――24年4月に開始した5カ年の第2次中計の途中で新たに新中計を立てた。
「24年1月に発生した能登半島地震を受けて、直近2年間の災害廃棄物処理支援事業が計画を上回って進んだが、この事業が一段落した。千葉県市原市での複数投資案件の遅れによる収益寄与時期のズレも生まれた。新たな中長期成長に向けて軌道修正を行う必要があると判断し、新中計を立てた。
別の角度の理由もある。これまで中計では温暖化対策や脱炭素を主な軸としてきたが、近年は経済安全保障の観点が加わり、事業を取り巻く環境が大きく変化した。政府も循環経済を国家戦略として位置付け 、高品位鉄スクラップなど再生資源の確保を重要課題に掲げている。こうした動きを受け、資源確保が世界的に重要性を増すなか、当社としても国内資源循環の強化に向けた方向性を中計に反映させる必要があると考えた」
――高品位スクラップを安定生産するための不純物除去技術や、選別プロセスの高度化に対する具体的な投資・開発方針は。
「国内外の鉄鋼メーカーは脱炭素化に向けて革新電炉の導入を進め、これまで高炉で生産してきた自動車用鋼板などへの活用を目指す動きが広がっている。その実現には高品質な鉄スクラップの安定供給が不可欠であり、当社が担う鉄スクラップの高品位化はますます重要な役割を果たす。
千葉県市原市に確保した約33万平方メートルの事業用地が有力な投資候補地で、いきなり大規模な設備を導入するのではなく、段階的にアプローチする計画。
自社の全拠点に一律で大型破砕機を導入するのではなく、地域の特性や得意分野に合わせて最適に配置している。不純物(トランプエレメント)である銅などの除去に対しては、各種センサー技術などの最新設備の導入を具体的に検討し、高品位化を推進していく。
足元は、既存拠点で製造する鉄スクラップの品位向上に向けて検証と分析を重ね、設備の改修について具体的な検討を進めているところ。例えば、鉄スクラップや産業廃棄物の処理、小型家電リサイクル、自動車リサイクルなど複数事業を展開する埼玉県の川島事業所では前処理用破砕機(プレシュレッダー)の増強と破砕機(シュレッダー)の入れ替えによって年間処理能力を従来の3万6000トンから6万トン規模へ拡大させた。また、2025年8月に稼働した壬生事業所は、破砕残さ物の高度選別・再資源化に特化した拠点。年間取扱数量4万8000トンの約半分を再資源化し、処理費の削減に貢献する。
さらに28年4月頃に千葉県で操業開始する予定の市原ダスト再資源化施設(仮称)によって、関東近郊のリバーグループで発生するシュレッダーダストの約50%を再資源化できるようになる見込みだ」
――スクラップ母材の集荷網をどのように維持・拡大していくか。「国内全体のスクラップ母材の発生量が減少傾向にあるのは間違いない。当社は数量のみを追うのではなく、品質に焦点を当てた戦略を展開する。鉄鋼メーカーの電炉シフトに伴いスクラップ需要は旺盛になっていくだろう。求められる高品位スクラップを安定的に大量生産できる体制を構築するとともに、それを実現するための設備投資を継続できる資金力を強みとして、他社との差別化を図る。
集荷網の拡大に向けては事業領域拡大を基本方針とする。既存の地域で事業を営む他社と単に競合するのではなく、パートナーシップ戦略を推進する。同業者・異業種を問わず、マイナー出資や業務提携などの柔軟な形を含めて広く連携する。提携先が集荷したスクラップを当社の高度な選別技術で高品位化し、より高い価値で鉄鋼メーカーへ納入することで、相互にメリットがある仕組みを構築する。
具体的には、比較的手薄だった中部地区以西での事業領域拡大や提携を進める。また発生量の多い首都圏から、需要地になっていく西日本や九州へ向けて船便を活用して効率的に運ぶ体制も構築・拡大していく」
――金属リサイクル分野でM&A・パートナーシップのターゲットになる地区・事業規模などの想定は。
「一定以上の収益規模を持つ企業が望ましいが、月間取扱量など特定の数字だけを見て限定しているわけではない。非鉄金属に強みを持つ企業や、特殊な選別・加工機能を持つ企業との協業は大きな相乗効果(シナジー)が見込める。また、垂直にサプライチェーンを拡大する連携も進めていく。
都市部では金属専門のリサイクル業者も多いが、地方では小型家電・粗大ごみ・産業廃棄物全般を幅広く扱う総合的なリサイクル業者が数多く存在する。こうした企業との連携やM&Aは非常に有効だと考えている。
対企業だけでなく、公民連携にも注力している。住民が処分に困る粗大ごみや不用品から金属資源を回収する取り組みなど、地方の困りごとを解決しながら資源を集荷する枠組み(スキーム)を広げる」
――鉄鋼生産が拡大するアジア圏などへの鉄スクラップ輸出や、現地拠点の設立といった海外戦略は。
「現時点で交渉が合意に達している国外案件はないが、機会があれば積極的に海外展開したいと考えている。東南アジアでの金属リサイクル需要に加え、欧州での一般廃棄物・産業廃棄物の分別・リサイクル市場など、世界的に事業機会が存在するのは確かだ。今は社外から持ち込まれた海外事業案件の精査や、現地の有力パートナーの選定について模索している段階。まずは30年頃までに国内での足場を強固にしつつ、現地パートナーとの協業を軸に、日系動脈企業との連携など海外戦略を具体化させていく。
