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縮小する鉄スクラップ市場 生き残りをかけて/上
需給変化に募る危機感/中韓自給化へ 新市場開拓を模索

日刊産業新聞 12/09/26


 日本の鉄スクラップ市場は国内の需給双方が縮小、あるいは頭打ちという現状にある。扱い数量の落ち込みで、「以前の良い時のように待っていてモノが入り、出ていく状況ではすでになくなっている」とヤード経営者は危機感を募らせる。

 国内鉄スクラップ需要は、一時の年間4000万トン規模から3500万トン規模に縮小している。2000年代に入り緩やかに増加してきた需要(製鋼向け消費量)は、07年の4503万トンをピークに減少。リーマン・ショックの影響が大きかった09年は3323万3000トンまで縮小し、以後10年度3898万8000トン、11年度3662万7000トンとやや戻したものの、往時のような高い水準は望めなくなっている。

 ■国内鉄スクラップ消費は頭打ちへ

 国内消費の落ち込み要因は主に電炉生産の減少と、高炉の鉄スクラップ購買の減少だ。11年度の製鋼向け鉄スクラップ需要は10年度比236万1000トン減。電気炉向けが2646万1000トンで88万トン増となったが、転炉向けが1016万6000トンで324万トン減だった。

 粗鋼生産の減少と鉄スクラップ配合比率の低下により、ピーク時に月間約40万トンに達していた高炉メーカーによる市中鉄スクラップ購買は昨年半ば以降急速に減少、現在では月間約7万トンの水準に止まる。さらに高炉メーカーが構内発生スクラップを自社系列の電炉メーカーに供給するケースもあるなど、国内の需給構造が変化してきている。

 メーカー再編の動きも影響大。今年4月にはJFEスチールがグループ普通鋼電炉メーカーの大型再編を実施した。10月には10月には新日本製鉄、住友金属工業の経営統合も控えている。メーカー再編は鉄スクラップ業者にとっても販路の縮小など、合理化、コストダウンによる影響を避け得ない要因と指摘されている。

 ■存在感を増す海外市場

 国内の消費拡大が見込みにくい中で、日本産鉄スクラップの向け先は鉄鋼生産が増加する海外に向く。鉄スクラップ輸出は国内消費の減少に対する需給バッファとなってきた。12年度の日本からの輸出は月間70万トン前後の高い水準を維持しており、09年度以来となる年間800万トン台の高いペースとなっている。

 日本産鉄スクラップの受け皿となってきたのは韓国と中国だ。11年度実績596万6000トンのうち、韓国向けが325万6000トン、中国向けが253万4000トン。日本からの輸出の9割超を受け入れてきた両国だが、粗鋼生産量の増加と鉄源消費の拡大を背景に、鉄鋼蓄積量が拡大、鉄スクラップ自給率が上昇する変化が見られる。  現在最大の仕向け先となっている韓国の粗鋼生産量は約7000万トン規模で、電炉シェアは約4割。海外からの鉄スクラップ輸入は年間800万トン水準にある。製鋼能力の増強もあって、自給化の時期は当初考えられていたより遅れているが、20年前後には自給化に向かうとみられている。

 中国については経済成長と同様に粗鋼生産拡大の鈍化も指摘されるものの11年の6億8000万トンから、20年には8億トンに達するとも言われる。鉄鋼蓄積量は現在の50―60億トンから15年には100億トンへ倍増し、鉄スクラップ発生量も年間1億トンから2、3億トン水準へ増加する可能性が指摘されている。現在1割程度に止まる電炉生産比率も鉄鉱石、原料炭のコスト事情や環境問題への対応という側面から増加が見込まれ、転炉鋼でも鉄スクラップ配合率が上昇していくとみられる。

 韓国や中国で自家調達が進めば、国内で余剰となった日本産鉄スクラップの新たな受け皿が必要になってくる。また将来的には両国の鉄スクラップの一部は輸出に向くと見られ、日本の競合相手となる可能性もある。

 ■新たな展開を求めて

 日本産鉄スクラップの新たな消費地として期待されているのは、東南アジア・インド方面だ。東南アジア地域の粗鋼生産量は現在1700万トンだが、今後の生産増で20年までに2500万トン水準が見込まれている。同時に「メタルスクラップの使用量は今より500万トン程度伸びる」(商社)との予測もあって、商社や大手ヤード業者では三国間貿易や、こうした市場への展開を模索し始めている。

 ただ一方には、一般中小ヤード業者の「個社単位での対応には限界がある」との思いも見える。国内産業の低迷は鉄スクラップ需要の減少とともに、供給元の発生量の減少にもつながっている。「新たな市場や付加価値による需要開拓は急務」(ヤード業者)としながらも、競争による仕入れコスト上昇、収益環境の悪化など、新たな展開に踏み切りにくい現状がある。(鉄スクラップ特別取材班)

※続きは12年9月27日付に掲載しました。

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