2026年4月24日
新社長に聞く/日本高周波鋼業/岸 幹根氏/大同特とのシナジー創出/工具鋼・軸受鋼移管で側方支援も
2月2日付で大同特殊鋼グループの完全子会社となった日本高周波鋼業に、同日付で岸幹根氏が新社長に就任した。大同特殊鋼とのシナジーの発揮に向けた取り組みや、今後の戦略、所長を兼務する富山製造所について、大同出身の岸社長に聞いた。
――社長就任と新体制への思いや意気込み。
「現場の強みや弱みを肌で感じ、大同とのシナジー創出のための課題や施策を、見定めて実行に移す。トップの想いをしっかり伝えるため現場との対話を大切にしていく」
――日本高周波鋼業への印象は。
「毎朝、全員が体操を行い、『ご安全に』のあいさつも浸透していて、従業員全員が規律よく、ルールを遵守する文化を感じる。一方で富山製造所は故障率が高く、安定操業を継続して需要家に高品質な製品を供給し続けるためには、老朽更新を含めた設備投資を推進しなければならない。設備や取り組みなどに対し、ボトムアップに近い形で課題を抽出し、それを解決するための施策を立て、絶対に達成していくというステップを踏んでいきたい」
――新体制となって変化すること、大同特殊鋼グループにおける立ち位置を。
「大同特殊鋼と日本高周波鋼業の3カ年の中期経営計画(24年-26年)の3つの行動方針は『ポートフォリオの変革』『経営基盤の強靭化』『ESG・SDGs経営の高度化』とすべて共通で、新体制となっても大きな変化はない。ただ、取り組み方は大きく変わる。例えば大同渋川工場は高合金の拡大で、大同星崎工場は高合金やチタン圧延、二次加工拡大で、それぞれ工具鋼や軸受鋼の生産に余力がない。グループ企業として、工具鋼や軸受鋼など側方支援すべき立ち位置にあると考えている」
――グループ連携の取り組みを。
「2月から、シナジー創出のための現状把握と情報交換を、両社の『商流・物流』、『製造』、『管理』の3チームで開始した。商流・物流は販売の情報共有などを、製造は各拠点の得意不得意の洗い出しに着手。26年上期で現状の把握と戦略の方向性を決め、下期で実現可能性を検証し、27年以降シナジー効果発現を目指す。すでに原料の共同調達を開始するなど、早速効果が出始めたものもある。生産性改善のための設備投資や設備保全の実力向上へ向けた検討については、大同プラント、大同マシナリーの協力も受けながら実施する。グループを離れたが神戸製鋼所の軸受鋼原線を伸線する二次加工は、引き続き受託を行う予定」
――足元の需要動向を。
「主要3品目(工具鋼、特殊合金、軸受鋼)ともベースの需要が弱く、26年度も反転は見込めない。自動車向け金型需要は低位横ばいで、アルミサッシ向けは住宅着工件数の低迷が影響している。一方、データセンター向けハードディスク需要は活況だ。底を脱しつつある半導体に加えて医療やエネルギー、インフラ、防衛など新規需要開拓も進めたい」
――前期(26年3月期)の見通しを。
「前々期に減損を行ったこともあるが、前期は3期ぶりの黒字化を達成する見通しだ。コロナ前から数量が4割近く減る中で、コスト低減やポートフォリオなどの改善を進めた結果と認識している」
――27年3月期の展望は。
「需要構造の大きな変化を期待できず、需要は前期並みとみている。建設や造船、プラント、産業機械向けは人手不足が尾を引くだろう。自動車金型は、新型車需要で26年下期からの良化を見込んでいる。前期を上回る利益を確保できるよう、再生産可能な価値を認めて頂けるようなコスト改善や価格転嫁、製造実力の向上、ポートフォリオの見直しも進めていきたい」
――所長を兼務する富山製造所の生産状況を。
「生産能力に対する稼働率は7-8割で、25年度は設備トラブルが多かった。製造現場の人手不足で稼働率が引き上げられないことも影響している。今後は人の採用を強化しつつ、日本高周波と大同の各製造拠点間の交流などで情報の共有、改善活動推進につなげたい。一時的に大同からの人材派遣も検討する」
――本年度を最終年度とする、3カ年の中期経営計画の進捗は。