特にアジア圏のレアメタルの回収などの事業については、他国に先手を取られてはもったいない。国内リサイクル業者のなかでも当社が担うべき事業だと捉えている」
――エネルギー価格高騰に対し、操業効率化や自社グループの再エネ活用など、製造原価を抑えるための具体的な施策は。
「電力コストの上昇は経営上の重大な課題だ。対策として、大きく3つのアプローチを進めている。(1)省エネ型重機の導入による操業効率化、(2)設備の組み合わせによるエネルギー効率の最適化、(3)自社グループ内での再エネ活用だ。
例えば(2)について、川島事業所では、前処理用破砕機を強化することで、メインの破砕機の負荷と消費電力を抑えつつ、事業所全体の年間処理能力を3万6000トンから6万トンへと大幅に向上させた。
(3)については太陽光発電設備の設置などを通じて自前電源を確保し、電力の価格変動リスクを低減。廃プラスチックなどを原料としたRPF(固形燃料)の製造・販売を通じたサーマルリサイクルの推進も原価抑制につながり、社としての収益にも寄与している」
――次世代自動車(EV)の普及により、使用済み自動車から発生するスクラップの質(銅含有量の増加など)やリサイクルプロセスは変わるか。「次世代自動車への移行により、従来のエンジン主体の構造からバッテリーやモーター、軽量化素材中心へと素材構成が変化する。結果としてアルミなどの非鉄金属の加工処理の需要が増えるだろう。
当社子会社リバーやデンソーなどが幹事機関として参画している自動車のサーキュラーエコノミーを推進する団体の『BlueRebirth(ブルーリバース)協議会』が昨年6月に設立したが、この協議会は使用済み自動車の自動精緻解体の実証実験に取り組んでいる。破砕前の段階で、部品ごとに事前解体・分別を行うことで、リサイクル率と回収素材の品位を飛躍的に高める取り組みだ。
自動車製造時の再生プラスチックの使用義務化などを盛り込んだ欧州のELV(使用済み自動車)規制などの例があるように、国際的に環境規制は厳格化している。自動解体や高度選別技術を駆使して高品質な再生素材をメーカーに還元する体制を整えていく。素材構成が変わっても、その変化に応じた回収・選別を行う能力が当社にはある」
――鉄スクラップ市況変動リスクに対する対策は。
「市況に左右されないベースとなる収益力を強化することが最重要だ。具体的には、資源リサイクル事業を担うリバーグループのリサイクル率(約94%)をさらに向上させ、これまで埋め立て処分されていた残さから非鉄金属やプラスチックを極限まで回収・商品化することで処分コストを削減する。
市況変動の影響を受けにくい新領域への事業拡大も進める。そのひとつが解体事業だ。老朽化した建築物や大型プラント、石油コンビナートなどの解体を自社で一貫して手がけることで、鉄スクラップサプライチェーンを連結し、加工・販売まで完結する垂直統合モデルを構築する。
市原の事業用地で新たに検討している蓄電池事業や、木質バイオマス・廃棄物を活用した日本初となる商業規模のグリーンメタノール製造事業など、金属以外の資源循環事業を多角的に展開する。合わせて大手メーカーとの資本・業務提携を通じた資源循環の枠組みを作り、安定した収益基盤を確立する」
――千葉県市原市の「TRE環境複合事業」や福島県相馬市の「相馬サーキュラーパーク」などで、産学官・動静脈の連携を進める。
「市原の大規模な環境複合拠点では、各種リサイクル施設を集約することによる物流コストの大幅な削減と管理の効率化が最大の相乗効果だ。拠点内には、カナデビア(旧:日立造船)との合弁事業として廃棄物焼却・発電のプラントを併設する予定だ。首都圏という鉄スクラップ母材の一大発生地に大規模なリサイクル拠点を構えること自体も大きな強みとなる。
地域のレジリエンス(国土強靭化)機能の面でも大きな役割を果たしていく。災害時に、家屋や大型の建築物が被災することで大量発生する家電・農機具・各種金属などが混在した災害廃棄物を一括して受け入れ、高度に分別・再資源化できるインフラとして機能する。能登半島地震での災害支援実績もある」
――DXの取り組みも進める。
「現場の生産性向上と省人化に向け、DX戦略を多角的に推進することは重要だ。AIやカメラセンサーを用いた鉄スクラップの検収・格付け自動化システムの導入検討や、集荷・配送車両の運行効率を最大化する自動配車システムの活用などを進めている。労働人口が減少していることを踏まえ、人手に頼っていた選別や目視検収の一部またはすべてを、技術力で代替・補助する」
――国内の鉄鋼メーカーや金属リサイクル業者へのメッセージを。
「リサイクル業界が負う社会的・経済的な役割と周囲からの期待は高まっており、私たちはまさに国の施策のど真ん中にいる。当社はこの業界のリーディングカンパニーを自負しているが、国家戦略として掲げられている循環経済の移行は、当社単独で成し遂げられるものではない。国内鉄鋼メーカーや同業・異業種の皆さまと共に取り組むことで高度循環型社会・脱炭素社会の実現を牽引していきたい」
(松井健人)

















