2020年10月13日

「未来へ 見出す活路 逆境に挑む厚板加工業者」次世代にらみ体制再構築 機能向上が生き残りの鍵

厚板加工業者は受注量の落ち込みが深刻化し、切板価格の下落もあって嘆息が尽きない。需要は昨年段階で落ち込みが表面化。産業・工作機械は設備投資の鈍化で生産が減り、消費税増税や新型コロナウイルス影響による景気後退が追い打ちをかける。建設機械は輸出の減少が長期化し、国内向けも昨秋の台風19号でサプライチェーンが寸断。その後はコロナが影響し、建機各社の生産は一部を除き低水準にとどまっている。

建築もコロナ不況に見舞われた。中小企業の工場建設が目に見えて減少。インバウンド需要の蒸発でホテル・レジャー施設の建設計画の中止が相次いだ。S造物件は大都市圏の大型再開発や物流倉庫の建設が続く一方で中低層の案件が激減し、Mグレード以下のファブの手持ち工事が枯渇した。

需要の激変は溶断業者の受注・稼働率に即座に波及した。多くの大手溶断業者が「3月まで悪いなりに仕事はあったが、4―8月は月を追うごとに仕事が目減りしていった」「4―6月の受注量は前年同期比3―4割減」と苦悩を露わにする。大手業者の7月の稼働率は50―80%、受注残は1―2日分程度。中小では稼働率40―60%、受注残が1日分もない企業が多数見られた。

関東・関西の切板価格は昨年初めのトン11万円前後(直線切り、SS材)から今夏まで下落傾向が続いた。日本製鉄が9月引き受けから母材価格を5000円上げ、他社も値上げに追随してきたことで底入れムードが台頭しているが、価格は9万5000―9万8000円どころで低迷している。

需要の減少と価格下落が溶断業者の収益を削いでいる。昨年11月、中山鎔断(大阪市)は経営環境の悪化から破産手続き開始の決定を受けた。今後も小規模業者の自主廃業が懸念される。

業者の多くは手をこまぬいている訳ではない。今年春のベースアップ幅を縮小せず、夏の賞与カットなど人件費削減の実施、それ以外の諸経費の圧縮に取り組み、生産効率の高い設備への加工の集約や雇用調整助成金の給付など対策を講じている。外国人技術研修生の新規受け入れ中止やパートなど非正規社員の削減に乗り出す企業もある。

次世代をにらみ、機能の再構築に取り組む企業がある。菰下鎔断(大阪府貝塚市)は来年秋に岸和田市に新工場を建設する。母材を置く二色ヤード(貝塚市)が手狭となり、薄物から厚物・極厚物などが混在していた。切板注文は厚さ6―12ミリの中板が増えてきており、母材在庫を板厚によって二色ヤードと新工場で分け、効率的化を図る。

「人口が減少し、国内需要は中長期的に減っていくが、ユーザーは大手中心にしっかりとしたサプライチェーンの構築を目指しており、あらゆる厚板の加工を信頼できる業者に任せようとしている。新工場で曲げ、熱処理、塗装、溶接など二・三次加工から製缶・組立まで行い、最終製品の手前まで提供できるようにしたい」(菰下茂夫社長)と顧客のニーズを捉える。

中嶋産業(大阪市)は工場体制を再構築した。今年3月に関東支店・かずさ工場(千葉県君津市)の厚板加工の再整備を進め、5月に整備作業を完了。他工場からNC溶断機1基と極厚用溶断機1基を移設し、薄物から極厚物まで迅速・高精度に対応可能な体制を整え、きめ細かな受注を目指す。

高砂金属工業(大阪府高石市)は主力の泉北工場の機能を強化している。4月に出力12キロワットの最新鋭ファイバーレーザー切断機1基を導入し、さまざまな建築部材向けに小口・即納で材料を供給する。加工の内製化と鋼板加工の充実化のために同工場に今年夏、鋼板用のショットブラスト設備を導入し、穴開け設備を増設した。

他の有力溶断業者も最新鋭のファイバーレーザーの導入などを進めている。狙いは加工の無人化・省力化と加工の高精度化・付加価値化だ。ある経営者は「需要は中期的に減少してもゼロになるわけではない。厚板加工の生産性と品質が業者間の勝負のポイントとなる」と語る。機能の向上を追求することが生き残りの鍵となるようだ。

(天野 充造)



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