2021年7月21日

メタルワンの経営戦略 岩田修一社長に聞く 新常態見据え構造改革 V字回復手応え、成長戦略にかじ

――2020年度は連結純利益が66%減の66億円にとどまった。

「新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界的な景気減速の影響を受けて、国内外の鉄鋼需要が大幅に減少し、とくに上期は大変な苦戦を強いられた。下期に入り、中国や米国の景気が先行して回復に転じる中、日本も輸出拡大によって鉄鋼需要が持ち直し、業績は上期と下期で明暗が大きく分かれた。20年度の取扱量は18%減の1759万トン、売上高も18%減の1兆6665億円で、売上総利益は20%減の831億円にとどまった。販管費を100億円規模で抑制したが、営業利益が107億円にほぼ半減し、純利益は3分の一に落ち込んだ」

――セグメント別の動向は。

「売上高に占める割合は、自動車・電機向けを中心とする薄板系が4割、線材特殊鋼・ステンレスが3割、貿易、エネルギー用油井管・ラインパイプが2割、厚板・建材・鋼管が1割で大きな変化はなく、すべてのセグメントが減収となった。総利益は薄板系3割、線材特殊鋼・ステンレス3割弱、貿易1割強、厚板・建材・鋼管が3割弱で、こちらも大きな変化はなかった」

――5割出資のエムエム建材、メタルワン住商鋼管を加えた19年度の事業規模は取扱量3000万トン、売上高3兆円だった。

「規模は意識していないが、参考までに申し上げると、取扱量は2800万トン、売上高が約2兆5000億円で、総利益は1200億円弱となる」

――連結対象会社は125社で、関連会社は3社減となった。

「125社の内訳は国内59社、海外66社。直接連結98社の内訳が国内40社、海外58社。黒字が74社、赤字は24社で黒字会社が3社減った。国内外法人を除いた事業会社が107社。海外はコロナ影響からいち早く脱した中国が好調だったものの、その他は総じて苦戦を強いられた」

――「経営戦略2021」では『事業撤退や資産売却を含めたポートフォリオの見直し』と『成長市場におけるポジション強化に向けた経営資源のシフト・人材開発の加速』の大きく二つの経営課題に取り組んでいる。

「コロナ後の新常態における鉄鋼市場環境を見据え、強い危機感をもって事業構造改革に取り組んでいる。数量や売上高を追い求めるのではなく、新しい時代に見合った機能を創出していく方針で、主体性のないビジネス、収益性が低下している取引については整理を急いでいる。ピークを過ぎ、機能が限定的になっているなど成長性が見込めない事業からも撤退を進めている。財務体質をより意識したポートフォリオの入れ替えを進めており、総資産はピーク時に1兆2500億円あったが、不採算取引からの撤退、資産圧縮によって9000億円まで圧縮してきた。20年度はフリーキャッシュフローが1200億円のプラス、有利子負債は1159億円減の2043億円となり、ネットDEレシオは0・5に0・3ポイント改善した」

――事業会社の構成については。

「約7割だった事業会社の子会社比率を9割程度に引き上げる計画だ。エムエム建材、住商メタルワン鋼管は、重要な関連会社と位置付けている」

――4月1日付で国内の支社再編も決めた。

「北海道支社を廃止し、メタルワン北海道に機能を集約。四国・九州支社を中国支社に統合して西日本支社に再編した。競争力を高めるため効率的で戦略的な編成とし、各地で展開するグループ会社と連携を強化しながら機能を分担し、これまで以上のグループ総合力を発揮していく」

――メタルワン・スチールサービスが7月からメタルワンの商社業務受託を開始した。

「MSSは、東京、名古屋、大阪、広島、福山、高松に営業拠点を構え、7月1日付で東北支店、新潟支店を開設した。新たに派遣した橋本社長はメタルワンイズムをしっかり共有している。MSSが得意とする建材薄板や店売り分野の業務を委託し、顧客サービスの向上を図る。」

