2023年7月18日

鉄鋼業界で働く/グローバル人材編/インタビュー/「一生懸命」行動で示す

伊藤忠丸紅鉄鋼グループの特殊鋼流通加工、ヤマト特殊鋼(本社=東京都江東区、三浦良典社長)でデジタル化を推進するグローバル人材がいる。香港出身の劉振豪(リュウ・ディーバ)さんだ。三浦社長は「日本で働きたいという熱意に、その場で採用を即決した」と話し「社員の刺激になれば」と期待を寄せる。現在の業務内容や文化の違い、今後の目標などを聞いた。

――入社の経緯から。

「私は香港市で生まれ育ち、香港大学を卒業後、香港にある日系企業に勤めていました。日本で働きたいという思いが募っていたころ、共通の知り合いを通じて三浦社長と出会い、縁あって採用され、昨年6月に入社しました」

――香港大学を卒業されたのですね。

「大学は文学部と経済学部の二重専攻で経済と日本語を学びました。日本語を学び始めたのは幼いころから好きだった日本のマンガとアニメがきっかけです。3年生の時に1年間東京大学に留学しました。卒業論文では日本経済に関する分析を行いました。大学で勉強した日本語はもちろんですが、経済学を通して学んだ数字に対する考え方、日本留学やインターンシップで生まれた人脈など、大学で学んだことが今も生きています」

――現在の業務は。

「『ヤマトソリューション』という部署で働いています。この部署は私を含め2人の部署で、私は事務作業に関するデジタル推進の担当です。自分で仕事を探して改善策を提案し、プロジェクトを立ち上げています。会議の内容などをヒアリングし、データを基に経営分析をサポートするなど、デジタル業務の『なんでも屋さん』として幅広く仕事をしています。今は、この先に控える基幹システムの刷新に向けて、よりよいシステムとなるよう準備を進めているところです」

――日本と香港の違いについて。

「来日して初めて分かったことは多いです。例えば上司と部下の接し方は、香港は基本的に対等で話すなど日本と大きく異なります。背景には香港が短期間で転職する人が多いといった文化の違いも考えられます。三浦社長をはじめ当社の皆さんはとても優しいですが、空気を読むことや、他人への接し方、距離感は日本独特のものがあります。敬語を含めまだまだ勉強しなくては、と感じますね」

――来日して1年が過ぎました。この1年を振り返っていかがでしたか。

「社名にもある特殊鋼や当社が販売する製品はもちろん、各地の拠点に足を運び、いろいろな方と話をするなど勉強することがたくさんありました。改善すべき問題や解決策は見えているとしても、急がずしっかりすり合わせをする。ということを学びました。電子契約は担当者と打ち合わせを行い、社長に説明するといったように、その業務を担当している人とのコミュニケーションが欠かせません」

――仕事以外は。

「子供の頃から見ていた日本のアニメやマンガに加えてアイドルも大好きで、会社帰りにオタクの街こと秋葉原に立ち寄ることもしばしばです。香港人は日本観光が好きなのですが、各地を巡る旅行もしたいと考えています。好きな言葉は『一生懸命』です。中国語にない言葉だったので、日本語は面白いと思ったきっかけでもあります。もちろん言葉だけでなく、行動や態度で示していきたいですね(笑)」

――今後の目標は。

「スキルを磨いていきたいです。自分が今いる立ち位置の中で、会社の業務改善に貢献したいと考えています。私は目標を一つ立てて、達成したら次の目標を立ててきました。香港にいた頃は日本のことを学びたいという思いから大学に進学し、それから日本で友達を作りたい、その次が日本に住んで働きたい、と目標を更新していき、今ここにいます。この先の目標は日本での活動領域をさらに広げて、公私にわたり充実した生活を日本で送っていけるようにすることです」

(北村 康平)





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