2022年7月5日

神鋼商事の経営戦略/森地高文社長/非トレード比率拡大着々/積極投資で持続的成長図る

――2021年度は連結経常利益が97億円(前年度41億円)、純利益は71億円(22億円)で、いずれも最高益となった。

「自動車を中心とした需要の増加、鋼材価格の上昇によって鉄鋼、非鉄金属の収益が改善した。資源価格高騰による製品価格の上昇、コロナ禍で落ち込んだ消費の反動増に加えて、活動制限による販管費の抑制効果も続いた。北米のエネルギー鋼材関連の減損、メキシコ、インドの事業会社の損失など足を引っ張る要素もなくなった」

――実力ベースの利益をどう分析する。

「鉄鋼、非鉄の市況上昇による追い風を差し引いた経常利益を80億円強と見ている」

――年間配当245円(50円)も最高額。

「中期経営計画(21-23年度)で目標配当性向を30%と設定しており、21年度は30・4%だった」

――本年度は、向かい風が強まる中、経常利益106億円と最高益更新を見込む。

「予算を策定した2月時点の想定と比べて自動車減産が長引き、中国のコロナ対策も一進一退。ロシア・ウクライナ情勢の直接的な影響はさほどないが、エネルギー価格の高騰によるコストアップなどは表面化しつつある。円安も1ドル135円前後まで来るとマイナス要素が増えてくる。一方、国内、北米、中国、東南アジアなど主要拠点の収益力は着実に高まっている。経営環境は厳しくなり、営業活動の本格再開によって販管費も増加するが、利益目標の達成を目指す」

――本年度の配当予想は240円。株価は4000円前後まで切り上がってきた。

「財務体質の強化は必要だが、成長戦略投資の成果をしっかり発揮し、さらなる評価に結びつけていきたい」

――中計の進捗状況について。

「最終23年度目標は、経常利益95億円以上、ROE9%以上、ROA3%以上、自己資本比率20%、DEレシオ1・0倍程度。利益指標は21年度実績、22年度目標ともにすべてクリアし、DEレシオも22年度は達成する見通し。自己資本比率は21年度17・3%、22年度予想19・1%で未達となる見通しだが、利益を積み上げて23年度以降の達成を目指す。環境が変化しても維持強化できる体質を構築する」

――中計3年間で200億円の投資を計画する。

「21年度は設備投資、M&A関連投資が21億円。米国のGBP、AWPの設備増強、中国の蘇州神商金属の設備増強を実施。M&Aは、中国の半導体関連装置メーカーを買収して神商精密機材(揚州)とし、国内では溶材関連で子会社のエスシーウエルが溶接資機材販売事業を譲受した。22年度はベトナムのアルミ厚板切断加工会社、KTNベトナムの設立など48億円の投資を計画する。加えてDX関連で40億円、海外におけるサプライチェーン機能強化などで50億円の投資を予定する」

――収益力強化に向けて、非トレードビジネスの比率アップに取り組んでいる。

「前中計期間は経常利益ベースでトレードが84%を占めていた。トレードを強化しながら、非トレードの比率を30年度に向けて33%まで引き上げる目標を掲げている。21年度はトレードが拡大する中で、非トレードが25%まで伸びてきた」

――非トレードの比率押し上げ要因を。

「中国では江蘇省にあるアルミコイルセンターの蘇州神商金属、液晶・ソーラーパネル製造装置用のアルミ部品などを扱う神商精密機材(蘇州)、特殊鋼の冷間圧造部品などを製造する神商大阪精工(南通)などが利益を積み上げている。北米の特殊鋼線材2次加工事業、GBP、AWPの2社も好調に推移。タイ、ベトナムの事業収益も拡大している。将来のための投融資が最重要課題として取組む」

――海外拠点主導型ビジネスの進展は。

「ベトナムの現地事業を強化する。南部ではアルミ厚板の切断加工拠点を設立し、北部ではアルミ、銅板条の地産地消に対応していく。インドは建機部品メーカーに出資し、鋼材やアルミのトレード、冷鉄源、合金鉄など幅広い視点でチャンスを創出していきたいと考えている。欧州でも自動車用のアルミ鍛造品のビジネスを開始する」

