PMIによる収益構造改革の成果を引き出し、08年度206億円、09年度105億円と一定の利益を計上することができた。10年度は188億円に一部回復し、11年度も144億円と持ち応え、12年度以降は概ね200億円台の利益を維持。コロナ禍の20年度は66億円まで落ち込んだが、21年度281億円、22年度415億円、23年度350億円、24年度288億円で、市場環境の変動による影響はあるが、総じて稼ぐ力は高まってきている」
――24年に「パーパス」を設定し、「2030年のあり姿」を描いた。
「世界中の『つくる』をつなぎ、価値創造を追求し続けることで、ものづくりの可能性を広げる――というパーパスの実現に向けて、2030年のあり姿を『課題解決力ナンバーワン』と設定した。その第1フェーズとなる3カ年の『シン・経営計画2027』を今年度よりスタートさせた。コンセプトは『シンカ』で、『深化・進化・新化』という3つの意味を込めている。既存の強みを深掘りし、高機能・高付加価値を創出しながら、新たな領域にも挑戦していく」
――3カ年計画では、事業ポートフォリオの変革を通じた成長を追求する。
「重点領域とレイヤーという二つの軸で事業ポートフォリオを高度化していく。産業・市場の視点から、インフラ・建設、モビリティ、GX・エネルギー、新成長領域の4つを重点領域に位置付けた。一方、既存ビジネスの『深化』をレイヤー1、機能拡張による『進化』をレイヤー2、新規ビジネスへの挑戦である『新化』をレイヤー3と定義。重点領域とレイヤーの二軸を掛け合わせることで、従来の商品軸では捉えきれなかった本質的な課題やニーズに対応し、より高付加価値で高収益な事業ポートフォリオへの変革を通じて成長を実現していく」
――国内戦略は。
「自動車関連や建材分野はじめ優良な顧客基盤がメタルワングループの強みの一つ。今後も国内ナンバーワンの鉄鋼総合商社としての自負を堅持し、産業課題の解決に注力していく。人口減少によって、ピーク時に8000万トン規模だった鋼材消費が将来的に4000万トンを下回る可能性があり、人手不足やコスト上昇といった課題も深刻化している。株主である三菱商事や双日が国内に強固なネットワークを展開しており、メタルワングループの専門性と株主のネットワークを組み合わせ、課題解決力ナンバーワンの信頼を勝ち取っていく」
――薄板流通ビジネスにおける課題解決に向けて、質への転換を加速している。
「自動車産業における電動化・軽量化・高機能化といったメガトレンドは、新たな成長機会と捉えているが、鉄鋼メーカーが先行して生産設備の構造改革を進める中、鉄鋼流通業界も協調領域と競争領域を明確に整理し、設備投資や合理化を進める必要がある。設備更新や労働力の課題が目の前に迫っているが、商社系、オーナー系のコイルセンターがそれぞれ更新投資を実施すると設備過剰となり、そうした投資コストが需要産業の競争力低下を招くことになる。こうした中、メタルワングループの五十鈴の子会社、五十鈴東海が、同じグループ会社の浜松鋼板加工の全株式を取得した。五十鈴グループが保有するコイルセンターの操業技術や経営ノウハウを活用し、相乗効果を追求していく。まずはメタルワングループ内で再編・最適化を進め、中期的な視点では系列を超えた、共同投資、設備共有、地域統合などの協業を視野に課題解決に取り組んでいく」
――メタルワン特殊鋼とメタルワン鉄鋼製品販売を合併する。
「普通鋼と同様に線材・特殊鋼の市場環境は急速に変化している、両社の専門性と営業ネットワークを融合し、部品需要を起点とした川上から川下までの流通・加工機能を構築していく。併せてデジタル化によるリーンなオペレーションの実現や、一次商トップシェアを活かした二次製品・部品領域へのシフトを推進していく」
――海外戦略は。
