2020年9月17日

「未来へ 見出す活路 廃電子基板リサイクル」 都市鉱山の活用模索 資源循環国家への道筋

 金や銀、パラジウムなどの貴金属を含む廃電子基板。これらをめぐる国際的な集荷競争は年々激化している。日本は2018年10月にバーゼル法を改正し輸入規制を緩和、世界と戦える環境づくりを進めた。いかに資源を有効活用するか競い合う国際社会。日本の廃電子基板リサイクルは時代の要請にどう応えていくのか。

 「なぜ中国のスクラップ業者はそんな高値で廃電子基板を調達できるのかわからなかった」。長年、廃電子基板リサイクルを手掛ける関東地区の特金スクラップ取り扱い筋は2000年代を振り返る。廃電子基板は貴金属を多く含む二次原料。利益率が高いため近年、日本や欧州の製錬会社はこぞって集荷・処理量の向上に力を入れてきた。

 廃電子基板の集荷において00年代は中国のスクラップ業者が常にリードしていた。高値で調達できた理由は電子部品のリユースと、廃電子基板リサイクルの併用だ。電子部品としてリユースできるタンタルコンデンサーなどの電子部品は、基板から外して中古品として販売した。残った基板は焼却し貴金属を回収した。日本ではトレーサビリティーの観点から電子部品のリユースは難しく、「日本発生の廃電子基板は根こそぎ中国に持っていかれた」(同)。

 しかし、環境への配慮を欠いたまま基板を焼却した結果、PM2・5が発生するなど中国の大気は急激に悪化。中国政府は環境の改善を図るため17年から段階的に廃電子基板を含む廃棄物の輸入を禁止した。中国のスクラップ業者は競争力を失い、廃業に追い込まれた業者も多いという。

 一方、日本のスクラップ業者は国内・海外発生いずれも廃電子基板の取り扱いが増加している。国内発生の廃電子基板からの貴金属確保は、13年4月にスタートした小型家電リサイクル法の存在が大きい。「都市鉱山」の活用を目的とし、市町村に集まった携帯電話やパソコン、デジタルカメラなどの小型電子機器を認定事業者が回収する。認定事業者は全国で53。破砕・選別の実施後、製錬メーカーにより資源は再利用される。

 環境省・経済産業省によると18年度の小型家電の回収実績は10万398トン。目標の14万トンは未達だったものの、8割を超える市町村が小型家電の回収に取り組んでおり、今後も国内の都市鉱山活用が期待される。

 海外発生の廃電子基板輸入が容易となったのは、バーゼル法の緩和によるもの。18年10月のバーゼル法改正により、OECD(経済協力開発機構)非加盟国から廃電子基板を輸入する際の手続きが大幅に簡素化。以前は数カ月から1年程度のバーゼル法の手続きを要していたため、手続きの簡素な欧州勢のスクラップ業者に買い負けやすい環境だった。実際、廃電子基板リサイクル大手はベルギーのユミコアや独オルビスなど、欧州企業が名を連ねる。

 国際連合によれば、19年における世界の電気・電子機器廃棄物(Eスクラップ)の発生量は5360万トン。5年間で21%増加した。ただ、90年代の基板は貴金属を多く含んだが、電子機器のスリム化によって現在の含有量は当時の半分に満たない。そのためスクラップ業者にとって「量を集める」ことが課題となる。

 現在の発生地域の内訳はアジアが2490万トン、アメリカ大陸が1310万トン、欧州が1200万トンだ。アジアの主力は中国だが、資源確保のためEスクラップの輸出はしていない。関東地区の原料商社は「発生の多いアメリカ大陸や欧州はもちろん、世界中を開拓する必要がある」と話す。

 今後の経済成長が見込まれる地域において、いち早く調達ルートを開拓することも重要だ。手続き上ハードルの高い地域もあるが、「人口増加や電子機器の普及が見込まれる地域は将来的に収益が望める」(同)と話す。

 製錬メーカーの課題もある。廃電子基板などのEスクラップは樹脂やアルミなど多種の製錬阻害物質を含んでおり、これが操業悪化やコスト上昇の原因となることだ。三菱マテリアルは18年度、製錬工程に投入される不純物の量が増え、有価金属の回収効率が低下した。そこでEスクラップに含まれる成分を分離・回収し、製品化を行うとした。トラブルの減少と新たな収益源の獲得により、Eスクラップ処理の安定化と拡大につなげる。

 同社はEスクラップの処理世界1位が目標。30年度末までに処理能力を19年度の16万トンから20万トンに高めるとしている。

 JX金属は前選別にAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用する。同社は佐賀関製錬所(大分市)における廃電子基板などのリサイクル原料(故銅を除く)の使用比率を、現在の10%から中期的には15%に引き上げる方針。原料の確保は小型家電リサイクル法における認定事業者であるJX金属商事、JX金属苫小牧ケミカル、JX金属敦賀リサイクルを活用する。

 だが、小型家電由来の廃電子基板が増えれば製錬阻害物質が混入しやすくなる。そのため廃棄物をAIが画像処理し、ロボットが拾うことで物理選別を徹底する。日立事業所ですでに導入している。前処理された基板は佐賀関に送鉱する。

 「非鉄業界は未来を豊かにする素材を安定供給することと、リサイクルで環境を守る義務がある」。JX金属前社長の大井滋・特別理事は、7月17日に東京大学生産技術研究所で開催されたレアメタル研究会の講演でこう話した。オールジャパンで都市鉱山の活用を模索する。ここを極めることは、資源循環国家への道筋につながる。

(鈴木 大詩)

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