――さて本年度はV字回復が期待される。

「1月以降は業績が回復している。前年度の純利益は上期が1億円、下期が65億円だった。世界の鉄鋼需要は中国、米国など主要国で増加を続けている。これに伴い鉄鉱石、鉄スクラップの価格が高止まりしている。これまでのところ収益は大変順調。V字回復の手応えは得ている。20年度は事業縮小や取引撤退など辛い交渉を重ねたが、厳しい環境だったからパートナーやステークホルダーの理解を得られたと振り返っている。より筋肉質になった事業構造を活かして、成長戦略に舵を切る。人材育成を強化し、人員配置も見直し、新しいビジネスモデルへの転換を加速。既存の強みを活かしながら、業態変革を進め、新たな役割を模索し、具体化していく」

――営業やコーポレートに分散していた開発部門を統合して20年4月に発足した事業開発部の取り組みについて。

「専任部隊として約20人態勢で新たなビジネスモデルの創出に取り組んでいる。世の中の潮流であるCASEや脱炭素、デジタル化、スマートシティなどをキーワードに鉄鋼総合商社としての新たな役割を創出していく。すでに複数の案件が実を結びつつあるが、成果のひとつが本年3月に設立した『NejiMO』。高機能・高性能ネジ開発を手掛ける『NejiLaw』との折半出資事業。『緩まないネジ』を開発した道脇裕社長とのコラボレーションで、新しいスタイルの知財ビジネスを展開していく。創造的発明力を持つ同社と広大なネットワークを保有するメタルワンがタッグを組んで、技術的課題をブレークスルーし、産業界の発展や国土強靭化に広く貢献していく」

――「事業創造チャレンジ2021」のポスターが掲示されていた。

「若手・中堅を対象に、デジタル・新技術、モビリティ、インフラ関連、クリーンエネルギー、その他フリーの4+1のテーマで事業創造に挑戦してもらうワークショップ。3月に募集を開始し、50数件の応募案件を事業開発部、経営企画部が選考し、20件が通過。5月から7月にかけて専門家のサポートも得ながら事業検証を進め、8月にプレゼンテーションを行ってもらう。新規事業の創出につながれば良いが、モチベーションやスキルの向上が最大の狙い。新たな時代における鉄鋼総合商社の役割を模索していく組織風土改革につながると期待している」

――投融資は攻めに転じる。

「20年度の投融資は約65億円で、厚板、建材関連、薄板の工場建屋、設備、ソフトウウェアなど更新案件がメーンだった。本年度は既存事業における維持・更新投資が約130億円で、この上に新規投資が加わる。鉄鋼メーカーが設備構造改革を断行する中、鉄鋼流通としても国内の加工・流通機能の効率化を図り、日本鉄鋼業の国際競争力回復に貢献していく。同時に海外市場における需要開拓や販売力強化も重要なテーマと認識しており、とくに市場拡大が続くアメリカ、ASEAN、インドなどで積極投資を進める」

――働き方改革、デジタル化も加速する。

「業態変革への取組を進める。RPAやAIの活用によって入力作業などの業務効率化を図り、働き方を変えていく。10万社との取引がある強みを活かす方向で、プロセスや機能を再定義し、イノベーションにつながる活動をグループ会社含めて推し進める。デジタイゼーションは、アナログからデジタルへの転換による業務改革。そこからさらに進んでデジタル化したプロセスを活用した個社・グループ内の業態変革をデジタライゼーションと定義し、最大のテーマに掲げている。デジタライゼーションを実現することで、産業構造転換に導くデジタルトランスフォーメーションに貢献していく」

――人材開発について。

「業態変革、構造改革、事業創出を同時展開するための人材育成を急いでいる。加えて、世の中の潮流や変化を敏感にとらえ、変化を先取りして、主体的に構想し、新たな価値を創出するプロフェッショナル人材を新たな人材像として定義し、経営人材、デジタル人材とともに育成していく」

――気候変動への対応も日本鉄鋼業の課題。

「環境問題への対応を重要経営課題と改めて位置付け、社会に信頼されて、サステイナブルな企業として顧客や市場の発展に貢献していく。地域社会を豊かにする企業活動につながるよう努力し、ステークホルダーの期待に応えていく。日本鉄鋼連盟が掲げる『2050年カーボンニュートラル』に向けて、鉄鋼業界の一員として取り組みを強化する。エコプロセスへの協力、エコプロダクツの拡販などを推進し、グループ内のCO2排出削減についても計画を策定して取り組んでいく」

――次期中計を策定する。

「中長期の課題を洗い直し、あるべき姿の実現に向けて2022年度にスタートする中期計画を策定する」

(谷藤 真澄)

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