「現中計の最終年度売上高目標(特殊鋼事業のみ)は318億円としていたが、本年度の売上高は265億円と計画は未達だ。ベース需要の大幅減を、成長分野の新規需要開拓でカバーしきれていない。設備投資は60億円としていたが、実際には35億円にとどまる。赤字が続き投資を抑えてきたことが影響している」
――現中計は「成長分野の新規需要開拓」に取り組んできた。
「24年度以降、営業部内に技術サービス担当を2人増員し活動に取り組んできた。順調に開拓してきたものの、エネルギー分野の回復遅れなどで最終年度は目標対比で6割程度にとどまる。今期も引き続き注力する」
――海外市場はどうか。
「当社の輸出比率は約25%で、東南アジア向けのステンレス鋼が多い。新規アイテム拡販についても海外の需要を積極的に捕捉していきたい」
――次期中計の構想は。
「現中計は新しい鋼種を拡販するポートフォリオ改革を進めているが、今後は大同とのシナジーを出すためのポートフォリオ改革も加わる。例えば大同の渋川工場や知多工場から、工具鋼や軸受鋼を数千トン規模で移管することもアイデアとしてはある」
――子会社のカムスとの連携について。
「高周波と大同間のシナジー創出を目的とした商流・物流チームの中で、カムスと大同DMソリューションの間で現状把握をこのほど開始した。それぞれの強みと弱みを補うことや、今後のありたい姿について、顧客の声も聞きながら進める」
▽岸幹根(きし・みきね)氏=94年東北大大学院工学研究科金属工学修了、大同特殊鋼入社。16年星崎工場副工場長、19年知多工場副工場長、22年鋼材生産本部星崎工場長、23年4月執行役員生産本部星崎工場長、同年11月執行役員CQM部長、25年執行役員経営企画部長、26年2月現職。大学院生時代は鉄鋼の研究を担当。製鋼畑が13年と長く、技術室長、人事企画室長など管理畑の経験も。人事企画室時代は「人の観点からグループ各企業を見る仕事で、人を軸に考える貴重な2年間だった」と振り返る。初の東京・富山への赴任。週末は都内の銭湯巡りや、富山製造所付近の散歩でリフレッシュする。日進月歩が信条。69年9月10日生まれ、愛知県出身。(北村康平)
――社長就任と新体制への思いや意気込み。
「現場の強みや弱みを肌で感じ、大同とのシナジー創出のための課題や施策を、見定めて実行に移す。トップの想いをしっかり伝えるため現場との対話を大切にしていく」
――日本高周波鋼業への印象は。
「毎朝、全員が体操を行い、『ご安全に』のあいさつも浸透していて、従業員全員が規律よく、ルールを遵守する文化を感じる。一方で富山製造所は故障率が高く、安定操業を継続して需要家に高品質な製品を供給し続けるためには、老朽更新を含めた設備投資を推進しなければならない。設備や取り組みなどに対し、ボトムアップに近い形で課題を抽出し、それを解決するための施策を立て、絶対に達成していくというステップを踏んでいきたい」
――新体制となって変化すること、大同特殊鋼グループにおける立ち位置を。
「大同特殊鋼と日本高周波鋼業の3カ年の中期経営計画(24年-26年)の3つの行動方針は『ポートフォリオの変革』『経営基盤の強靭化』『ESG・SDGs経営の高度化』とすべて共通で、新体制となっても大きな変化はない。ただ、取り組み方は大きく変わる。例えば大同渋川工場は高合金の拡大で、大同星崎工場は高合金やチタン圧延、二次加工拡大で、それぞれ工具鋼や軸受鋼の生産に余力がない。グループ企業として、工具鋼や軸受鋼など側方支援すべき立ち位置にあると考えている」
――グループ連携の取り組みを。
「2月から、シナジー創出のための現状把握と情報交換を、両社の『商流・物流』、『製造』、『管理』の3チームで開始した。商流・物流は販売の情報共有などを、製造は各拠点の得意不得意の洗い出しに着手。26年上期で現状の把握と戦略の方向性を決め、下期で実現可能性を検証し、27年以降シナジー効果発現を目指す。すでに原料の共同調達を開始するなど、早速効果が出始めたものもある。生産性改善のための設備投資や設備保全の実力向上へ向けた検討については、大同プラント、大同マシナリーの協力も受けながら実施する。グループを離れたが神戸製鋼所の軸受鋼原線を伸線する二次加工は、引き続き受託を行う予定」