「海外においては、通商リスクの高まりを背景に分離・分断・分散といったサプライチェーンの再構築が進み、いわゆる地産地消型ビジネスモデルへのシフトが加速する。中国からの鋼材輸出による影響も短期間で収束するとは考えにくい。既存の事業投資先を軸に、両株主のネットワークも活用しながら、グローバルからローカルへの転換を推進。市況に左右されるビジネスへの依存度を相対的に減らし、より付加価値の高い事業への転換を図っていく。イタリアの変圧器コア・メーカー、ラゴアへの投資は、現地市場に深く根差したインサイダー型ビジネスを進化させ、その知見を横展開していくのが狙いだ」
――広い事業基盤を持つ北米戦略を。
「世界最大のデータセンター市場である米国は、生成AIの普及を背景に急速な需要拡大が見込まれる。三菱商事が米国のデータセンター事業に本格参入しており、建設鋼材や資機材のサプライチェーン構築などで連携するチャンスが大きく広がっている。エネルギー分野においても両株主との幅広い連携が可能であり、投資機会を探っていく」
――インドも事業基盤を持つ。
「インドは世界最大の人口を背景に、安定したモディ政権のもと鉄鋼需要の拡大が期待される。現在は自動車や建機分野を中心に外資系企業が強い影響力を持っており、既存の顧客基盤を活かし、現地企業とのパートナーシップを通じて着実に需要を取り込んでいく。インドは地政学的にも中東・アフリカ市場へのアクセス拠点としてのポテンシャルを備えており、輸出基地としての機能強化も視野に入れ、広域戦略を推し進めていく」
――事業投融資のスタンスを。
「世界レベルでサプライチェーンが再構築される中、持続的成長を果たすための事業投資を積極展開していきたいと考えており、各事業部の新規案件に伴走するコーポレート部門を新設した。投資候補をロングリストとして管理し、体系的な進捗管理を行っている」
――再生可能エネルギー分野では、波力発電開発に取り組むグローバルエナジーハーベスト社への第三者割当増資を実施した。
「波力発電の社会実装に向け、バリューアップや量産化体制の構築を強化し、実用化を目指している」
――国内外の事業ポートフォリオについて。
「売上収益は海外6割、国内4割と逆転している。それぞれを伸ばすかたちで、高付加価値と高機能を収益拡大に結びつけていきたい」
――メタルワンとして事業領域を拡大する考えは。
「取引先からの期待、社員の夢や希望などを受け止めつつ、株主会社における事業構想も踏まえながら、臨んでいく」
――中長期ビジョンを実現するための「人財ポートフォリオ」の拡充も必要。
「約700人でスタートした単体の社員が1000人規模になっている。株主会社からの出向者が約3割を占める期間が長く続いたが、メタルワン入社の社員が8割を超え、営業ラインの課長職にも就いている。キャリア採用も続けており、専門性やバックグラウンドが多様化し、事業ポートフォリオの変革に対応できる態勢は整いつつある」
――採用計画は。
「25年度、26年度は新卒・キャリア合わせて50人規模で採用する。初任給は30万5000円まで引き上げているが、優秀な人財を採用し、活躍し続けられるよう、報酬制度の定期的な見直しを行っており、足下は来年4月の改訂を予定している」
――連結1万人規模で、海外の現地法人を含めグループ会社が100社ある。
「単体、グループ会社の社員の育成が持続的成長に直結する。最大の財産である 『人』への投資が不可欠であり、様々な研修制度を設け、内容の充実も図っている。中長期ビジョンの実現に向けて、従来の延長線ではない、より大胆な事業創造を目指す風土を醸成し、モチベーションとスキルを高める目的で、事業構想大学院大学に依頼し、『事業構想人財開発プログラム』を昨年12月に開始した。選抜された13人が8か月間にわたって約100時間のプログラムを受講し、社会課題を基点とした構想力と発想力を体系的に習得し、新規事業の立案につなげていく」
――株主会社との人財交流は。
「総合商社の強みは、幅広い事業に関わる人財の集団であり、海外赴任時に三菱商事の現地法人や支社店、双日との情報交換も行いながら効果的な交流を行っている。コロナ禍で中断していたトレーニーの派遣も再開している」
