2021年12月10日

鉄鋼業界で働く/女性営業職編/インタビュー(下)/管理職登用、意欲と悩み

女性が管理職に就くことを推進したり、期待感を高めたりする企業がある一方で、結婚や出産、子育てなど、自身の人生と仕事の両立に悩む女性社員も多いのが現状だ。阪和興業大阪本社鋼板販売部鋼板販売課で働く小林紀子さんも、女性管理職のあり方などについて考える一人。女性のキャリアや人生の歩み方についての思い、鉄鋼業界に今後望むことなどについて聞いた。

――若手の女性総合職が増えてきていると伺いました。

「ここ数年は、総合職の新入社員約50―60人のうち約25%が女性と聞いています。女性の半分以上は東京本社へ、例年3―4人ほどが大阪本社へ配属されますね。一定数は管理部門にも配属されます。周囲にも女性総合職の営業はいますが、年齢が離れている方も多く、お互いを知っている程度です」

――女性営業職として働き続けながら思うことは。

「30歳手前くらいで、今後の自分の生き方を考えるようになりましたね。結婚したい、子供を産みたいと思ったとしても、家庭と仕事の二足のわらじを履いて、仕事面で現在のパフォーマンスを維持しながら働けるのだろうかと気になります。私はきっと家庭も完璧にこなさなきゃと思ってしまいそうで踏み出せるかどうか。子育ては体力も必要ですし。何も考えず踏み込めばいいのかもしれませんが…。結婚して子育てもしている女性総合職の先輩もいますが、まだまだ珍しいケースです。また子育てと両立している一般職の女性社員を近くで見ていて、新型コロナウイルスの影響で幼稚園が休園したり、子供が急に熱を出して慌てて退勤したりしているのを目の当たりにし、総合職で営業として働きながらだと大変かもと感じました。子育て支援などに関する制度もありますが、結婚して子育てをしながら仕事をこなすのは、私にはまだまだ想像しにくいです」

――女性が管理職に就くことについての考えを。

「キャリアを重ね仕事に自信が持てるようになってから、早いかもしれませんが管理職も視野に入れるようになりました。まだ阪和興業の国内鉄鋼部門に女性役職者はいません。女性でもできるのではないかと思う一方で、管理職への昇格を望む女性が少ないのも事実だと思います。『私が管理職になって大丈夫なのか』と二の足を踏む人も多いと思いますし、その気持ちも分かりますね。覚悟も必要ですし。いろんなことを気にしてしまうのは良くも悪くも女性の特性ですし、責任感ゆえに悩むのだと思います。でも管理職になるには責任感が必要ですし、女性社員の自己肯定感を上げて自信を持たせることが社会全体の課題だと思います。個人的には、出産した女性は強くなる、おおらかになる、社会でのランクも上がるという印象があり、だからこそ部下も育てられるのではという社会や企業の思いも理解はできます。とはいっても、子育てと家庭と仕事を背負いながら管理職を務めるのは、大変な困難も伴うと思いますね」

――鉄鋼業界がこのように変わればとの願いは。

「女性活躍に一層取り組むなら、もう少し受け皿を広げるべきではないでしょうか。私のように鉄鋼業界に適応できて働けているという例もありますが、女性を受け入れる度量の大きさがもっとあるといいですね。阪和興業の場合は、入社試験で男女比を前もって決めることなく採用していると聞きましたが、総合職の入社人数は男性の方が多いです。女性の志望者数が少ないことも理由にあるのでしょうが、人口分布は男女半々ですし、一定期間、男女半分ずつ入社させてみるなど思い切ったことをしたら、5年後10年後、彼ら彼女らがどういう役職でどんな仕事をしているか、何か新たな変化があるのではないかと思います」

――業界全体が変わっていかなければならない。

「もっと自然に女性が働ける場が作れたらなと思います。現在阪和興業では、取締役会のメンバーの中で女性は社外取締役1人しかおらず、叩き上げの女性役員はまだいません。女性向けの制度も含め、社員に関わる制度を審議するメンバーの男女比率が偏っているのはどうかなぁと感じます…。今後、昇進してきた女性社員の中から役員になりたいと思う人がでてきてもいいな、と思いますね。これからどんどん変わっていくと信じています」

――今後の目標を。

「今春に異動したばかりなので、今の仕事の習得が第一です。コロナの影響を見ながら許される範囲で、お客さまのもとを回りたいです。新しい知識を吸収しながら代謝の良い人間になって、今後も働き続けたいです」

(芦田 彩)

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