2020年12月21日

新・財務戦略 商社編 阪和興業 中川 洋一専務 今中計投融資枠500億円 成長投資継続 「事業戦略の発展」追求

――財務の現状認識から。

「2019年度連結決算において南ア・サマンコールの減損処理等を行い350億円の持分法投資損失を営業外費用に計上。加えて65億円の投資有価証券評価損を特別損失として計上した。この結果、営業利益は273億円と前年度比15億円の微減にとどまったが、経常損益が前年度の233億円の利益から125億円の損失となり、親会社株主に帰属する純損益は139億円の黒字から136億円の赤字に転落した。この結果、純資産が前年度末比363億円減の1660億円に縮小した。第8次中期経営計画(16-19年度)では、財務目標として純資産2000億円、ネットDEレシオ(有利子負債資本倍率)1・5倍以下を目標に掲げた。ハイブリッドローン考慮後のネットDEレシオは1・3倍と目標をクリアしたが、前期末に2024億円まで積み上げてきた純資産は大幅な計画未達となった」

――新中計(20―22年度)における財務戦略を。

「第9次中計では会社経営の基礎部分を『ESG、SDGsに根差した経営』とし、その上部に『経営基盤の強化』『事業戦略の発展』『投資の収益化』の3つを重点課題に掲げ経営を推進する。3つの重点課題の1階部分、基礎と位置付ける『経営基盤の強化』は財務基盤の強化・再構築を最大のテーマに設定。22年度末の株主資本2000億円以上、ハイブリッドローン考慮前のネットDER1・3倍程度を目標に掲げた」

――取り組むべき課題は。

「財務規律に基づくバランスシートとキャッシュフローのマネジメントを強化する。具体的には、連結CFを重視した投融資枠を設定・管理しつつ、資産の入れ替えによる財務バランスの向上を図り、同時にグローバル財務マネジメントを強化する。政策保有株式に関しては保有効果を毎年見直し、その効果を検討すると同時に非事業用資産を売却し、海外グループ会社における現地借り入れから親子ローンへの切り替えを促進する」

――前中計では4年間500億円の予定を大幅に上回る768億円の投融資を実施した。

「今中計では、3年間500億円の投融資枠を設定している。厳選した成長投資を継続することで『事業戦略の発展』を追求し、先行投資事業の利益最大化による『投資の収益化』を図る」

――一株当たりの年間配当額は17年度85円(株式併合後換算125円)、18年度150円、19年度100円。

「19年度は最終赤字だったが、100円配当を実施した。本年度は60円の予想を公表している。株主還元は重要視しているが、企業価値向上のための成長戦略をタイムリーに実行できるよう、今中計では内部留保の蓄積による財務基盤強化を優先し、株主資本2000億円回復を目指す」

――前中計では連結売上高2兆円、経常利益350億円を目指していた。

「15年度に1兆5118億円だった売上高は、18年度2兆746億円、19年度1兆9074億円と目標レベルに達した。154億円だった経常利益は、16年度229億円、17年度255億円、18年度233億円と推移。クロム市況低迷による南ア・サマンコールに関する減損処理等を実施した19年度は125億円の赤字に後退したが、実力ベースでは230億円レベルの黒字を確保した」

――新中計における最終22年度目標は。

「売上高2兆1000億円、経常利益300億円を目指す」

――今期は業績予想を上方修正した。

「売上高を1兆6000億円から1兆7000億円、経常利益を165億円から230億円にそれぞれ修正した。国内外でコロナ禍による混乱が続く中、各事業分野における需要動向を的確に把握し、取引先のニーズを反映した適切な販売・在庫政策を徹底してきた成果であり、併せて新規取引開拓も積極展開し、業績の維持・向上に努めていく」

――経常利益の次の目標500億円も明示した。

「10年後のあり姿を示した『Run up to HANWA 2030~いまを超える未知への挑戦~』では経常利益500億円、A格(現在BBB+)の取得を目標に掲げた。第10次中計以降で経常利益500億円を達成するため今中計の3つの重点課題を確実に実行していく」