――メタルワン入社社員の登用については。
「メタルワン入社の社員に経営のバトンを渡し、2030年頃には執行役員を輩出できるよう、適材適所での登用と育成を強化していく」(谷藤 真澄)
「中国の内需不振や米国の関税政策などの影響を受けて、世界の鋼材需要が低迷し、国際市況も弱含みで推移した。国内は人手不足によって建設工事が停滞して建材の荷動きが減少し、自動車は米国の関税政策による影響を受けた。主力の自動車と建設関連需要が減少する中、鋼材取扱量は1%増の780万トンと前年並みを維持したが、販売単価が約10%低下し、売上収益は9%減の1兆74億円にとどまった。売上総利益が6%減の646億円となり、インフレ進行に伴い、販管費も増加し、純利益の減少幅が広がった」
――24年度は通期純利益が288億円で、上期が157億円、下期は131億円だったが。
「インドなど一部で力強い需要が見られ、米国の関税政策で停滞していた自動車も回復の兆しは窺えるが、中国からの安値の鋼材輸出が続き、米国を中心とした保護主義の動きが各国に広がっており、日本からの輸出環境はさらに厳しくなっている。国内は人手不足に残業規制が加わって建設工事が大きな制約を受けており、製造業は半導体の供給不足リスクも高まっている。総じて経営環境は厳しいが、取りこぼしがないよう気配りをしながら、下期は上期を上回るレベルで着地したいと考えている」
――下期の重点課題は。
「来年度以降に利益貢献できる投資候補をしっかりと見極め、着実に案件を積み上げていく」
――振り返ると2004年度は売上高が2兆2800億円、純利益は227億円だった。
「メタルワンは2003年1月の設立だが、直後の中国の経済成長が世界の需要拡大を牽引し、歴史的低水準に落ち込んでいた鋼材価格が上昇に転じた。三菱商事と当時の日商岩井(現・双日)の鉄鋼製品事業を統合して事業規模を拡大していたメタルワンは、こうした追い風を捕捉。04年度は売上高が初年度の1兆9000億円から20%増加し、純利益は106億円から227億円に倍増した」
――その後も収益は拡大を続けた。
「国内では日商岩井鉄鋼建材とエムシー・メタルテックを統合したメタルワン建材やステンレスワン、メタルワン特殊鋼を立ち上げるなどPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を進めながら、中国やインド、メキシコ、ブラジル、カナダなどで事業投資を積極展開した。そうした効果も加わって、純利益は05年度329億円、06年度399億円、07年度391億円(15カ月決算)と拡大を続けた」
――売上高は10年後の14年度が2兆4200億円、24年度は2兆1900億円と伸び悩んでいる。
「14年11月に100%子会社のメタルワン建材と三井物産スチールの建材・スクラップ事業を統合し、折半出資による三井物産メタルワン建材(現エムエム建材)を設立した。国内建材ビジネスが連結子会社から持分法適用会社になって連結売上高対象から外れた。同様に19年4月に住商メタルワン鋼管を設立した。国内鋼材価格の上昇を背景に売上高は20年度以降も2兆3000億円規模を維持したが、24年度は国内外の鋼材価格下落と需要停滞が響いて2兆2000億円を下回った」
――純利益は14年度が227億円、24年度は288億円。
「米リーマン・ショックによる深刻な影響を受けつつ、PMIによる収益構造改革の成果を引き出し、08年度206億円、09年度105億円と一定の利益を計上することができた。10年度は188億円に一部回復し、11年度も144億円と持ち応え、12年度以降は概ね200億円台の利益を維持。コロナ禍の20年度は66億円まで落ち込んだが、21年度281億円、22年度415億円、23年度350億円、24年度288億円で、市場環境の変動による影響はあるが、総じて稼ぐ力は高まってきている」
