2015年3月13日

新幹線車両の進化支える アルミダブルスキン構造 「第4世代技術」惜しみなく

世界屈指の高速鉄道である新幹線のボディーには、アルミニウムが用いられている。軽量化と安全性双方のメリットを兼ね備えるアルミは、今や新幹線に欠かせない材料として重要視されており、北陸新幹線E7系・W7系の車両構体にもアルミダブルスキン構造が用いられている。今回の北陸新幹線開通を機に、鉄道車両とアルミの関係について振り返る。

アルミを鉄道車両に採用するメリットとして、大きく3つのことが挙げられる。一つは軽量化が図れること。次に耐食性に優れていること。最後にリサイクルしやすいことだ。アルミを用いることで新幹線の一層の高速化や省エネルギー、長寿命化、コスト削減が期待できるだけでなく、地球環境に優しい車両を造ることができる。

アルミ車両の歴史は、1962年に山陽電鉄がアルミ合金を車両構体に採用したことから始まる。アルミ鉄道車両の第1世代ともよばれる、当時の車両に用いられたアルミ合金は、市販されているような一般的なアルミ合金であった。溶接・接合にはミグアーク溶接やリベット・ボルト接合などが用いられた。

62年には鉄道車両への使用を目的としたアルミ合金、A7N01が開発された。この合金は、高強度で溶接性に優れるといった特徴を持ち、高い強度を必要とする台枠のはりなどに使用されている。第2世代と呼ばれるこのころには、接合は全溶接構造となり、主にミグアーク溶接やミグスポット溶接などが用いられた。

69年に国内に9500トンクラスの大型押出機が誕生したことから、薄肉大型の押出材が登場してくる。第2・5世代と呼ばれるこのころに新幹線への採用がスタートしている。最初にアルミ合金を使用した新幹線として、200系新幹線が登場する。接合方法は第2世代と同様な手法で行われた。

第3世代となる1980年代に入ると、一層の薄肉化が可能なアルミ合金、6N01が開発された。新合金の開発により、この世代から構体すべてがアルミ押出形材で構成されるようになってきている。また、98年以降から溶接に現在の主流であるFSW(摩擦撹拌接合)が採用されたケースが出始めている。

速度向上のため軽量化を追求した300系新幹線も第3世代に当てはまる。側板や屋根板の部分には新合金A6N01で造られた薄肉のアルミ押出形材を採用した。それを柱や、たるきなどで補強し、構造体としての剛性を確保している。この構造をシングルスキン構造と呼び、鋼鉄製であった0系新幹線と比較して1両当たり、約16・2トンの軽量化を実現している。

このほか窓枠もアルミ製とし、座席も鋼板からアルミ鋳造部品とした。台車にもアルミ鋳造部品を使用。軸箱、歯車箱にはアルミ鍛造品を使用したことで、1両当たり約500キログラムの軽量化に繋げており、300系を持って本格的なアルミ新幹線の登場と言えるだろう。

現在に至る第4世代に入ると、北陸新幹線にも採用されているダブルスキン構造が登場する。A6N01合金で製造した中空押出形材を活用することで、柱やたるきなどの補強部材が不要になり、部品点数を少なくすることができるなどの特徴を持つ。中空押出形材は曲げやせん断の強度が高く、車両の長手方向に組み合わせたダブルスキン構造にすることで、強度を上げることができる。剛性も高く、乗り心地にも優れているほか、中空押出形材の中空部に制振材を入れることで遮音性も高まる。また、形状の自由度が高いため、車両のデザイン性の向上にも寄与している。

ダブルスキン構造は、外板が裏表2枚となるため、重量ではシングルスキン構造よりも重くなることが多い。ただ、骨組みが不要で、構造が単純になり自動溶接化が容易なことが普及を後押ししている。

また、第4世代では、新しい溶接技術であるFSWが主流になっている。FSWとは2つのアルミ材の突き合わせ面に回転工具を回転させ挿入し、撹拌して接合する技術。従来の溶融溶接に比べ、熱影響が少ないため、高強度かつ歪みが少なく、外観の見栄えも良いなどの特徴を持つ。現在では車両製造に広く採用されており、無くてはならない重要な技術となっている。

北陸新幹線には、アルミメーカー各社の第4世代技術が惜しみなく導入されており、急こう配や積雪がある路線でも、営業最高速度である時速260キロメートルを安定して出すことに貢献している。今後もアルミは、鉄道車両を構成する主要素材としてさらなる活躍が期待される。

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