――中計の重点施策のひとつ、神戸製鋼所グループの中核商社としての機能強化策について。

「全社的には自動車軽量化、資源循環などをキーワードに強化策を推進している。鉄鋼本部は、特殊鋼分野で線材2次加工機能強化を北米で先行しており、中国でもFSを進めている。タイは、コベルコ・ミルコンスチールの調達・販売両面で機能を強化。板系は、KOBEMAGの拡販に注力している。特殊鋼分野では、線材を納入する二次加工メーカーの取引先であるティアワンとの取引の新規開拓に注力している。構想段階ではあるが、シンパの2次加工メーカー各社の特性を引き出す格好で、新たなサプライチェーンを組み立てていきたいと考えている。カーボンニュートラルの視点での伸線・熱処理などの設備投資や機能分担を行い、DXを活用して製鉄所と各社を結ぶことで加工・物流の効率化を図り、神戸製鋼グループの競争力を引き上げていく」

――非鉄金属本部は。

「品質・精度など高い国際競争力を持つ神戸製鋼のアルミ厚板、アルミパネルの拡販に注力している。自動車用アルミパネルのリサイクル事業にも着手した。アルミパネルを納入した自動車メーカーからのリターンスクラップを分別・回収して付加価値を高めるビジネスモデル。ノウハウの蓄積を急ぎ、海外の日系自動車メーカーのニーズにも応えていきたい。中国企業は取引先に対する環境対応要請を強化しており、再生事業へのニーズが急速に高まっている。中国のアルミコイルセンターは取引先の要望に応じて、太陽光パネルを設置し、電力自給比率を引き上げた。神戸製鋼が新設するベトナムの銅板条加工会社については、ハノイに駐在員を置いて立ち上げをサポートしていく」

――鉄鋼原料本部は。

「神戸製鋼向け原料取引強化に加えて、冷鉄源のグローバル拡販に取り組んでいる。冷鉄源は発生国である日本、北米で安定調達先を確保するローラー作戦を進めている」

――バイオマス燃料ビジネスも注力する。

「バイオマス燃料は、国内の3カ所のバイオマス発電所と長期の燃料供給契約を締結。本年4月には石狩バイオエナジー向けに木質ペレットを初納入した。契約量は22年度がPKS(パーム椰子殻)12万トン、木質ペレット7万トンのトータル19万トン、23年度はそれぞれ26万トン、9万トンの35万トン。PKSはインドネシアとマレーシア、木質ペレットはベトナムから調達する。木質ペレットは製材時に発生する端材を粉砕して圧縮成形した固形燃料で、燃焼時に排出されるCO2は、樹木成長時に吸収したCO2に換算されるため、カーボンニュートラルに貢献できる。排出権取引、将来的には植林事業も視野に安定調達を図り、30年までに50万トン規模に拡大していく」

――機械・情報本部について。

「神戸製鋼のバイオマスタービン、冷凍機、ヒートポンプなどESG関連のアイテムを扱っており、ビジネスチャンスが広がっている。21年度は売上高が約20億円だったカーボンニュートラル関連のビジネスを22年度は30億円、23年度以降に60億円規模に拡大する計画を進めている」

――溶材本部は。

「神戸製鋼の100%子会社だったエスシーウエルを承継し、溶材、溶接機器、ロボットなどの販売を強化している。エスシーウエルは日本エア・リキードから継承した溶接関連資機材販売事業の商権を活かして、中核商社としての機能強化を進めている」

――全社横断プロジェクトチームの活動は。

「経営企画部長をリーダーとし、専任2人と5本部からの選抜メンバーを兼務者として、総勢約10人で活動を本格化している。M&A、スタートアップ企業への投資を含め、柔軟な発想で新規ビジネス創出に取り組んでいる」

――6月下旬の株主総会日付で経営体制を刷新した。

「鉄鋼本部、非鉄金属本部ともに新任の本部長が就任した。非鉄金属本部長が鉄鋼本部を、機械・情報本部長が原料本部と経営企画部、管理部門担当役員が溶材本部を管掌する体制に見直した。代表取締役も3人から1人体制に変更した。5年前に社長に就任し、本部によって社員の姿勢がまったく異なることを認識。うまく組み合わせるとシナジーを発揮できると考え、人を異動させながら風土改革を促してきた。役員をクロスオーバーさせて風土改革と文化の融合を加速する」

――創立75周年、東証プライム市場上場を契機に第二の創業に取り組んでいる。

「メーカー商社ならではの技術力に磨きをかけて、SDGsへの取り組みを本格化する。海外の線材2次加工、アルミコイルセンター、国内の神鋼商事メタルズなどは先人が投資やM&Aを実行し、厳しい時代を乗り越えて、トレード・事業収益に大きく貢献している。前中計の最大の反省が投資枠をほとんど使えなかったこと。神戸製鋼グループを牽引する中核商社を目指す決意で、積極的に投資を実行し、機能の拡充と持続的成長を図る」(谷藤 真澄)

おすすめ記事(一部広告含む)