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2024.10.3
2016年7月4日
財界トップインタビュー 「日本経済と鉄鋼業」(中) 日本商工会議所会頭(新日鉄住金名誉会長)三村明夫氏 中小企業 人手不足解消を支援
――日本再興に向けては、中小企業の役割も大きい。
「日本企業382万社の99・7%が中小企業、大企業は0・3%で、中小企業の数は圧倒的に多い。東日本大震災や熊本地震でサプライチェーンが寸断されて明らかになったように、大企業は中小企業に多くを依存している。韓国は世界に冠たる財閥企業が並ぶが、韓国になくて、日本にあるのが強い中小企業。韓国経済が伸びる時は日本からの輸入が増える」
――商工会議所は世界120カ国以上にあるが、強い中小企業を数多く抱える日本の商工会議所の存在感は大きい。
「日本全国で515商工会議所がそれぞれの地域で活動しており、会員数は125万に上る。日本商工会議所は、全国の商工会議所と連携し、国際交流や政策提言活動を行うとともに、中小企業の振興、産業振興、魅力ある地域経済社会を創造するための活動を展開している。世界83カ国・地域の日本人商工会議所、日本国内にある38か国・地域の外国商工会議所などの機能を通じて、幅広いテーマで交流を行っている」
――いま中小企業が抱える課題は。
「人材確保がテーマのひとつとなっている。中小企業の50%が人手不足であり、これにより業容を拡大できない企業も多い。中小企業の37%が新卒採用を行ったが、そのうちの58%が充足できなかったといっている。また中小企業の60%が賃上げを実施したが、その77%が人材確保・定着といった防衛的な理由だと答えている。中小企業の70%以上が65歳以上まで働ける仕組みを構築している」
――高齢者、女性など多様な人材の活躍が望まれる。
「男女合わせて65歳以上の就業希望者は約200万人いる。働きたいが就業できていない女性は約300万人いて、その3割は健康上などの理由だが、7割の210万人は出産・育児や勤務条件が合わないなどの理由だとされる。再訓練は必要だろうが、働いていない若者も約50万人いる。こうしたミスマッチを解消するための政策と、とくに中小企業への支援が必要になっている」
――政府は「日本再興戦略2016」において、中小企業のIT利用促進をテーマのひとつに掲げている。
「人手不足解消の手立てとして、効果が早期に見込めるのはITやロボットの導入。ただ中小企業でIT化対策を打てているのは約6割にとどまり、従業員10人以下のところは、取り組みが進んでいない。政府は1万社の中小企業に専門家を派遣してIT化支援を行い、小型汎用ロボットの導入も促していく方針を打ち出しており、商工会議所としても支援していく」
――後継者問題も深刻。
「2012年頃までは毎年10万社ペースで企業が減少していた。近年は年間2万社程度にペースダウンしているが、後継者問題による廃業も多い。中小企業経営者の年齢層は、かつての40歳台から50歳台、そして60歳台へと上昇してきている。社長が頑張り、企業価値が高まるほど、株式の評価が上昇し、相続税負担が重くなる。中小企業の事業承継を促すための適切な株価の評価については政府に提言している」
――地方創生の期待が高まっている。
「日本創生会議のいわゆる『増田レポート』によると、20~39歳の女性の数が50%以上減り、人口1万人未満になる市町村は消滅する可能性が高い。名指しされたところはショックだったろうが、そうした自治体ほど懸命に対策を検討している。石破・地方創生担当大臣が旗を振り、各自治体に地方版総合戦略の提出を求めたが、残念ながらコンサルタント会社へ丸投げした自治体もあったと聞いている。日本商工会議所としては、各地の商工会議所と連携し、観光や第3次産業などに目をつけて、懸命にやっている人たちを応援している」
――1―3月の法人企業統計によると全産業の投資が10―12月の8・5%増から4・2%増に低下した。足元は円高が進み、株価も軟化を続けている。日本経済を活性化するには、やはり財政出動などの追加施策が必要なのか。
「金融緩和や財政出動の必要性について質問されることは多いが、アベノミクスが第2ステージで打ち出した構造改革を推進し、潜在成長率を目一杯引き上げることを最優先すべきだ」
――とはいえ個人消費、設備投資はなかなか盛り上がらない。
「政府にばかり対策を求めていては駄目だ。『6重苦』のほとんどが解消されたいま、企業による対策が求められている。大企業の財務基盤は強化されている。経営者には、日本経済の好循環を生み出す国内設備投資を積極的に展開してもらいたい。設備投資の方策を真剣に議論するプロセスにおいてイノベーションが創出され、それが日本のものづくり力の強化につながる」
