新社長に聞く/東邦亜鉛 佐藤義和氏/事業再生・風土改革を推進

新社長に聞く/東邦亜鉛 佐藤義和氏/事業再生・風土改革を推進
東邦亜鉛は、5年間の事業再生計画の1年目にあたる前期(2026年3月期)に、想定を上回る利益を確保した。資源事業からの撤退と亜鉛事業の再編が完了し、2年目以降はいよいよ鉛・銀製錬やリサイクル事業に軸足を置いた成長フェーズへと移行する。6月に就任した佐藤義和社長に成長戦略や投資方針を聞いた。

――社長就任の抱負を。

「CRO(最高再生責任者)という立場で事業再生計画の策定と実行に携わってきた。変革ムードを壊さず、株主や金融機関、取引先、地域の方も含めたステークホルダーに感謝しながら、成長に向けて安全と事業再生、風土改革、DXを推進する。当社はミッション・ビジョン・バリューをこのほど策定し、ミッションとして『有限な資源を、無限の価値に。』を掲げた。我々の製錬・リサイクル技術を活用した循環型社会の実現を目指し、企業価値を向上させたい。変革は一人ではできず、組織力で成し遂げる風土を成熟させたい。こうした決意も含め、来年4月に社名を『東邦メタリクス』に変える。再生計画で希望退職を募集したことはこれまでで最も辛かった。仲間をもう失いたくないという気持ちもモチベーションになっている」

――事業再生計画1年目の進捗と成果は。

「PL上はしっかりと黒字が出て予定通り進んだ。銀の相場上昇など外部要因もあったが、それも含め達成できたことは良かった。資源からの撤退と亜鉛製錬の再編が計画通り進み、1年目としては順調な滑り出しだと思っている。反面で1年経って課題も見えてきた。一つは人材確保。希望退職も実施したが、やはり新たな展開や新規事業には人が必要。また前期は東邦契島製錬(広島県)での鉛電解操業の不調や小名浜製錬所(福島県)での火災事故があり、安定操業も課題だ」

――前期黒字化の主な要因は。

「製錬事業は上期に電解トラブルがあったものの、下期に挽回した。小名浜も火災後にリカバリーできた。安中の亜鉛製錬を再編したため、在庫や一部設備の資産売却もプラス要因となった」

――計画2年目以降の施策を聞きたい。

「鉛製錬は鉱石の買鉱条件が非常に悪く、二次原料の廃バッテリー集荷を拡大する方針。35年までに二次原料比率を75%まで引き上げたい。ただ当社は鉱石中の銀も収益源。銀の生産と安定供給も維持しながらバランスを取る必要がある。国内の市場環境や買鉱条件を見ながら、最適な収益構造につながる原料ミックスを目指す」

――現状の二次原料比率は50%程度。炉の熱源としても一定量の鉱石が必要だ。

「例えば、二次精錬のM&Aで母数を増やすといった考え方もある。どのようなやり方が良いか精査する」

――東日本の廃バッテリー集荷拠点の東邦キャリア(福島県)で設備投資を行う。

「解体工程の増処理の投資を近く決裁する予定だ」

――副産物の回収強化も推進する。

「契島では鉛製錬で出る貴金属含有スライムから、乾式設備で金、銀、銅などを回収している。これらの高純度化や回収率向上を図るため、副産物用の湿式設備の導入も検討する。物流を考えると契島に近い方が良いが、安中製錬所の遊休設備を使うという考え方もある。契島のスライムのほか外部からリサイクル原料を仕入れることも視野に入れており、その観点だと首都圏に近い安中はメリットがある。他社と連携し、コンソーシアムのような形でリサイクル事業の拡大を目指したい」

――副産物のビスマス、アンチモンの回収強化はどうか。

「アンチモンは設備更新のタイミングで設備の大型化を図る。一方で、増強に向けた人員確保も課題としてある。このほかにもリサイクル原料処理を増やしていく中で、市場に求められているレアメタルやレアアースの回収で当社の技術を生かせる部分があれば取り組んでいきたい」

――国内では廃バッテリーの集荷環境が厳しい。

「環境省による不適正ヤードの規制で、集荷環境が改善されていくことを期待する。ただ、実際の運用はこれから。自治体などがしっかりと対応して効果が出るのか見ていかないといけない」

――廃バッテリーの発生状況はどうか。

「自動車用バッテリーは性能が上がり、交換頻度が減少。国内は人口も減る中で、自動車用の発生は減っていくとみられる。一方でバッテリーメーカーは定置用鉛バッテリーにも力を入れている。国際研究機関の予測では鉛の世界需要は現在の年間約1300万トンから、50年に約1800万トンまで伸びる。鉛バッテリーは安全性が高く、リサイクル率も100%に近い。そういう意味で将来性はあると思っている」

――小名浜製錬所で手掛ける酸化亜鉛事業の戦略を。

「供給先である国内タイヤメーカーが高級品にシフトしており、物量的には厳しくなっている。当社の酸化亜鉛は100%二次原料を使用しており、これをブランドにして価値を高めていきたい」

――再生計画で掲げた環境ダストリサイクル事業の展望を。

「当初計画した溶融炉は設備費が想定よりかなり上がり、どう進めるか議論している。ただ考え方は変わっておらず、早期の事業化を目指して検討を進めている。ここで造る粗酸化亜鉛は、亜鉛製錬向けの原料になる。亜鉛も買鉱条件が厳しく、ニーズはある」

――電子部材、機能材料はどうか。

「電子部材のコイルはEV向けの市場環境が変わり、苦戦している。短期的な戦略としては工程内のコストダウンや製品への価格転嫁により、量より質で立て直しを図っている」

「世界トップシェアの電解鉄は、セカンドグレードの生産に向けた検討を続けている。当社が手掛けているハイグレードとマーケット的に重なる部分もあり、セカンドグレードを出す必要があるか慎重に判断する。まずは従来品の拡販を基軸に動き、米国や欧州だけでなく、インドなど世界に販売チャンネルを増やしていく」

――その他の取り組みを。

「今年度は組織改正を行い、人事評価制度も大きく変更した。新たな人事制度は成果を出した人がしっかりと評価され、社員が納得できる仕組みにした。これを基盤として、新たな事業展開などに必要な人材の確保につなげたい。変革しようとしている会社での仕事はなかなか経験できるものではないと思うので、一緒に働きたいと思ってくれる人材がいればぜひ採用していきたい。課題はあるが上を向いて歩けるのは楽しみでもあると思う」

(田島義史、欠端優太)



▽佐藤義和(さとう・よしかず)氏=90年明治学院大法卒、東邦亜鉛入社。酸化亜鉛の営業に長く従事し、21年執行役員、24年取締役常務執行役員、26年6月より社長。映画が好きで、休日は平日に録りためた午後のロードショーを見てリフレッシュする。座右の銘は「至誠を尽くす」。67年1月17日生まれ、群馬県出身。



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