――足元の需要動向を。「主要3品目(工具鋼、特殊合金、軸受鋼)ともベースの需要が弱く、26年度も反転は見込めない。自動車向け金型需要は低位横ばいで、アルミサッシ向けは住宅着工件数の低迷が影響している。一方、データセンター向けハードディスク需要は活況だ。底を脱しつつある半導体に加えて医療やエネルギー、インフラ、防衛など新規需要開拓も進めたい」
――前期(26年3月期)の見通しを。
「前々期に減損を行ったこともあるが、前期は3期ぶりの黒字化を達成する見通しだ。コロナ前から数量が4割近く減る中で、コスト低減やポートフォリオなどの改善を進めた結果と認識している」
――27年3月期の展望は。
「需要構造の大きな変化を期待できず、需要は前期並みとみている。建設や造船、プラント、産業機械向けは人手不足が尾を引くだろう。自動車金型は、新型車需要で26年下期からの良化を見込んでいる。前期を上回る利益を確保できるよう、再生産可能な価値を認めて頂けるようなコスト改善や価格転嫁、製造実力の向上、ポートフォリオの見直しも進めていきたい」
――所長を兼務する富山製造所の生産状況を。
「生産能力に対する稼働率は7-8割で、25年度は設備トラブルが多かった。製造現場の人手不足で稼働率が引き上げられないことも影響している。今後は人の採用を強化しつつ、日本高周波と大同の各製造拠点間の交流などで情報の共有、改善活動推進につなげたい。一時的に大同からの人材派遣も検討する」
――本年度を最終年度とする、3カ年の中期経営計画の進捗は。
「現中計の最終年度売上高目標(特殊鋼事業のみ)は318億円としていたが、本年度の売上高は265億円と計画は未達だ。ベース需要の大幅減を、成長分野の新規需要開拓でカバーしきれていない。設備投資は60億円としていたが、実際には35億円にとどまる。赤字が続き投資を抑えてきたことが影響している」
――現中計は「成長分野の新規需要開拓」に取り組んできた。「24年度以降、営業部内に技術サービス担当を2人増員し活動に取り組んできた。順調に開拓してきたものの、エネルギー分野の回復遅れなどで最終年度は目標対比で6割程度にとどまる。今期も引き続き注力する」
――海外市場はどうか。
「当社の輸出比率は約25%で、東南アジア向けのステンレス鋼が多い。新規アイテム拡販についても海外の需要を積極的に捕捉していきたい」
――次期中計の構想は。
「現中計は新しい鋼種を拡販するポートフォリオ改革を進めているが、今後は大同とのシナジーを出すためのポートフォリオ改革も加わる。例えば大同の渋川工場や知多工場から、工具鋼や軸受鋼を数千トン規模で移管することもアイデアとしてはある」
――子会社のカムスとの連携について。
「高周波と大同間のシナジー創出を目的とした商流・物流チームの中で、カムスと大同DMソリューションの間で現状把握をこのほど開始した。それぞれの強みと弱みを補うことや、今後のありたい姿について、顧客の声も聞きながら進める」
▽岸幹根(きし・みきね)氏=94年東北大大学院工学研究科金属工学修了、大同特殊鋼入社。16年星崎工場副工場長、19年知多工場副工場長、22年鋼材生産本部星崎工場長、23年4月執行役員生産本部星崎工場長、同年11月執行役員CQM部長、25年執行役員経営企画部長、26年2月現職。大学院生時代は鉄鋼の研究を担当。製鋼畑が13年と長く、技術室長、人事企画室長など管理畑の経験も。人事企画室時代は「人の観点からグループ各企業を見る仕事で、人を軸に考える貴重な2年間だった」と振り返る。初の東京・富山への赴任。週末は都内の銭湯巡りや、富山製造所付近の散歩でリフレッシュする。日進月歩が信条。69年9月10日生まれ、愛知県出身。(北村康平)














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