人財戦略を聞く/電炉編/トピー工業/専務取締役/安原 優氏/中計、人的資本に30億円/DXなど社内講座・研修注力

人財戦略を聞く/電炉編/トピー工業/専務取締役/安原 優氏/中計、人的資本に30億円/DXなど社内講座・研修注力
 トピー工業は現行中期経営計画『TOPY Active & Challenge 2027』において人的資本に30億円を投じるなど、成長戦略の推進に向けて、人材を採用・育成・活用する独自のプラグラムを確立している。安原優・専務取締役(財務・総務・人事・リスクマネジメント管掌)に人材戦略を聞いた。

 ――人材についてどのように考えているか。

 「人への投資は成長戦略の重要な柱であると考えている。人は宝であるという思いを込めて、当社内では人材を『人財』という表現で統一している。日本は人口減少や少子高齢化で構造的に労働人口が減少しており、工場のオペレーターをはじめとする現業系スタッフだけでなく、エンジニアや営業、財務やDXなど専門人材を主体に採用が困難な状況が続くと覚悟せざるを得ない。成長戦略を実行するためには人材の確保や育成、定着支援に注力する必要がある。成長戦略実行のボトルネックが人材であるという認識に立つ。当社は2027年度を最終とする現行中期経営計画『TOPY Active & Challenge 2027』を策定・実行しているが、人的資本に30億円を投じることを決めた。地に足をつけながら挑戦を続けている」

――人的資本への投資について具体的に。

「『人財の確保・活用』『人財の育成』『働き方改革』の3つである。『人財の確保・活用』の一環として新卒採用を強化しており、来春入社で高専生が1人入社する。高専生は5年の学生生活を経て、大学編入を希望する学生が多く、採用するのは難しいが、OBが高専で出前授業を行い、鉄づくりなど講義するチャンスを得た結果、採用に結び付いた。またインドの大学生3人が来春入社する。グローバルな成長市場はインドであり、専門人材の確保に向けて長期的・計画的に取り組んできたことが実を結んだ。またインターンシップは少人数制で行い、エンジニアの採用で効果が出ている。このほか育児や介護関連の施策の拡充、ワークライフバランスの充実、プライム上場企業の平均を超える水準まで初任給を引き上げた待遇改善、介護などで退職した社員が復職するジョブリターン制度(アルムナイ採用)も開始し、社員の人脈を生かしたリファラル採用の数も増え、入社後の定着率も高い」

 ――中途採用も多い。

 「当社の特徴は中途採用が多い点。26年6月時点で全社員に占める中途採用比率は約30%。管理職の中途採用比率も約30%となっている。すなわち管理職になっている社員の3割が中途入社ということになる。これは新卒、中途などの採用区分を問わずに能力や識見、人格などをみて公平に登用している証左と考える」

 ――女性にとって働きやすい職場環境も醸成している。

 「ダイバーシティを推進するため、30年までに女性の管理職比率を10%以上にすることを目標に掲げ、26年3月末時点で7%程度まで到達した。子育てとの両立で、育児休業の取得率は女性が100%であるのに対し、男性は25年度実績で75・8%となっており、30年3月までに85%に引き上げる。このほか、配偶者の海外転勤に伴う休職制度をスタートするなど、多様で柔軟な働き方を支援しており、関連する新制度導入に取り組む」

 

――『人財の育成』は。

 「新卒者は入社後、4―7月を研修期間にあてるなど、時間をかけて丁寧に行っている。4月入社の大卒者は4カ月の立ち上げ研修を実施している。これを『トピー塾』と名付け、ビジネスマナーから自主管理活動に必要な改善手法まで演習を交えながら学ぶ。トピー塾を卒業したら、入社後2年間は配属先の先輩がチューターという形でフォローする。3年目以降は異なる配属先の先輩がメンターになり、指導する。手厚くフォローする仕組みを構築した結果、大卒入社後の離職率は3年以内に3割が平均と言われているが、当社は23―25年の平均で1・6%にとどまる」  「スキルアップに結び付く社内講座や階層別研修も行っている。24年度における社内講座の受講者は延べ1800人、研修時間は3万5000時間になった。1人当たり20時間程度になる。専門人材の育成でとくに力を入れているのはDX(デジタルトランスフォーメーション)である。デジタル情報を活用し、業務の変革や改革を実行できる社員を『DX人財』と定義し、社内講座を受講して試験に合格した600人をDX人財に認定した。階層別研修も工夫している。従来は昇格が決まっている社員を対象に階層別研修を行っていたが、近年は階層別研修を実施し、研修を通じて視座を高めた社員のみ昇格試験を受けるようにした。また、26年4月から社内公募制をスタート。人材が必要なポストを選定し、全社で公募する。手を挙げた社員がそのポストにマッチするかを、面談などを通じて判断する。始めたばかりの制度だが、社内における自律的なキャリア形成を促すもので、手応えを感じている」

 ――『働き方改革』についてはどうか。

 「働き甲斐を持つことができる風土や組織を醸成するなど社内環境の改善に向けて、社員満足度調査を24年まで行っており、そのフィードバックを各職場、各現場で行ってきた。社内の困り事や課題の解決に焦点を当てるワンチーム活動も展開している。ワンチーム活動には事業部や世代を超えたメンバーが集まり、会社を良くするためのアイデアを出し合う。会議を通じて互いに切磋琢磨するため、この活動が人材育成の場にもなっている。社内公募制もワンチーム活動の提案から生まれた。会社主導ではなく、社員が率先して自らの満足度向上に取り組み、必要に応じて会社に提案する風土が根付きつつある。一方、課長職以上の幹部社員を対象に株式報酬制度を実施し、株価を意識した業務遂行を促す。16年から社員満足度調査を実施してきたが、右肩上がりで、働き方改革も着実に前進していると手応えを感じている」

 「人材戦略は単に処遇や給与水準を高めれば良いというものではない。一丁目一番地は社員からみて夢のある会社、成長する会社であり、その中で自分も成長できる会社であり続けることが重要。このためには優秀な人材も必要。人への投資が成長戦略になるため、対話を重ねながら、引き続き人材基盤の強化に努めていきたい」

 ――どのような人材を求めているか。

 「世の中の変化が激しく、多様な人材が自分の能力を最大限に発揮することが大事。自律的に能力開発に取り組み、仕事を通じて成長したい人を求めている」

 ――社員構成比率を。

 「24年度で全社員の割合は男性8割、女性2割となっている」

 ――幹部候補生の育成についてはどうか。

 「経営者候補者としての資質向上を目的として、『トピー経営塾』を開いている。外部プログラムを導入したり、選ばれた社員が役員陣の前で新規事業などのテーマでプレゼンする。また多様な業務を経験させるため、出向という形でグループ企業に籍を置いて広い視野を身に付けさせたり、経営会議で議案を説明させ、経営への参画意識を持たせることも幹部候補生の育成プログラムに入れている」

 ――グループ企業の人材育成は。

「事業環境が変化する中、グループ全体で人材力を底上げし、シナジーを最大化するため、当社が企画する研修にグループ企業の社員も参加する、合同研修を23年度から始め、26年度に対象研修を拡大した。グループ企業の社員が相互理解を深めることで、新たな価値創造やイノベーション創出に繋げていきたい」

 ――留学制度はあるか。

「海外でのトレーニー制度があるものの、コロナ後は中断していた。海外に語学留学し、海外の拠点に勤務できるもので、再開を検討していきたい」(濱坂浩司)

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