財務・経営戦略を聞く/JFEHD副社長 田中利弘氏/製品価格上げ収益改善へ/インド事業、需要捉え成長期待

財務・経営戦略を聞く/JFEHD副社長 田中利弘氏/製品価格上げ収益改善へ/インド事業、需要捉え成長期待
――JFEスチールの第1四半期のセグメント利益は30億円、棚卸資産評価差等除くと150億円の赤字に。原料高に中東影響が重なり、スプレッドが大幅に悪化した。

「スプレッドの悪化が全てともいえる。昨年下期の原料高を転嫁しようとトン1万円以上の値上げを進めたが、そこに中東影響としてマイナス150億円が第1四半期に発現し、収益の重石になった。輸出市況は第2四半期にかけて東南アジア中心に再び下がり、低い水準にとどまっている。ただ、9月末までにトン1万円以上の値上げを達成する見込みであり、追加の5000円以上の値上げについてもしっかりと活動を進めていく。一方でグループ会社は海外中心に好調に推移し、なかでもインドのJSWスチールは好決算となった。国内は化成品の市況が上がったことでJFEケミカルが高収益を上げたが、JFE条鋼は鉄スクラップ高が収益を圧迫するなど苦戦している」

――中東影響は前回織り込まず、今回通年でコストアップ影響マイナス600億円程度を織り込んだ。国内外の需要は中東情勢に関わらず下期も低調に推移しそうだ。

「原油価格は今回、1バレル80ドル(WTI、前回100ドル想定)でみているが、原油・ガス価格が電力料金に反映されるのとバンカー(船舶用燃料)に反映されるのとではタイミングが異なり、そのずれ込みを勘案して600億円程度と置いた。鋼材の販売や製鉄所の操業への中東情勢による影響はほとんどなく、影響度の大半がコストの上昇であり、電力やガス、バンカーが占める割合が大きい。自動車の中東向けの減少なども報じられたが、トータルの国内生産台数への影響は限定的とみている」

「国内の需要動向はさほど変化なく、下期の需要は国内外とも低調に推移する見通しだ。建機の輸出が増え、機械の受注も回復しているなど一部で上向く動きはみられるが、自動車の国内生産は大きな変動はない。造船は受注は堅調だが建造ピッチが急に上がるものではなく、鋼材需要はそうは増えない。建設分野は引き続き低調とみざるを得ない。熊本地震による需要への影響は情報を集めている段階であり、状況を見守っている」

――JFEスチールの上期の利益予想は300億円。第2四半期に270億円に改善するのは製品値上げの効果が大きい。

「第2四半期に入ると、値上げの効果がかなり表れ、スプレッドは第1四半期から第2四半期にかけて250億円改善する見込みだ。トン1万円以上の値上げについて9月末までに合意する見通しであり、スプレッドを改善して実力の利益を第2四半期に150億円、上期でゼロに戻し、下期は上期の値上げがフルに効くのに加え、追加の5000円以上の値上げを進め、下期に700億円を計画している。上期から下期にかけてスプレッドは590億円改善する見通しで、収益改善の大半が値上げの進展に関わっている。数量は下期に上期比で若干減るが、品種構成の改善によって30億円のプラス効果を見込んでいる。洋上風力向けの大単重厚板J―TerraPlate(ジェイテラプレート)を下期にアジアなど海外での拡販も進め、販売を増やしていく計画であり、倉敷地区での電磁鋼板の第2期能力増強も順次立ち上げていく。電磁鋼板の24年の第1期増強で徐々に生産を増やし、第2期が加わることで27年度に高付加価値品比率の向上につながっていく。高付加価値品の比率は25年度の53%から26年度に56%に上げていく。大単重厚板は供給可能なメーカーが限られ、欧州で一時停滞している洋上風力の案件が再び増えた時にオーダーが集まると期待している。28年度には自動車用ハイテン材を製造する新CGLが稼働する予定であり、自動車のハイテン比率上昇に対応し、受注活動を強化していく」

――通期予想は1000億円と前回から据え置いたが、スプレッドが主に中東影響で前回比160億円悪化する一方でコスト改善20億円、数量・構成30億円、グループ会社・その他で110億円プラスとなる。それぞれ改善点とは。