――収益力について、重視する指標は。

「売上高総利益率は意識しているが、経常利益率(ROS)をより重視している。経営環境が変化する中でも1%以上はキープしたい。前年度は実力ベースで1・2%、過去4年間の単純平均が1・3%。異常事態の本年度も1・35%の見通し。22年度収益計画を達成すると1・4%台に乗ってくる」

――連結子会社が増えている。

「連結子会社及び持分法適用子会社・関連会社は68社で、前中計期間中に36社増加した。うち事業会社は国内が21社増の37社、海外は14社増の23社。『M&AプラスA(アライアンス)』戦略の加速によって連結経営の規模が拡大し、海外ビジネスも大きく広がっている」

――「M&AプラスA」で傘下に入った企業の動向は。

「国内グループ企業を対象とするキャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)を3年半前に立ち上げた。グループ企業は、低金利で資金を調達でき、設備投資もタイムリーに実施できることから、収益は着実に改善している。」

――連結純利益の連単倍率は1・2倍程度で、伸びシロを残す。

「国内需要の縮小を見越して『M&AプラスA』戦略で市場を深耕し、『第二の阪和を東南アジアに』をキャッチフレーズに『そこか』戦略を海外でも展開してきた。特徴ある資源投資も含めて、種をしっかり蒔いてきた。本体からの直接出資もあるが、シンガポールなど海外現地法人にリターンが入る仕組みも講じている。今中計で成果を収穫し、連単倍率を1・3倍、1・5倍へと積み上げていくことで、経常利益500億円の達成時期を引き寄せたい」

――本年度の手応えを。

「親会社株主に帰属する純損益は前年度の136億円の損失から155億円の利益となる見通し。」

――イグジット・ルールは。

「先行投資としての良い赤字、構造的問題に起因する悪い赤字をしっかりと見極めて行く。ルールを厳格に運用しすぎると、将来の芽を摘む可能性がある。先行投資を可能とする収益力と財務健全性を一段高いステージに引き上げていく」

――今中計における『投資の収益化』の手応えを。

「インドネシアでは、中国の青山実業グループとのニッケル銑鉄、ステンレスホットコイルがそれぞれ年産150万トン、300万トンの安定生産に入る。青山実業グループと中国の徳龍鋼鉄グループがインドネシアに新設した高炉一貫メーカーは、ビレット・条鋼、スラブの年産600万トン体制を構築する予定で、2000万トンへの拡張計画も持つ。マレーシアの合金鉄事業、OMホールディングスはフェロシリコン、フェロマンガンの年産60万トン体制を構築している」

――サマンコールは減損効果も見込める。

「事業パートナーが、中国の国営資源大手の中鋼集団に代わって以降、収益構造改革を本格化している。クロム鉱石は世界の埋蔵量の7割が南アに偏在しており、サマンコールは最大の権益を確保している。当社は減損処理も完了しており、収益貢献に大きな期待を寄せている」

――経常利益500億円達成の道筋は。

「青山実業グループとのステンレス一貫事業は、ニッケル・コバルトを利用した二次電池材料メーカー、QMB・ニュー・エナジーに発展。QMBは世界最大の自動車用電池メーカー、中国CATLも共同出資しており22年に稼働を開始する。メキシコのバカノラ・リチウムは炭酸リチウムの生産を23年に開始する予定。南アフリカの白金族プロジェクト、ウォーター・バーグJVが24年に稼働を開始する予定」

――新・管理会計制度を21年度にスタートする。

「業績管理手法や組織をアップグレードする。まず管理会計制度を刷新し、PL管理に加えてBS、CFも重視した業績マネジメントや評価を導入。グループ一体型の損益管理、予算管理にも戦略的・効率的に活用していく」

――新・基幹システム『Shift』を22年度に導入する。

「デジタル・トランスフォーメーション(DX)の基盤として業務や組織の再設計につなげ、属人的な業務手順から統一的なシステムフローによる標準化を図る。10数年振りのシステム更新で、事務・管理の効率化、経営指標分析の短期化、コスト削減などで相当な効果が見込める。ポスト・コロナ期を見据えた働き方改革にも活用していく」(谷藤 真澄)

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