――24年に「パーパス」を設定し、「2030年のあり姿」を描いた。
「世界中の『つくる』をつなぎ、価値創造を追求し続けることで、ものづくりの可能性を広げる――というパーパスの実現に向けて、2030年のあり姿を『課題解決力ナンバーワン』と設定した。その第1フェーズとなる3カ年の『シン・経営計画2027』を今年度よりスタートさせた。コンセプトは『シンカ』で、『深化・進化・新化』という3つの意味を込めている。既存の強みを深掘りし、高機能・高付加価値を創出しながら、新たな領域にも挑戦していく」
――3カ年計画では、事業ポートフォリオの変革を通じた成長を追求する。
「重点領域とレイヤーという二つの軸で事業ポートフォリオを高度化していく。産業・市場の視点から、インフラ・建設、モビリティ、GX・エネルギー、新成長領域の4つを重点領域に位置付けた。一方、既存ビジネスの『深化』をレイヤー1、機能拡張による『進化』をレイヤー2、新規ビジネスへの挑戦である『新化』をレイヤー3と定義。重点領域とレイヤーの二軸を掛け合わせることで、従来の商品軸では捉えきれなかった本質的な課題やニーズに対応し、より高付加価値で高収益な事業ポートフォリオへの変革を通じて成長を実現していく」
――国内戦略は。
「自動車関連や建材分野はじめ優良な顧客基盤がメタルワングループの強みの一つ。今後も国内ナンバーワンの鉄鋼総合商社としての自負を堅持し、産業課題の解決に注力していく。人口減少によって、ピーク時に8000万トン規模だった鋼材消費が将来的に4000万トンを下回る可能性があり、人手不足やコスト上昇といった課題も深刻化している。株主である三菱商事や双日が国内に強固なネットワークを展開しており、メタルワングループの専門性と株主のネットワークを組み合わせ、課題解決力ナンバーワンの信頼を勝ち取っていく」
――薄板流通ビジネスにおける課題解決に向けて、質への転換を加速している。「自動車産業における電動化・軽量化・高機能化といったメガトレンドは、新たな成長機会と捉えているが、鉄鋼メーカーが先行して生産設備の構造改革を進める中、鉄鋼流通業界も協調領域と競争領域を明確に整理し、設備投資や合理化を進める必要がある。設備更新や労働力の課題が目の前に迫っているが、商社系、オーナー系のコイルセンターがそれぞれ更新投資を実施すると設備過剰となり、そうした投資コストが需要産業の競争力低下を招くことになる。こうした中、メタルワングループの五十鈴の子会社、五十鈴東海が、同じグループ会社の浜松鋼板加工の全株式を取得した。五十鈴グループが保有するコイルセンターの操業技術や経営ノウハウを活用し、相乗効果を追求していく。まずはメタルワングループ内で再編・最適化を進め、中期的な視点では系列を超えた、共同投資、設備共有、地域統合などの協業を視野に課題解決に取り組んでいく」
――メタルワン特殊鋼とメタルワン鉄鋼製品販売を合併する。
「普通鋼と同様に線材・特殊鋼の市場環境は急速に変化している、両社の専門性と営業ネットワークを融合し、部品需要を起点とした川上から川下までの流通・加工機能を構築していく。併せてデジタル化によるリーンなオペレーションの実現や、一次商トップシェアを活かした二次製品・部品領域へのシフトを推進していく」
――海外戦略は。
「海外においては、通商リスクの高まりを背景に分離・分断・分散といったサプライチェーンの再構築が進み、いわゆる地産地消型ビジネスモデルへのシフトが加速する。中国からの鋼材輸出による影響も短期間で収束するとは考えにくい。既存の事業投資先を軸に、両株主のネットワークも活用しながら、グローバルからローカルへの転換を推進。市況に左右されるビジネスへの依存度を相対的に減らし、より付加価値の高い事業への転換を図っていく。イタリアの変圧器コア・メーカー、ラゴアへの投資は、現地市場に深く根差したインサイダー型ビジネスを進化させ、その知見を横展開していくのが狙いだ」