「日本企業382万社の99・7%が中小企業、大企業は0・3%で、中小企業の数は圧倒的に多い。東日本大震災や熊本地震でサプライチェーンが寸断されて明らかになったように、大企業は中小企業に多くを依存している。韓国は世界に冠たる財閥企業が並ぶが、韓国になくて、日本にあるのが強い中小企業。韓国経済が伸びる時は日本からの輸入が増える」
――商工会議所は世界120カ国以上にあるが、強い中小企業を数多く抱える日本の商工会議所の存在感は大きい。
「日本全国で515商工会議所がそれぞれの地域で活動しており、会員数は125万に上る。日本商工会議所は、全国の商工会議所と連携し、国際交流や政策提言活動を行うとともに、中小企業の振興、産業振興、魅力ある地域経済社会を創造するための活動を展開している。世界83カ国・地域の日本人商工会議所、日本国内にある38か国・地域の外国商工会議所などの機能を通じて、幅広いテーマで交流を行っている」
――いま中小企業が抱える課題は。
「人材確保がテーマのひとつとなっている。中小企業の50%が人手不足であり、これにより業容を拡大できない企業も多い。中小企業の37%が新卒採用を行ったが、そのうちの58%が充足できなかったといっている。また中小企業の60%が賃上げを実施したが、その77%が人材確保・定着といった防衛的な理由だと答えている。中小企業の70%以上が65歳以上まで働ける仕組みを構築している」
――高齢者、女性など多様な人材の活躍が望まれる。
「男女合わせて65歳以上の就業希望者は約200万人いる。働きたいが就業できていない女性は約300万人いて、その3割は健康上などの理由だが、7割の210万人は出産・育児や勤務条件が合わないなどの理由だとされる。再訓練は必要だろうが、働いていない若者も約50万人いる。こうしたミスマッチを解消するための政策と、とくに中小企業への支援が必要になっている」
――政府は「日本再興戦略2016」において、中小企業のIT利用促進をテーマのひとつに掲げている。
「人手不足解消の手立てとして、効果が早期に見込めるのはITやロボットの導入。ただ中小企業でIT化対策を打てているのは約6割にとどまり、従業員10人以下のところは、取り組みが進んでいない。政府は1万社の中小企業に専門家を派遣してIT化支援を行い、小型汎用ロボットの導入も促していく方針を打ち出しており、商工会議所としても支援していく」
――後継者問題も深刻。
「2012年頃までは毎年10万社ペースで企業が減少していた。近年は年間2万社程度にペースダウンしているが、後継者問題による廃業も多い。中小企業経営者の年齢層は、かつての40歳台から50歳台、そして60歳台へと上昇してきている。社長が頑張り、企業価値が高まるほど、株式の評価が上昇し、相続税負担が重くなる。中小企業の事業承継を促すための適切な株価の評価については政府に提言している」
――地方創生の期待が高まっている。
「日本創生会議のいわゆる『増田レポート』によると、20~39歳の女性の数が50%以上減り、人口1万人未満になる市町村は消滅する可能性が高い。名指しされたところはショックだったろうが、そうした自治体ほど懸命に対策を検討している。石破・地方創生担当大臣が旗を振り、各自治体に地方版総合戦略の提出を求めたが、残念ながらコンサルタント会社へ丸投げした自治体もあったと聞いている。日本商工会議所としては、各地の商工会議所と連携し、観光や第3次産業などに目をつけて、懸命にやっている人たちを応援している」
――1―3月の法人企業統計によると全産業の投資が10―12月の8・5%増から4・2%増に低下した。足元は円高が進み、株価も軟化を続けている。日本経済を活性化するには、やはり財政出動などの追加施策が必要なのか。
「金融緩和や財政出動の必要性について質問されることは多いが、アベノミクスが第2ステージで打ち出した構造改革を推進し、潜在成長率を目一杯引き上げることを最優先すべきだ」
――とはいえ個人消費、設備投資はなかなか盛り上がらない。
「政府にばかり対策を求めていては駄目だ。『6重苦』のほとんどが解消されたいま、企業による対策が求められている。大企業の財務基盤は強化されている。経営者には、日本経済の好循環を生み出す国内設備投資を積極的に展開してもらいたい。設備投資の方策を真剣に議論するプロセスにおいてイノベーションが創出され、それが日本のものづくり力の強化につながる」
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