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創刊70周年特別企画
電炉・鉄スクラップ業界の課題と展望/鉄鋼・座談会 <中>

「電炉構改」進め競争力を

日刊産業新聞 06/04/12

座談会<上>  座談会<中>  座談会<下>
出席者:
普通鋼電炉工業会猪熊研二会長(合同製鉄社長)
高島成光副会長(共英製鋼会長兼CEO)
日本鉄リサイクル工業会鈴木孝雄会長(鈴徳社長)
中辻恒文副会長(中辻産業社長)
司会:
産業新聞社青木廉典編集局長
世瀬義久企画編集局長

 司会=電炉業界の現状についてどう思われますか。

猪熊「需要見合いの生産、販売という考え方が浸透している。電炉業は大半の会社が93年から7年連続で赤字が続いた。バブル崩壊から建設投資額が相当な勢いで縮小したことが影響した。需要が減り、販売数量が減少するなか、少ないパイを取り合う環境が続いた。需要見合いの生産、販売に収斂(しゅうれん)しつつある時、中国の急成長が訪れ、製品需給はタイトになり販売単価が大幅に上昇した。鉄スクラップ価格も上昇したが、製品価格の上げ幅はそれを上回った。このため電炉各社の経営は安定し、鉄スクラップ価格の乱高下に左右されなくなった。また、以前は電炉メーカー同士で鉄スクラップを取り合い、価格の乱高下に拍車をかけた。入ってこない鉄スクラップを集めるため購入価格を値上げし、高い鉄スクラップで製品を造ったとしても、製品を安売りすることと同じだ。今では、鉄スクラップ価格が上昇している時は、我慢して減産するという風潮になった」

  司会=鉄スクラップ業界からみた電炉業界は。


鈴木「『羨ましい』という言葉に尽きる。今まで電炉メーカー各社は事情が違うこともあり、なかなか行動を共にできなかった。猪熊会長を中心とした普電工首脳陣のリーダーシップによるところが大きい。また、電炉メーカーは品質管理、コスト、デリバリーなど改善努力を行ってきたため、海外から安い汎用品が簡単に入らなくなった。このような環境は今まで歴史上なかったこと。鉄スクラップ業界も電炉業を見習うべきだ。鉄スクラップ業者は全国に大、中、小入り乱れている。00年以降は各社とも業績が好転したため、設備投資が活発化しており過剰設備の上塗りをしている」

  猪熊「電炉業界は今まで莫大な授業料を払ってきた。加えて、メーカー各社は生産量の減少と製品価格の下落の相関関係がわかった。月間3万トンクラスの電炉メーカーで考えると、製品価格をトン1000円値下げした場合と、生産量を月間5000トン減らす場合とが見合う。このため、メーカー各社は生産量を減らし、販価を維持する方が得策との認識に至った。メーカーは購入する鉄スクラップ量が減少することで、鉄スクラップの需給が緩和し、鉄スクラップ価格が下落する可能性が出てくる。逆に、製品価格を下げて一生懸命生産すると、鉄スクラップ価格は上昇し収益が悪化する」

  高島「過去の経験則から言うと、現在のような好況が2年、3年と続いたことはなく、今の好業績が過去最長になるのではないか。逆に不況は長く、74年から78年にかけて40カ月連続で赤字を出したこともあった」

  鈴木「鉄鋼メーカーがどれぐらい授業料を払ったかというと、新日本製鉄は最盛期の従業員が6万人近くいたが、今は1万5000―1万6000人と4分の1まで減少している」

  猪熊「1970年の富士、八幡製鉄合併時には8万人いた。同社は過去10年間で約9000億円の合理化を行った。今の利益は合理化効果の半分ぐらいしか上がっていない。合同製鉄については、過去10年間で1000億円合理化した。余剰になった人材、設備などを削減した」

  高島「電炉業では企業が保有する社員寮や保養施設も少なくなっってしまった」

  司会=電炉業界の将来についてどうみられていますか。

  猪熊「今のような好調は長続きしないだろう。懸念しているのは輸入品の問題。現在はデリバリーを中心としたサービスの差が輸入障壁となっている。今後は、本当の意味での競争力をつけられるかが将来にわたっての課題となってくる。そのためには構造改革を着実に進める必要があり、電炉メーカーは大規模化して国際競争力をつけるべきだと考えている。とくに、小規模な電炉メーカーが多い関東地区や需要の少ない地方でその必要性がありそうだ」

  高島「関西地区も同じこと。電炉品の需要は年々落ち込んでおり、これから先は下がることはあっても上がることはないだろう。構造問題のマグマもたまる一方で、従業員や株主に対する責任をどこまで感じるのかという見地に立つと、どこかで解決しないといけない時期が来る。その時に大人の解決ができたらいいと思う」

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