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鉄スクラップ 東アジア市場、07年も活況 
日本産手当て一層拡大
韓国、現代製鉄など設備増強目白押し/中国、総輸入量、05年並みに回復へ

日刊産業新聞 07/02/15

 東アジアの鉄スクラップ市場が沸騰している。昨年、3万円(トン当たり)時代に突入した市場は、2007年も韓国と中国の需要拡大を背景に強気の展開が続きそうだ。とくに価格決定権を事実上握る韓国は、新規電炉の導入と既設電炉の再稼働や拡充で新たに200万トン近く需要が増加する可能性があると指摘されている。昨年の鉄スクラップ輸入では、主要相手国のうちアメリカ(前年比50%減)、ロシア(同40%減)が減少し、日本が20%弱の増加を記録するなど日本シフトを強めている。年間の輸入量は338万トンに達しており、日本の全輸出量の50%近くを占め、07年もシェアが拡大する方向にある。中国は、06年は輸入量が半減し、538万トンに低下した。日本のシェアは50%強。中国鉄スクラップ協会(CAMU)によると「07年の国内需要は8000万トンに増加し、輸入は05年並みの1000万トンに戻る」とされている。最大の輸出国となっている日本は、07年も韓国、中国向けの数量が増加する可能性が高い。

■最大の変数・韓国、日本は輸出基地

  日本の06年の国内発生鉄スクラップは、11月までの累計で推定4644万トン。輸出量は、通関統計で暦年の数字が確定しており、765万トン、前年比1・1%の微増。国別では、韓国向けが338万トン、同17・6%の増加。中国向けは20%減の276万トン。両国向けで全体の80%を占める。

  日本の主要な輸出先である韓国の調達姿勢は、明確に日本を向いている。

  もともと韓国は、ロシアとアメリカ西海岸での調達が主流だった。しかしアメリカ市場全体がトルコを中心とした欧州向けにシフトしていることと価格上昇、さらにはカーゴベースの調達で小回りが利かないことなどから、韓国電炉は敬遠気味。ロシアは、国内需要の拡大から輸出余力が減っている。代わって、日本産が高い評価を受けて、増加している。 韓国鉄鋼協会の調べでは、06年の鉄スクラップの国内発生量は、1481万4000トン。前年比8・4%増加した。輸入は579万3370トン、同24・3%の減少。輸入相手国は、06年で大きく変化した。11月までの累計実績をベースにした数字であるが、アメリカからの輸入は79万トン、前年比48%減。ロシアが95万トン、同40%減。これに対し、日本からの輸入は311万トン、同21・6%増(11月累計)と日本のウエートが高くなっている。

  07年は、さらに増加する。主要な大手電炉メーカーは、自動車・造船を主体とした国内需要の増加を背景に、増産の姿勢が強い。現代製鉄、東国製鋼、POSCO特殊鋼(旧昌原特殊鋼)、世亜べスチールなどが輸入ソースとして日本をにらんでいる。年間のスクラップ消費増は、200万トン近くに達する。

■現代製鉄は日本へ再シフト

  韓国の個別の電炉メーカーの動きを見ても明確。最大手の現代製鉄は06年で推定980万トン弱の鉄スクラップを購入した。このうち国内での調達が750万トン、輸入が320万トン。輸入鉄スクラップのうち日本産が59%、190万トン。残りがアメリカ、ロシア。唐津工場の熱延A地区工場の第2電炉が昨年末から再稼働しており、07年は新たに100万トン以上の設備能力が加わった。

  鉄スクラップの購入増は必至。このため新たに納入業者の拡充に乗り出している。既存の納入業者に加え、年間3000トン以上の扱い実績とヤード保有、2年以上の営業実績などを条件に、納入業者を募っている。海外業者も対象に入っているようで、輸入対応策としても機能している。

  特殊鋼メーカーのPOSCO特殊鋼は、既設の100トン電炉の改修を昨年実施。さらに現在鉄スクラップヤードの拡充工事を進めており、在庫能力を現行の10万トンから15万トンに拡大させる。4月からの稼働で、輸入鉄スクラップへの対応力は高度になる。

  世亜ベスチールは、80トン電炉3基体制を昨年確立し、日本からの鉄スクラップ定期輸入に乗り出している。

  鉄筋メーカーの大韓製鋼は、今年中に80トン電炉を導入する。すでに不定期に日本産鉄スクラップの小口輸入を実施しており、新電炉が稼働すれば、輸入拡大の可能性が高い。 中期の問題として東部製鋼の新電炉熱延工場計画も、浮上している。加工母材のホットコイル調達問題から検討されている。牙山湾地区に大型電炉2基を導入し、300万トンのホットコイル工場を建設する。最終決定ではないが、近く結論が出る。これが決まると鉄スクラップの需給関係は、さらに大きく変わる。

  高炉のPOSCOの鉄スクラップ購入も、微妙である。鉄源対策から相対的にコストメリットの出てきた鉄スクラップ購入を強化。日本からは定期入札でシュレッダー主体の購入を行っている。これに加え昨年末からプレス屑の購入を開始している。生活発生型のプレス屑は、日本での発生増が顕著である。

■中国は再仕切り

  中国は、05年で輸入鉄スクラップが初めて1000万トンを超した。しかし06年は、538万トンに半減した。国内の電力不足と小型電炉の廃棄などの動きが背景にある。もちろん300ドル台に上昇してきた海外鉄スクラップ価格が敬遠されたということもある。日本からの輸入は、276万トン、前年比20%減。しかしシェアは、半分強であり、日本への依存度は高い。

  中国鉄スクラップ協会(CAMU)は、07年の中国の鉄スクラップ需要を8000万トンと推定している。このうち輸入が1000万トンとしている。50%程度増加する。鉄鋼製品の国内蓄積量が少なく、景気動向が良くても先進国のような発生増は期待できない。需要増は当面、輸入増で対応するというシナリオである。

  アメリカは国内需要増と欧州シフトの強化で、アジア向け輸出を低下させる方向が、07年も続く。ロシアは、国内景気回復でさらに輸出が減る。ロシア鉄スクラップ加工協会(KSLP)の見通しでは、07年の輸出は50%減になるとしている。年間100万トンを割る事態も十分予想される。

  中国が今年1000万トンの鉄スクラップを輸入するということになれば、日本産が主要な対象になるのは確実。日本の鉄スクラップ市況の形成変数は、明確に海外にある。

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