2020年12月24日

「メタルワンの経営戦略 Post Coronaを見据えて」岩田修一社長 鉄鋼の価値 最適化 成長市場に人員をシフト

――2020年4―9月期連結純利益は前年同期の128億円から2億円に大きく後退した。

「売上高は30%減の7253億円、売上総利益が35%減の348億円。新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界的な景気減速の影響を受けて、ほぼすべての産業分野において需要が大幅に減少。取扱量が前年同期の1100万トンから811万トンに25%減少した。とくに厳しかった4―6月は水面下に沈み、7―9月でカバーして黒字をキープした。前年同期は事業再編に伴う一過性利益を計上していたが、それを差し引いても、非常に残念な結果となった」

――減損処理などの一過性要因が発生したのか。

「上半期は特筆すべき一過性要因はなかった。得意とする自動車の減産が響いた。特殊鋼は7割、線材も5割が自動車向けで、自動車用鋼板も国内外で幅広く取り扱っている。販管費も減少したが、売上総利益の大幅減が響いた」

――持分法適用会社のエムエム建材、住商メタルワン鋼管をフル連結した場合は。

「参考数値だが、取扱量は約1300万トン、売上高が約1兆900億円、売上総利益は500億円ほどとなる」

――グループ会社の経営状況を。

「連結対象会社は128社で国内60社、海外68社。直接連結が101社で国内41社、海外60社で、前年同期と比較すると黒字が20社減の63社、赤字が18社増の38社と悪化し、黒字幅も縮小した。国内は建設、海外は中国が健闘し、海外ではタイ、米国の鋼板分野が不調だった」

――下期の経営環境について。

「冬季を迎えた欧米諸国でコロナ感染が急拡大し、ロックダウンに入った都市が増えている。ブレグジットは混乱が続いており、米国は政権交代が決まった。先行きの不透明感がさらに高まり、予断を許さない状況が続いている。一方で英国、米国がワクチンの接種を開始し、コロナ対策を講じながら経済活動を継続する姿勢を明示している。先行して中国はコロナ以前の活動レベルに戻りつつあり、タイ、ベトナム、インド、ブラジルも回復が続いている。こうした世界の大きな波に乗り遅れないようにしたい」

――リーマン・ショック直後の09年度の純利益は上期16億円、通期105億円だった。下期の挽回の手応えは。

「国内外ともオペレーションは8割程度だが、10月の単月業績はほぼ前年同月並みだった。11月以降も緩やかに回復が続いており、取扱量は半期1000万トンペースに戻ってきそうだ。通期予想は公表していないが、挽回に努めたい」

――コロナ禍が続く中での投融資のスタンスを。

「上期は厚板鎔断、コイルセンターの設備更新、工場建屋の改築など30億円の投資を実施したが、必要最低限にとどめた。前期実績は上期50億円、下期66億円の116億円。今期はほぼ同規模の計画だが、上期の減少分が残るかも知れない」

――さて2カ年経営計画(20-21年度)では、「事業撤退や資産売却を含めたポートフォリオの見直し」と「成長市場におけるポジション強化に向けた経営資源のシフト・人材開発の加速」の大きく2つの経営課題に取り組んでいる。

「日本鉄鋼業が粗鋼8000万トン時代に向かう中、コロナ後の新常態における市場環境も見据え、新しい時代に見合った役割を創出し、事業構造を転換していく。事業会社は110社あるが、ピークを過ぎた企業、機能が限定的になっている企業も少なくない。これまでにない強い決意で事業構造を転換し、ポートフォリオを組み替えていく。国内外で流通・加工プロセスの効率化を図り、日本鉄鋼業の競争力強化に貢献していく」

――4月1日に新設した事業開発部の成果は。

「営業やコーポレートに分散していた開発部門を統合し、専任部隊として20人体制で新たなビジネスモデルの創出に取り組んでいる。世の中の潮流であるCASEや脱炭素社会、デジタル化、スマートシティなどをキーワードに鉄鋼総合商社としての新たな役割を創出していく。すでにいくつかの案件が実を結びつつある」