――広い事業基盤を持つ北米戦略を。
「世界最大のデータセンター市場である米国は、生成AIの普及を背景に急速な需要拡大が見込まれる。三菱商事が米国のデータセンター事業に本格参入しており、建設鋼材や資機材のサプライチェーン構築などで連携するチャンスが大きく広がっている。エネルギー分野においても両株主との幅広い連携が可能であり、投資機会を探っていく」
――インドも事業基盤を持つ。
「インドは世界最大の人口を背景に、安定したモディ政権のもと鉄鋼需要の拡大が期待される。現在は自動車や建機分野を中心に外資系企業が強い影響力を持っており、既存の顧客基盤を活かし、現地企業とのパートナーシップを通じて着実に需要を取り込んでいく。インドは地政学的にも中東・アフリカ市場へのアクセス拠点としてのポテンシャルを備えており、輸出基地としての機能強化も視野に入れ、広域戦略を推し進めていく」
――事業投融資のスタンスを。
「世界レベルでサプライチェーンが再構築される中、持続的成長を果たすための事業投資を積極展開していきたいと考えており、各事業部の新規案件に伴走するコーポレート部門を新設した。投資候補をロングリストとして管理し、体系的な進捗管理を行っている」
――再生可能エネルギー分野では、波力発電開発に取り組むグローバルエナジーハーベスト社への第三者割当増資を実施した。
「波力発電の社会実装に向け、バリューアップや量産化体制の構築を強化し、実用化を目指している」
――国内外の事業ポートフォリオについて。
「売上収益は海外6割、国内4割と逆転している。それぞれを伸ばすかたちで、高付加価値と高機能を収益拡大に結びつけていきたい」
――メタルワンとして事業領域を拡大する考えは。
「取引先からの期待、社員の夢や希望などを受け止めつつ、株主会社における事業構想も踏まえながら、臨んでいく」
――中長期ビジョンを実現するための「人財ポートフォリオ」の拡充も必要。
「約700人でスタートした単体の社員が1000人規模になっている。株主会社からの出向者が約3割を占める期間が長く続いたが、メタルワン入社の社員が8割を超え、営業ラインの課長職にも就いている。キャリア採用も続けており、専門性やバックグラウンドが多様化し、事業ポートフォリオの変革に対応できる態勢は整いつつある」
――採用計画は。
「25年度、26年度は新卒・キャリア合わせて50人規模で採用する。初任給は30万5000円まで引き上げているが、優秀な人財を採用し、活躍し続けられるよう、報酬制度の定期的な見直しを行っており、足下は来年4月の改訂を予定している」
――連結1万人規模で、海外の現地法人を含めグループ会社が100社ある。
「単体、グループ会社の社員の育成が持続的成長に直結する。最大の財産である 『人』への投資が不可欠であり、様々な研修制度を設け、内容の充実も図っている。中長期ビジョンの実現に向けて、従来の延長線ではない、より大胆な事業創造を目指す風土を醸成し、モチベーションとスキルを高める目的で、事業構想大学院大学に依頼し、『事業構想人財開発プログラム』を昨年12月に開始した。選抜された13人が8か月間にわたって約100時間のプログラムを受講し、社会課題を基点とした構想力と発想力を体系的に習得し、新規事業の立案につなげていく」
――株主会社との人財交流は。
「総合商社の強みは、幅広い事業に関わる人財の集団であり、海外赴任時に三菱商事の現地法人や支社店、双日との情報交換も行いながら効果的な交流を行っている。コロナ禍で中断していたトレーニーの派遣も再開している」
――メタルワン入社社員の登用については。
「メタルワン入社の社員に経営のバトンを渡し、2030年頃には執行役員を輩出できるよう、適材適所での登用と育成を強化していく」(谷藤 真澄)














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