2020年12月14日

鉄鋼新経営―2030年に向けて―  共英製鋼社長 廣冨 靖以氏 将来見据えた投資積極化 北米で増産体制構築目指す

--今年上期を振り返って

「20年9月中間期の営業利益は80億円と前年同期比22億円減少したが、国内鉄鋼事業の営業利益は同4億円増の83億円と健闘した。電極や電力コストが低下したことに加えて、現場の操業改善努力が実を結んだ。『商慣習』の見直し効果も出ている。一方で前年同期に25億円の営業黒字を計上した海外鉄鋼事業は3億円の赤字に転落した」

――海外では特に主力のベトナム南部市場で非常に苦戦した

「ベトナム南部電炉子会社のビナ・キョウエイ・スチール社(VKS)が大幅赤字を計上した。ベトナム鉄鋼大手のホアファットが中部ズンクワット製鉄所を立ち上げたのに伴い、南部市場で鉄筋を中心とした建設用鋼材のシェア拡大を狙いに来たことが背景にある。ホアファットは南部でシェアを確保するため、主力とする北部よりも安値で販売を仕掛け、結果としてVKSの製品出荷数量は減少し販売価格も下落した。原料高と製品安による売買価格差の縮小も減益要因となった」

――苦戦が続くベトナム南部市場での打開策は

「これまでの販売戦略を大きく見直した。VKSブランドを維持しながら、大口顧客についてはホアファットに対抗した価格を打ち出して販売シェアを確保する方針だ。元々VKSのブランド力は、他社の販価よりも高く評価されており、よりきめ細かな価格政策を採ることによってシェアの回復に努めている。当面、VKSではここ数年のような利益確保は難しいとみられるが、販売シェアを確保し続けることにより、年間約11億円の償却を終える26年以降は再び一定以上の収益が見込めるだろう」

――一方、ベトナム北部では子会社2社とも黒字を確保するなど、明るい兆しも出ている。

「北部電炉子会社のベトナム・イタリー・スチール社(VIS)は、この上期から黒字転換した。人員削減を行ったほか、操業技術改善などで今年5月から電炉フル稼働が可能となったことが収益に寄与した。北部市場は高炉や誘導炉メーカーが主流で、一時はVISでも電炉からよりコストの安い誘導炉へ切り替える構想もあったが、唯一の電炉メーカーとして生き残るために取り組んだ結果だ」

「VISの電炉製鋼設備は名古屋事業所と同じコンスチールで、名古屋事業所が持つ鉄スクラップ使用技術や操業ノウハウ、経験をいかすことができるという強みがある。コンスチールの機能がようやく発揮され、実際にVISの製鋼工程におけるコスト競争力は当社の国内外グループでトップになった。さらに現地でベトナム人の営業マンを採用し、特約店等への販路開拓を進めている。単圧メーカーのキョウエイ・スチール・ベトナム社(KSVC)も低在庫操業が功を奏し、黒字を確保した」

――日本、ベトナムに次ぐ第三軸となる北米事業については

「米国電炉子会社のビントン・スチールは下期から新型コロナウイルスの影響が強まりそうで、今期は赤字の見通し。今年10月から12月にかけて精整設備の自動化・合理化工事による生産休止も織り込んでいる。精整ラインの改造は安全対策の強化と生産効率化のため。完成すれば年間2-3万トン増産できる見込みで、景気回復による鋼材需要の増加に備えたい」

――北米では鉱山向け鉱石粉砕用鉄球の世界最大手、モリコップ・グループと合弁事業を開始した

「ビントン・スチールは、鉄筋のほか、鉱石粉砕用鉄球を製造している。モリコップ・グループとの合弁事業により、鉱山向け鉄球の製造技術のノウハウ獲得と鉄球関連事業の収益安定化を図ることが狙いだ」

「鉄球販売会社のビントン・ボールを設立したことにより、共英製鋼グループとしては北米、特に米国西海岸市場でより鉄筋販売シェアの拡大に集中できる。米国西海岸は海外から細物鉄筋が流入しており、拡販の余地がある。カナダ電炉子会社のアルタスチールでは細物鉄筋の試圧を開始したが、販路にめどが立てば圧延ラインを改修し、本格的に細物鉄筋の生産に着手したい」

――21年度から新中期経営計画がスタートする。

「まず20年度までの現中計は最終年度の利益目標達成が未達になる予想ながら、3カ年累計では目標利益を超過達成する見込みとなった。コロナ禍で次期中計期間は厳しい事業環境になりそうだが、現在のネット借入金は70億円程度でほとんどがVKS関連と財務体質はかなり良好。地産地消のビジネスモデルを世界で展開する『グローカル・ニッチ』戦略をより推進するために、次期中計以降は将来を見据えた投資を積極的に進めていく」

--今後の具体的な投資計画は

「海外については、ベトナムは当面収益力強化を第一とし、北米は増産体制の構築を目指す。国内では老朽化設備のリニューアルなどを本格的に検討していく。現在、約15億円かけて枚方事業所に自動製品倉庫を建設中だが、物流・デリバリー体制の強化のため他の事業所でも半自動化・全自動化倉庫システムの採用を目指す。国内各製造拠点では予知保全などの投資も進めるほか、炉前作業の無人化や女性も現場で活躍できるような職場環境の整備を進めていく方針だ」

「将来投資として脱炭素社会の実現やゼロエミッションの達成に向けた設備も導入したい。スラグダスト処理設備の導入や燃料の切り替え、ソーラーパネル設置などを順次検討していく。環境リサイクル事業で電炉溶融処理以外の処理施設の建設も視野に入れている」

--今後も国内外で鉄筋が中心のビジネスモデルを展開していく

「共英製鋼にとって建設用鋼材、なかでも鉄筋棒鋼を中心に電炉メーカーとして生き抜く戦略は、社員の力が最も発揮できると考えている。当社の強みは『ロー・グレード』の鉄スクラップを使用し、『ミドル・グレード』までの汎用品を生産できるということ。確かに日本国内では建設用鋼材需要の伸びは期待できないが、こうした汎用品ビジネスは人口増加に伴って世界規模で市場が広がり、資源循環型社会の構築という大きなテーマの中でより重要性が増すはずだ」

--ポストコロナへの対応は

「新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によってグローバル化が見直され始めている中で、地産地消の電炉業で汎用品ビジネスを展開していることはポストコロナの『新常態』の中で大きな強みになる。我々は日本や北米といった、鉄スクラップが発生する地域において、鉄スクラップを再生する電炉業を展開している。ベトナムも経済発展が進めばいずれ鉄スクラップの発生が増え、地産地消のビジネスが成り立つ時代が来る。こうした地域分散型経営は電炉メーカーとして生き残る1つのビジネスモデルにもなるはず。それぞれの地域性を重視しつつ、高い共通価値を持つ技術やノウハウなどはグローバルネットワークで連携を取り合い、グループ全体の競争力を高めていきたい」
(早間 大吾)

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