2020年12月18日

「新・財務戦略 商社編」メタルワン 岩井哲常務 事業資産の効率性向上 選択と集中加速 異次元の構造改革推進

――財務の基本戦略から。

「2020・21年度の2カ年経営計画では『事業撤退や資産売却を含めたポートフォリオの見直し』『成長市場におけるポジション強化に向けた経営資源のシフトと人材開発の加速』の2つの重点課題を掲げている。経営方針に沿って、財務面では、事業資産が生み出すキャッシュフローを重視し、同時に運転資金の回転日数を短縮する。そのために資産効率を示す指標を経営目標に組み入れる。併せて事業運営に必要な円・外貨の流動性を確保し、連結ベースでのバランスシートの健全性の維持に努める。自己資本、アセットともに大きいので、資金の回転率を上げ、資産の効率性を向上させつつ、健全性を維持していく」

――コロナ禍対応は。

「世界景気減速局面での新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、経営環境に新しい変数が加わった。成長性・収益性・安全性にコロナが加わった4元連立方程式を解いていかなければならない。一つずつ変数を消していければ良いが、この方程式は複雑に循環しており、先行きが極めて見通しにくい状況が続いている。」

――財務基盤について。

「連結総資産の約7割はトレーディングアセットなど相対的に低リスクの流動資産が占めている。負債については、資金需要の太宗を占めているのが運転資金であり、従来から取引させて頂いている金融機関からの資金調達を中心に賄っている。期間の長短や通貨を組み合わせながら、調達構造の最適化を図っている。2003年10月に資本金1000億円、利益準備金500億円でスタートし、この間に利益剰余金を積み上げてきた。19年度末の非支配株主持分を除いた純資産は約3700億円で、自己資本比率は36・9%と高く、財務健全性のベースとなっている。一方、借入金が約3200億円あり、資金効率を意識して成長投資を展開していきたい」

――総資産の規模感は。

「売上高が2兆円であれば、総資産は7000―8000億円が適正だろうと認識している」

――ネットDEレシオは0・8倍で、投資に慎重過ぎるように映る。

「1・0以下で推移していているが、プレートプラス以降、大きな投資がなく、成長戦略投資を加速していかなければならない。4月1日付けで新設した事業開発部が20人体制で新規事業開拓に注力しており、新たなビジネスモデルの創出に期待している」

――19年度は国内外事業会社の設備維持・更新や新規投資に約116億円を投じた。

「コロナ禍を機に、とくに国内においては業界の潜在的な課題が顕在化してきたと認識している。この状況を踏まえ、国内についてはコスト競争力強化を図り、資産、資本の効率化を進めていく。時間軸としては守りをまず徹底し、選択と集中によって捻出した経営資源を成長分野に振り向けていく。海外は引き続き集中していくエリアと認識しており、成長市場にある事業開発の芽を育てていきたい」

――前中期経営計画では、20年度以降のあり姿として、いかなる事業環境においても300億円以上の連結純利益を確保できる体制を目指すとしていた。

「16年度226億円、17年度234億円、18年度254億円と拡大基調にあったが、コロナ禍による歴史的危機は想定外であったものの19年度の195億円は物足りない。いずれ300億円はクリアをしていかなければならない」

――収益力で重視する指標は。

「連結最終利益が基本だが、売上高総利益率も意識している。5-6%で安定しているが、売上高が2兆円あるので、0・1ポイント上昇すれば、総利益は20億円増える」

――20年度上期は厳しい環境が続いた。

「売上高は前年同期の1兆458億円から7253億円、売上総利益が531億円から348億円に減少した。純利益は129億円から2億円に大きく後退した。コロナ禍による世界的な景気減速の影響を受けて、ほぼすべての産業分野において需要が減少した。連結総資産は、取引債権や棚卸資産の減少によって1600億円減の約8500億円に縮小。有利子負債は約900億円減の約2300億円に低減した」

――下期の収益環境認識と業績見通しを。

「一時に比べると回復基調が鮮明となってきた地域や分野はあるが、世界各地でコロナ感染症が再拡大しており、厳しい事業環境が続くと想定している。中国は想定以上の回復を見せているが、その他のほとんどの国々における鉄鋼需要の回復は鈍い。ワクチンの開発が進んでいるようだが、コロナ禍が落ち着いてくるのは来年度以降になるだろう。こうした収益環境認識に基づいて、進行中である選択と集中を徹底し、グループ会社も含めたコスト構造改革にも着手している。20年度の業績見通しは開示を控えている」