「コスト削減は地道な努力の積み重ねではあるが、トラブル時にすぐにリカバリーするために各現場でコスト改善のB案、C案を持つようにしている。ソフト的な改善が中心だが可能なものは実行しており、検討していた追加のコスト削減策が効果を上げている。数量・構成は品種構成の兼ね合いによるもの。その他はインドのグループ会社の改善が大きい。今回、中東影響を織り込み、コストの増加による厳しい状況の中で鋼材価格を改善していく。下期に利益水準を高くし、それを発射台にして27年度に利益のプラスアルファを図っていく」

――貢献度の高いインド事業の状況は。

「インドは需要の成長が続き、鋼材市況は昨年に下がったがその後のセーフガードの影響で上がり、上がったところで横ばいで推移しているが、十分に利益が出るレベルにある。JSWスチールの収益は足元好調であり、下期にかけてさらなる改善に期待している。JJSLは当社が操業ノウハウを投入することでコスト改善を進め、利益を上げていく。電磁鋼板製造のJ2ESナーシクはやや苦戦しているが、価格の上昇を受けて収益に貢献してくると期待している。海外事業の利益は25年度183億円、26年度は前年より340億円改善すると予想して520億円程度となり、そのうちに占めるインドのウェイトは高い。中期経営計画最終の27年度に海外事業の利益は750億円を目標としており、インド事業の成長がカギを握る」

「北米のCSIは輸入スラブのコスト増で収益が圧迫された前年から改善しているが、鋼板市況の上昇とともにさらに収益が改善する見通し。メキシコのNJSMは認証取得が進んだが、米国の関税引き上げやUSMCA(米国・メキシコ・カナダの協定)の見直し協議もあり、米国の需要家がメキシコからの調達の持続性を考慮し様子見を続けている。中国は日系車のシェア低下が続き、GJSSは中国資本の自動車の開拓など努力しているものの低収益を余儀なくされているが、特殊鋼棒鋼製造のBJSSは販売構成改善とコストダウンにより収益が改善している」

――下期の収益改善や資産売却、投資計画の見直しなどで上昇しているDebt/EBITDA倍率の改善を図る考えだが、見直す投資の計画とは。

「上期末は2兆2000億円の有利子負債があり、26年度上期末のDebt/EBITDA倍率は4・8倍の見通しだが、26年度末に4倍程度まで改善していく。投資の見直しについては何か大きな案件があるというものではなく、どの投資がどのタイミングで最適となるか、常に検証しながら進めている。Debt/EBITDA倍率は重要な指標であり、金利コストの上昇につながるのでしっかりとコントロールし、キャッシュアロケーションをみながら会社全体の活動を考えていく」

――JFEエンジニアリングは事業、収益ともに堅調。JFE商事は米国事業が回復しつつある。

「JFEエンジニアリングの第1四半期のセグメント利益は89億円と、第1四半期として過去最高で、非常に高いレベルとなった。工事進行基準が適用されるが元々、期末に向けて工事が完工していくので、年度の後半にかけて売上高や利益が伸びてくる。今回、従来と少し違って年前半に利益が出ているのは、笠岡の洋上風力発電向けのモノパイル工場が第1四半期に生産に入ったことが大きい。ただ、洋上風力は秋田県の潟上プロジェクト向けのモノパイルの生産を終えた後の次案件が決まっていないので、利益は上期130億円、下期120億円とさほど段差はなく、通期で250億円を予想している。事業者が検討を進めている段階のため今年度の利益に潟上以降の受注は織り込んでいない。受注活動は続けるが、洋上風力については「一般海域における占用公募制度の運用指針」が改訂され、政府の指針として事業者が事業性を見通すことができるようルール変更があり、様子見だった事業者による案件組成がこれから進むと期待している。時間を要し、27年度に向けて具体化していく見通しだが、国内でモノパイルを供給できるのはJFEエンジニアリングだけであり、モノパイルを使用する計画は多く、案件が組成されてくれば非常に多くのオーダーが出てくる可能性がある」

「JFE商事は、米国の鋼材市況が下落した昨年後半に現地の事業会社の収益が低下したが、今年は鋼材市況が上がり続け、米国の事業会社の収益が改善している。第1四半期のセグメント利益が113億円と前年対比で13億円減少したのは昨年の第1四半期の米国事業の収益が非常に高かったため。米国の熱延コイルの市況は足元ショートトンで1300ドルに近づいている。高値のために下期に輸入材が増えるなど調整が入る可能性はあるが、市況は高い水準で推移すると予想し、上期、下期とも225億円、通期で450億円を計画しつつ、下期のさらなる利益改善を期待している」(植木 美知也)

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