――マーケティング・技術本部の役割は。
「R&Dセンター、MTC(モビリティテクノロジーセンター)、マーケティング部、技術戦略部の4組織を統括している。従来は研究開発が中心だったが、市場の要求を迅速に技術へ反映するためマーケティング機能を強化した。市場ニーズと技術シーズを結び付け、スピード感を持って新たな価値を生み出すことが本部の役割だ」
――現在、最も重視しているテーマは何か。
「最も力を入れているのはリサイクルだ。アルミ缶だけでなく、自動車や家電など幅広い分野で技術開発を進めている。アルミ缶は高いリサイクル率を維持しているほか、缶1本当たりの軽量化も進んでいる。こうした環境負荷低減にも当社の材料開発が貢献している」
――缶材以外ではどのようなリサイクル技術に取り組んでいるのか。
「空調メーカーとエアコン用熱交換器の水平リサイクル『フィン to フィン』リサイクルを進めている。熱交換器はアルミフィンと銅管で構成されるため、分離後も微量の銅が残るが、一定濃度以下であれば再び成形加工できる技術を確立した。自動車分野でもPIR(工程内スクラップ)を再び自動車材へ戻す取り組みを進めている」
――新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業で進めるミックススクラップ活用への取り組みは。
「アルミの資源循環を拡大するには、使えるスクラップを増やすことが重要だ。現在は鋳物と展伸材の分離のための高度選別技術の研究開発に取り組んでいる。当社は不純物のシリコンの無害化を担っており、今後はミックススクラップから展伸材を高精度に回収する画像選別技術の確立を目指している」
――NEDO事業で開発を進める縦型高速双ロール鋳造技術の現状と今後の展望。
「縦型高速双ロール鋳造は、生産性が高く、アルミを急速に冷却・凝固させながら直接板材を製造する技術だ。鉄やシリコンなどの不純物による強度低下や耐食性への影響を抑えられるため、これまで展伸材への利用が難しかったリサイクル材を、より多く活用できる可能性がある。2024年にはNEDO事業の一環としてR&Dセンターに実験機を設置した」
――マグネシウム使用量削減への取り組みは。
「急冷技術を活用し、鉄などの元素をうまく利用することで、マグネを多く使わなくても同等の強度を得られる可能性がある。1000系に近い合金で5000系並みの強度を実現することも視野に研究を進めている」
――自社ブランド「ALmitas+(アルミタス)」の狙いを。
「当社独自の技術や特性を分かりやすく伝えるためのブランドだ。審美性・意匠性(アルミって美しい)、効率性(アルミって伝わる)など8カテゴリーで展開している。認知度は徐々に高まっているが、まだ十分ではない。年間10件以上の新製品をブランドへ追加することを目標としている」
――今後重点を置く市場は。
「熱マネジメント、環境・エネルギー、ライフスタイル・ヘルスケアを重点分野としている。特にデータセンターのような発熱量が大きい分野では、アルミの熱伝導性を活かせる可能性が大きい。マーケティングと研究開発が連携し、新たな用途を広げていきたい」
――環境配慮型製品「ALmitas+SMART(アルミタス・スマート)」の手応えは。
「グリーン地金やリサイクル材などを活用し、二酸化炭素排出量を削減した製品に『SMART』を付けて展開している。引き合いは着実にあるが、価格に見合う価値を社会に理解していただくことが重要だ。今後もラインアップを充実させていきたい」
――新領域ではどのような可能性をみているのか。
「モビリティー分野では、自動車だけでなく、軽量性や放熱性を生かせる新たな用途を模索している。航空機に加え、ドローンなどの小型モビリティーでもアルミの可能性は大きい。単なる軽量材料ではなく、新たな機能を付加した材料を提案していきたい」
――AI活用はどこまで進んでいるのか。
「工場では危険行動や危険エリアへの立ち入りを検知する安全AIカメラを開発し、JR西日本との共創も進めている。品質や生産性向上にもAIを活用しており、製造現場のDXをさらに進めたい」
――生成AIはどのように活用しているのか。
「4月にビジネスプロセスDX推進部を設置し、全社で生成AI活用を進めている。間接部門では資料作成や情報整理などの効率化を進めており、技術者が新しい技術や製品を考える時間を増やすことにつなげたい」
――アルミ価格上昇に伴う他素材などへの置換をどう考えるか。
「アルミ価格が上がるほど、他素材や海外材との競争は厳しくなる。軽量性やリサイクル性、加工性など、アルミならではの価値を提案し続けなければならない。価格に見合う付加価値を提供することが、マーケティング・技術本部の重要な役割だ」
――今後の抱負は。
「アルミは何度でもリサイクルできる素材であり、その価値をさらに高めることが重要だ。画像選別技術への参画や福井製造所で導入したスクラップ処理設備への投資も、そのための取り組みだ。技術とマーケティングを一体で進め、リサイクルの高度化と新たな用途開拓を通じて、アルミの可能性をさらに広げていきたい」
(増岡 武秀)
















