2021年8月25日

鉄鋼業界で働く/ベテラン女性営業職編 インタビュー(下)/さらなる社会の変化願う

鉄鋼業界で40年以上、厚板や建材などの国内営業に第一線で携わってきたメタルワン大阪支社大阪厚板課の大谷裕子さん。「商売をやりたい」という気持ちを大切にしながら、厚板、建材、土木分野の製品に携わってきた。これまでの営業人生や、女性の社会進出について感じること、女性目線で鉄鋼業界を見てきたからこそ考える今後の展望を聞いた。

――2008年4月に、総合職に転換されたと聞きました。

「時代とともに内部統制の観点から職掌ごとの業務範囲が明確に区別されるようになりました。自分のしたい仕事に取り組むため必要だと感じ、以前から周囲に勧められていたこともあって総合職に転換するための社内試験を受けました。総合職になってから裁量を与えていただけるようになったことが自分の中で一番大きな変化でしたね。これまでも常にお客さま目線、会社への貢献を考えて働いていましたが、より一層責任について考えるようになり、仕事に関する視野が広がるきっかけやモチベーションの向上につながりました。社内外で立場的に認められ、“あるべき姿"で仕事に取り組めるようになった気もします」

――新卒採用の面接試験にも携わったそうですね。

「12―17年まで、総合職の1次試験の面接官を担当していました。今は男女差なく大学に行く時代ですし、海外志向の女性も多いです。面接官を担当している時も、優秀な女子大生を沢山見てきました。ただ、これまでの経験上から、数年後の転勤や結婚後の家庭の役割分担などで辞めてしまわないかが気掛かりでしたが…。優秀な学生にはぜひ『頑張ってほしい』と思うと同時に、女性の活躍を受け入れ支える社会、女性であることが社会での自己実現の障害とならない世の中の実現が早く来ることを強く願っています」

――鉄鋼業界に女性は必要だと思いますか。

「日本は海外から見て女性の社会進出が遅れています。伝統ある鉄鋼業界は特にそう感じていて、これからどんどん変わっていってほしいと願っています。女性が現場に入ることで、女性のみならず男性も働きやすい職場へと変わると思います。鉄鋼業界を大きく変える原動力になるのではないでしょうか。また、女性自身も変わっていくべきだと思いますね」

――女性自身も変わっていくべきとは。

「女性だからという考えや甘えを捨てて、逃げずに社会と向き合ってほしいです。怒られたり、きつい言葉を言われたりすることがあっても、社会が厳しい場所であり、自分が責任のある立場だからだということを忘れずに働いてほしいです。女性が女性であることを意識しすぎず、1人の人間として、お客さまの要望に応えられる人材が増えたらいいなと思いますね」

――2年前に定年退職され、現在は嘱託職員として変わらず営業に取り組まれています。今後の展望は。

「今の仕事が楽しいので、これからもまだまだ続けたいです。新型コロナウイルスの影響で外出業務に制限が生じていますが、先日久しぶりに品質確認のために倉庫に行きました。1時間くらい滞在して、『私には現場が合う! ここが私のいる場所!』と感じました(笑)。現場の最前線に立つ喜びを改めて実感した貴重な時間になりましたね。40年以上働いていても自分に足りない部分がありますし、常に努力が必要です。日々の変化に対応し、勉強もしなければなりません。これからも、お客さまから求められる存在としてまい進していきたいです」

(芦田 彩)

鉄鋼業界で活躍する人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。



スポンサーリンク