――自動車分野の位置付けは。

「自動車関連ビジネスは成長市場と位置付けている。脱炭素社会対応の一環として欧米、中国など主要国・地域が自動車の電動化政策を相次いで公表している。日本政府、東京都もいよいよ動き出した。得意とする自動車分野のネットワークを活用して新たなニーズや変化を把握し、バリューチェーンに参画していく。成長市場と位置付けて、物流・加工プロセスの効率化を徹底し、新規投資も積極展開していく。一方で非効率な取引は総合的に判断していく」

――新たな注力分野は。

「意識的に伸ばしたいのは海外の土木・建築分野。エムエム建材との役割分担も含めて、新たな事業基盤を構築していきたい」

――海外は成長市場と位置付けている。

「コロナ禍からいち早く脱出した中国は年率5-6%の安定成長期に入り、粗鋼生産量は年率10億トンに達している。現地の事業会社は業績が好転している。インドは1億トンの粗鋼生産量が10年内に3億トン規模に拡大するだろう。インドはコイルセンターなど事業基盤を広げてきており、成長を確実に取り込んでいきたい。米国は人口、資源、技術、アカウンタビリティの4つの要素が揃う貴重な成長市場で、今後は政治も落ち着くだろう。カナダ、メキシコを含めた北米では現地事業を幅広く展開しており、収益を拡大していきたい。三菱商事、双日の両株主に加えて事業パートナーでもある三井物産、住友商事のグローバルネットワークも活用して、日本鉄鋼業への貢献度を高めていきたい」

――資産効率の見直しも。

「ピーク時に約1兆3000億円あった総資産は、1兆円強まで圧縮してきた。売上高が2兆円であれば、8000億円程度が適正だろう。9月末の総資産は約8500億円。活動水準が低下している要因もあるが、在庫の持ち方や決済条件も見直している。総資産利益率も意識しながら、適正化を図っていく」

――経営資源をシフトしていく。

「総資産の適正化を図りつつ、中身をガラッと変えていく。例えば人員の配置についても今まで以上に積極的に成長市場にシフトしていく。海外で新たな市場開拓に取り組む、事業投資先で新たなビジネスに携わっていくことで、事業構造を大きく転換していける。1990年代後半から続いた構造不況の強い危機感の中、メタルワンは『メタルマーケットメーカー』をビジョン、『メタルバリューオプティマイザー』をミッションに掲げ、生き残りを賭けてスタートした。鉄鋼業はいま再び構造転換を迫られている。現状維持では役割を果たす場所がなくなる。そうした強い危機感を共有し、第二の創業期を迎える決意で社員の意識を改革し、新たな鉄鋼市場を創出し、鉄鋼の価値を最適化していく」

――グループ会社との間で業務分担の見直しも始めている。

「単体と事業投資先で業務を分担しているが、重複している役割もある。鉄鋼メーカーからすれば、メタルワン・グループとしての機能と認識されているケースもあるはずだ。グループ内での業務分担の見直しについても取り組みを進めている」

――在宅勤務が浸透してきた。

「働き方改革の一環として18年度から週1回の在宅勤務化をスタートしていた。コロナ禍の緊急事態対応で、本年3月から最大7―8割、7月以降も5割を目安に在宅勤務を奨励し、テレワークの有効性を確認できた。コロナ後の新常態も見据えた書類削減プロジェクトを立ち上げ、本社では50%削減を達成した。フリーアドレスの導入と合わせ、本社スペースを有効活用する準備を進めている」

――業界再編については。

「エムエム建材、住商メタルワン鋼管の設立によって、企業再編の効果を確認し、三井物産、住友商事との信頼関係も構築できている。エムエム建材は業界トップのポジションを確立。住商メタルワン鋼管はPMIを完了して、新組織で新たな成長に向けて動き出した。現時点で具体策はないが、先に述べたビジョン・ミッションを果たし続けるため、他の商社との連携を含めてあらゆる可能性を追求していく」(谷藤 真澄)

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