――トレード利益と事業利益のバランスについて。

「意識していない。取扱数量が伸びたから利益がついてきたという追い方はしていない。お客様の役に立てるところに事業を展開していき、機能を主体的に発揮した結果として取扱数量が増えて、利益が伸びていくかたちを追求している」

――連単のバランスは。

「単体の収益は経営陣でも議論に上らない。単体利益は受取配当金で一定規模あるが連結で消えていく。単体の経費は見ているが、単体のボトムラインは気にしていない」

――国内と海外のバランスは6対4で推移している。

「国内市場が縮小する見通しであり、会社としては全体を底上げしながら5対5から4対6に収益構造を変えていく方針を打ち出している」

――事業利益の拡大がテーマとなる。

「課題となっている事業ポートフォリオの見直しを進め、筋肉質な事業基盤の構築を目指している。わが社の機能が取引先から高く評価される事業への集中を図り、事業が生み出す利益の質を追求。機能が限定的となっている事業等からは撤退・縮小し、事業資産の効率性を高めていく。その上で、将来の成長性が期待できる事業や業界が抱える課題解決に貢献するビジネス等に経営資源を再配分していく。効率性という観点では、経営指標として事業資産利回りを導入した。03年以降の新規投資のリターンには不満が残る。事業資産の利回りで整理をして、あるべき形に持っていく。非効率な要素を徹底して排除していく。選択と集中のギアを一段上げて、事業からの撤退や資産の売却など従来と異なる次元で事業構造改革を進めていく」

――連結する事業投資先は110社。

「連結事業会社の収益力強化が課題。07年度時点では連結する事業投資先が154社あったが、19年度末までに110社まで減らしてきた。ピークを過ぎたところ、機能が限定的となったところは縮小や統合、撤退による選択と集中を進めている。主体性を持ってビジネスを展開し、取引先にしっかり貢献できる事業に経営資源を集中していく」

――イグジットルールは。

「主体性、成長性、収益性を軸に置き、よりシビアな目線で判断している。コロナ影響で実行が若干遅れる部分はあるが、方針が揺らぐことはない。本年度内の完遂を目指し、来年度は成長に軸足を移していく方針で取り組みを進めている」

――地球規模で再生可能エネルギーへのシフトが加速しているが、14年に買収したカンタックによる鋼管ビジネスを継続するのか。

「アルバータ州カルガリーに拠点を置くカンタックは、カナダ西部のエネルギー鋼管市場で強いポジションをキープしている。OCTGに加えてラインパイプも得意としている。メタルワンが持つ油井管ねじ切り技術も活用し、在庫販売中心のビジネスモデルからの事業転換を検討している」

――メキシコのニコメタルに続いて、コイルプラスとプレートプラスを統合するのか。

「メキシコの旧ニコメタルはアグアスカリエンテス、バヒオ、イダルゴの3拠点を統合した。コイルプラスは自動車、電機など製造業対応の需要地立地型の冷延・表面処理鋼板事業モデル。プレートプラスは熱延鋼板事業モデル。まずはそれぞれの収益力強化を優先する」

――SDG経営、ESG投資への対応が求められている。

「企業理念に『地球市民』を掲げ、社会に貢献し、社会から信頼される企業を目指している。環境関連ビジネスとしては、電気自動車、風力発電設備などは強化分野として注力し、事業開発部でも新規ビジネスの創出に取り組んでいる」

――コロナ禍でテレワーク、在宅勤務が浸透してきたが、オフィスの持ち方については。

「テレワークなどは働き方改革の観点で18年度にタスクフォースを立ち上げて取り組んできたが、コロナ禍で在宅勤務が定着してきた。コスト構造改革の視点も加えて働き方改革を進めていくことになるだろう。本社オフィスのレイアウトを見直し、スペースを有効活用する。経費削減に向けては海外・国内出張のあり方の見直し含めて検討を進めている」(谷藤 真澄)

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